【進路コラム】大学・短期大学における発達障害者支援|大学Times

進路コラム【大学・短期大学における発達障害者支援】

2005年の発達障害者支援法の施行を機に、高等教育機関では、発達障害者に対する教育的支援制度の整備が求められるようになりました。大学・短期大学における支援の現状について見てみましょう。

大学・短期大学における発達障害者に対する支援とは?

発達障害は、自閉症などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害など、脳機能の発達に関する障害です。身体的障害ではないため障害を抱えていることが認知されづらく、理解を得にくい状況にあります。法律では、高等教育機関へ障害者に対する支援を行うよう明示してはいますが、具体的な支援策は打ち出されていません。実際の支援は個人の症状に合わせて施さなければならず、その内容は多岐に渡るため、適切な配慮を行うことが容易でないのです。

支援の実態は?

全国の大学・短期大学を対象とするアンケート((株)さんぽう調べ/回答校数556校)の結果、発達障害者への支援の実態が見えてきました。
①入学者選抜時の支援、②教育を受ける上での支援、③学生生活を送る上での支援、④就職活動への支援の4つの項目における支援について調査をしたところ、半数以上の学校が4項目すべてで「支援あり」と回答しました。また、「(支援の実施は)学部・学科による」と回答した学校はどの項目においても9%以下と少なく、支援を行っている学校の多くは全学を挙げて取り組んでいることが分かります。

<支援の例((株)さんぽうアンケート結果より)>

①入学者選抜時の支援
発達障害を持つ場合、「集団の中で試験を受けることが難しい」「問題を読むのに時間がかかる」「マークシートをうまく塗り潰せない」などの問題が生じやすいとされています。各大学ではこうした事例に対応するため、試験時間の延長や座席配置への配慮、別室受験などを行っています。具体的な支援内容は各学校で異なりますが、大学入試センターが実施している配慮事項(※)に準じての実施が多いようです。
※大学入試センター試験では発達障害に関する配慮事項として「試験時間の延長(通常の1.3倍)」、「拡大文字問題冊子の配付(一般問題冊子と併用)」「別室の設定」「試験室入口までの付添者の同伴」等を設けています(要申請)。
②教育を受ける上での支援
入学後、発達障害を持つ学生が直面する教育上の困難に対しては、学生支援スタッフや大学院生のTA(ティーチングアシスタント)を配置している例が見受けられます。
また、これらのスタッフと学生本人が必要な補助について十分に相談を行える場を設け、「講義についていけない」「ノートが取れない」「科目履修の管理が難しい」といった声に応える体制を整えている学校もあります。さらに、各学部・学科間や部署間で連携をとる、講義の担当教員に配慮事項を通達するなど、教職員が一丸となって支援を行う例もあります。
③学生生活を送る上での支援
学生相談センターを中心に全般的な援助を行っている例が見受けられます。また、これらの関係部署と教職員が連携し、対応を検討する場合もあるようです。「新しい環境にストレスを感じる」「周囲と馴染めない」といった、様々な困難が生じやすい中で、休憩スペースの確保や学生相談室でのカウンセリングの実施などにより、学生生活に適応していくための支援が行われています。
④就職活動への支援
就労に際しては、学生本人の適性や希望、能力だけでなく、企業の雇用努力や行政の施策が関係します。そのため、学外との協力体制が欠かせません。具体的には、ハローワーク職員との連携により就職先を紹介する、障害を持つ学生の採用実績がある企業とマッチングをはかり面接の場を設ける、といった対応が挙げられます。 また、就職後には、採用先の企業を訪問しアフターフォローを行う例もあります。

こうした具体的な支援内容が示される中、最も目立った回答は「要相談」というものでした。このことから、障害の種類や程度、場面に応じた個別の対応が必要となっている状況がうかがえます。そのためには、専門知識を持つ人材を中心とした支援チームの結成や学内全体の協力が欠かせません。過去に実例がない学校においては、支援体制を土台から整備していく必要があるため、実際に相談が寄せられた際の対応はより難しいものになると推察されます。

今後の課題は?

発達障害の特性上、支援の方法や内容について一括した方針を打ち出すことは難しく、実際には個々の学生への個別対応が必須となります。彼らが安心して学ぶことのできる環境を整備するには、各学校の協力が必要不可欠です。各学校は今後、それぞれの情報や経験を共有するなどして連携しつつ、確固とした支援体制を構築していく必要があります。