[大阪大学]人は自分に似ている顔を信頼する -- 最新の人工知能を用いて顔の類似度を推定|The大学Times

[大阪大学]人は自分に似ている顔を信頼する -- 最新の人工知能を用いて顔の類似度を推定大学通信 2022.7.13

●概要
 大阪大学大学院生命機能研究科 中野珠実准教授らの研究グループは、第一印象において、自分に似ている顔ほど信頼できると評価することを世界で初めて明らかにしました。ただし、この顔の類似度が信頼性の印象に及ぼす影響は、同性の顔を評価したときには強い効果がみられました。一方、異性の顔を評価したときには、顔の類似度は信頼性の評価に全く影響を与えていませんでした。
 人は見知らぬ顔を短時間見ただけでさまざまな印象評価をしています。これまで自分と他者を合成した顔に対して信頼性を高く評価することが知られていました。しかし、大勢の顔の類似度を客観的に評価することが難しいため、実際の社会で、見知らぬ人の顔の印象評価をするときに、自分に似ている顔かどうかが信頼性の評価に影響を与えるかは不明でした。
 今回、中野准教授らは、最先端の顔認識の人工知能を用いて大勢の人々の顔の類似度を客観的な数値で算出し、信頼性評価のスコアとの関係を調べることで、同性同士の第一印象評価では、自分に似た顔ほど信頼する傾向があることを実証しました。これにより、P2Pレンディングなど、インターネット上での初対面同士の円滑なマッチング促進への応用が期待されます。
 本研究成果は、英国科学誌『Humanities and Social Sciences Communications』に、2022年7月2日に公開されました。

●研究の背景
 これまで、人は、他者と自分を合成した顔に対して、信頼性を高く評価したり、親しみを感じることが知られていました。しかし、実社会においても、自分の顔に似ているかどうかに基づき、見知らぬ他者の第一印象を決定しているかは不明でした。というのも、大勢の顔の中で、特定の二者の顔がどのくらい似ているのかを客観的に評価することが難しいという課題がありました。

●研究の内容
 中野准教授らの研究グループでは、高い顔認識性能を持つ最先端の深層ニューラルネットワークを活用することで、日本人大学生230名(男性115名、女性115名)の顔の類似度を客観的な数値で算出し、信頼性に関する第一印象のスコアとの関係性を調べました。その結果、同性の顔の印象を評価するときは、自分に似ている顔ほど信頼性を高く評価する傾向があることがわかりました(図1赤線)。一方、異性の顔の印象を評価するときには、自分に似ているかどうかは、信頼性の評価に影響を与えませんでした(図1青線)。本研究結果は、実生活における社会的判断において、「自分に似ているか」が重要なファクターになっていることを実証するものです。

●本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究成果により、信頼性の第一印象が重要となるP2Pレンディングの相手探しやSNSのメンバーマッチングにおいて、顔の類似度に基づいたパーソナル提案の技術への応用が期待されます。また、実社会において、人がどのような社会的判断戦略を用いているかを解明することに貢献します。

●特記事項
 本研究成果は、2022年7月2日に英国科学誌『Humanities and Social Sciences Communications』(オンライン)に掲載されました。
・タイトル: ''You trust a face like yours.''
・著者名: Tamami Nakano, Takuto Yamamoto
・DOI: https://doi.org/10.1057/s41599-022-01248-8

 なお、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ「人とインタラクションの未来」における研究課題「SNSが生み出す自己像の歪み形成機構の解明とその補正法の開発」(研究者:中野珠実)の一環として行われました。

●用語説明
(※1)深層ニューラルネットワーク
 多数の層からなる層状のニューラルネットワークのことで、人工知能の技術の一つ。顔認識の深層ニューラルネットは、顔写真を入力すると、多次元からなる顔の特徴ベクトルを出力する。
(※2)顔の類似度
 2つの顔がどれくらい似ているかを、それぞれの顔の特徴ベクトルの間のユークリッド距離を算出することで数値化
(※3)P2Pレンディング
銀行等の金融機関を通さずに、インターネットを経由して、資金を必要としている個人と資金を提供する個人を結び付ける仕組み

【中野准教授のコメント】
 「顔が似ているか」という判断は実はとても難しいものです。目や口などのパーツが似ているのか、位置関係が似ているのか、など、どこに注目するかで変化してしまいます。一方、顔認識のニューラルネットワークはバーコードを作成するかのように、顔写真を入力すると、その顔の特徴を数値ベクトルで表現できます。それを従来の心理評価と組み合わせることで、今まで実証が難しかったことが検証できるようになりました。

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