フランス産と同種とされていた日本のカタツムリダニが新亜種に〜沖縄本島産と九州以北産で別の亜種として命名〜|The大学Times

フランス産と同種とされていた日本のカタツムリダニが新亜種に〜沖縄本島産と九州以北産で別の亜種として命名〜大学通信 2022.5.9

◆発表者名
 島野 智之(法政大学自然科学センター 教授)
 脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 講師)



◆発表のポイント
・ダイダイカタツムリダニはカタツムリやナメクジに寄生するダニの一種で、1986年にフランスで新種として記載され、日本では、その32年後の2018年に採集が報告された。フランスから日本にかけて広く分布すると考えられ、カタツムリ専門の寄生虫としては最大級の分布の広さを持つ。
・広く分布する生物種は地域ごとに形態が異なり、特に地理的に隔離された場所では亜種となることがある。そこで、研究グループが日本全国のさまざまな場所からダイダイカタツムリダニの標本を集めて形態を精査したところ、フランス、沖縄本島、九州以北のダニ間で形態に微小な差異が認められて区別されることが分かり、これらの日本に分布するものを2つの新亜種「ニホンダイダイカタツムリダニ」「リュウキュウダイダイカタツムリダニ」として命名した。
・今回発見した2つの亜種は、島国の日本で大陸のものから独自に分化した可能性が高いとみられる。

◆発表概要
 ダイダイカタツムリダニ(学名:Riccardoella reaumuri)は、体長0.5mmほどの小さなダニの一種です(図1)。さまざまな種類の陸貝(カタツムリやナメクジ)の肺や体表に寄生して生活し(図2)、人に寄生することはありません。このダニは、フランスのカタツムリから1986年に初めて報告されました。その後、2018年以降に日本の沖縄から同種として発見され、さらにその後の調査で沖縄から北海道にかけて広く分布することが分かりました。このように、本ダニ種はフランスから日本まで分布し、陸貝専門の寄生虫としては最大級の分布域を有する種の一つと考えられています。


 一方、移動能に乏しい生物種が広く分布する場合、それぞれの地域で地理的な変異が蓄積し、特に隔絶された島では亜種になりやすいことが知られています。陸貝は水平移動能に乏しいため、長い距離を移動することも海を渡ることもできません。ダイダイカタツムリダニも体が微小な寄生虫ですので、自分で長い距離を移動することはできないと考えられます。そこで研究グループは、移動能に乏しいこのダニで、フランスと日本列島のものが全く同じとは考えにくいとして、各地域のダニ個体の形態を詳しく調べて比較しました。その結果、微小な剛毛の形態や、体のサイズが地域によって異なることが分かりました。これに基づき沖縄本島と九州以北のものがそれぞれ亜種として「リュウキュウダイダイカタツムリダニ」と「ニホンダイダイカタツムリダニ」と命名されました(図3)。


 世界には8種のカタツムリダニが分布し、そのうち本種を含む4種が世界的に分布していますが、地域ごとの微小な形態を見分けて亜種とした研究は今回が世界で初めてです。今回の亜種の発見は、世界的に分布するような生物種であっても、大陸から海で隔てられた日本列島のものには何かしらの差異があることの証左であり、同時に日本国内の生物多様性の理解が世界的にみて重要であることの証拠です。生物多様性の重要度は、寄生虫であっても変わらないものといえます。

◆発表雑誌
・雑誌名: 『Systematic and Applied Acarology』
・論文タイトル: Two subspecies of the snail mite Riccardoella (Proriccardoella) reaumuri Fain & van Goethem, 1986 (Acari, Prostigmata, Ereynetidae) from Japan
・著者: Tsukasa Waki, Risho Motochin, Takahiro Asami, Satoshi Shimano.
・DOI番号: 10.11158/saa.27.5.2
・アブストラクトURL: https://doi.org/10.11158/saa.27.5.2



◆お問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ先】
 法政大学自然科学センター・国際文化学部 教授 島野 智之
  E-Mail: sim@hosei.ac.jp

【報道に関するお問い合わせ先】
 法政大学 総長室広報課
  TEL: 03-3264-9240
  E-mail: pr@adm.hosei.ac.jp

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