[北里大学]テルペン合成酵素は広く細菌に分布している――北里大学の研究グループが、休眠状態のテルペン合成酵素遺伝子の覚醒による新奇テルペン化合物を発見|The大学Times

[北里大学]テルペン合成酵素は広く細菌に分布している――北里大学の研究グループが、休眠状態のテルペン合成酵素遺伝子の覚醒による新奇テルペン化合物を発見大学通信 2014.12.26

 メントール、樟脳などの精油成分や抗癌薬として使われているタキソールなどの化合物は、「テルペン」という一群の天然有機化合物として、さらに植物の代表的な代謝産物として知られてきた。一方、細菌などの微生物からの代謝産物は、抗生物質をはじめ、多くの医薬品として利用されてきたが、細菌からのテルペン化合物の生成は極めて稀であると理解されてきた。

20世紀末から今世紀にかけて、多くの生物種のゲノム解析が行われてきた。これまで報告された数少ない細菌由来のテルペン合成酵素は、植物などの合成酵素と比べてアミノ酸配列の相同性が低く、このことが細菌由来のテルペンおよびその合成酵素の研究が進展しなかった大きな理由でもあった。
北里大学北里生命科学研究所の池田治生教授の微生物制御工学研究室に所属する、北里大学大学院感染制御科学府博士後期課程の山田佑樹さんを実施者とする研究グループは、これらの問題を克服する方法によって、公開データベース中の細菌タンパク質8,759,463個の中から、262個のテルペン合成酵素と推定されるタンパク質を見出した。

これらの候補タンパク質をコードする遺伝子はグラム陽性菌、陰性菌など広く細菌種から見出されるが、それぞれの細菌からのテルペン化合物の生成は報告されておらず、かつ実際にこれらのいくつかの細菌の培養物からも検出されない。
したがって、細菌のテルペン合成酵素をコードする遺伝子のほとんどは休眠状態であると推察されるとともに、細菌は極めて多くのテルペン化合物を作り出せる潜在能力を有していることが再確認された。

さらに、同グループが構築した異種遺伝子発現系に上記の遺伝子のいくつかを組み入れたところ、植物などで既に報告されているテルペン化合物の生成が確認されるとともに、これまですべての生物種からの生成が報告されていない、新奇な骨格を有するテルペン化合物を見つけ出すことにも成功した。

これにより、自然界から微生物を集め、その培養物から代謝産物を探索するといった、これまでの方法では発見することができなかった"細菌由来の全く新しいテルペン化合物"を遺伝子工学的に取り出す途が拓けた。本研究によって「テルペン化合物は植物に特有の代謝産物」といったこれまでの概念は訂正しなければならなくなった。今後これらの化合物の様々な生物活性に期待が持たれるとともに、医薬品原料の新奇骨格の提供などが期待される。

なお、この研究は、12月22日 米国東部標準時3:00 PM (日本時間 12/23 5:00 AM) 米国科学アカデミー紀要 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 電子版に掲載された。

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北里大学北里生命科学研究所 微生物制御工学研究室
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論文の筆頭著者の山田佑樹さん