〜この学問に注目〜会計学特集|大学Times

〜この学問に注目〜会計学特集

会計学は大学の商学科や会計学科などで学ぶことができる学問として、多くの学生が学んでいる分野の一つである。税理士や公認会計士を目指しやすい学科としても知られ、同資格取得のために進学する学生も多い。しかし、会計学の役割はそれにとどまらず、企業の経営戦略や経済の発展と密接に係わる学問としての側面も強い。ここでは、井上達雄や太田哲三など日本を代表する会計学者も教鞭を執り、多くの会計学者を輩出し日本の会計学の発展に貢献してきた一橋大学と中央大学の両大学にインタビュー。会計学とはどのような学問であるのか。加賀谷哲之准教授と河合久教授にお話をうかがった。

【一橋大学 商学部 加賀谷哲之准教授】
会計学は企業や経済の実態を「見える化」する学問

会計学を学び、企業の実態を解明し、企業や経済の発展に貢献する

一橋大学 商学部 加賀谷哲之准教授

会計とは、国や企業、個人が営む経済活動などを貨幣単位に記録・計算・整理し、管理および報告する行為のことです。国や地方自治体では公会計、企業は企業会計と呼ばれますが、ここでは会計学では主に企業会計を対象に説明をしたいと思います。

企業は投資家などから調達したり、銀行などの債権者からの借りた資金などを運用して、製品の製造・販売したり、サービス提供などを行います。そのとき、投資家や債権者はその企業がどれだけもうけているのか、どのくらい資産があるのかといった、経営成績や財務状況などを参考に、どのくらい資金を提供しようかと決定します。財務会計は企業の経営成績や財政状態などを明らかにすることで、彼らの意思決定に役立つ情報を提供することを狙いとしています。一方で管理会計は企業内部の経営者などに対して、意思決定や業績評価に役立つ情報を与える役割を果たしています。

こうした会計学の機能を突き詰めて考えると、企業などの実態を「見える化」することを通じて、企業や経済の活動を円滑化させ、その発展を促すことにあると見ることもできます。

例えば、日本には多くの化粧品会社があります。化粧品会社でも百貨店などに店を構えてビジネスを行う企業もあれば、実店舗をほとんど持たずインターネットを介して商品を販売する企業もあります。百貨店などでビジネスをする場合、多くの販管費がかかりますが、インターネットならほとんど必要ありません。そういった企業ごとの経営戦略なども、企業の会計数値を見ることで読み取れます。

また、世の中には「見える化」された会計の数値がたくさんありますが、その数値や情報を投資家がうまく活用できているのか、どのような状況で経営者は利益数値をコントロールするのか?経営者による会計不正を会計士がいかに見抜くかなどを解明することを重視する研究のアプローチもあります。

大学では会計学を軸に多彩な学問を習得することで問題解決力を育む

会計というと簿記をイメージされる方が多いかもしれません。確かにその側面も重要ですが、それに加えて、企業の実態を「見える化」するためには、どんな会計制度や処理を使えばいいか、数値をどのように分析すればいいのか。そして、その企業の利害関係者に必要な情報を提供することで、彼らとのコミュニケーションを円滑にし、企業や経済をよりスムーズに発展させていくにはどうしたらいいのかを学ぶことも会計学の課題なのです。

私のゼミでは、会計学(財務会計)をベースに戦略論やファイナンスを絡めながら企業行動を分析していきます。例えば、日産自動車がカルロス・ゴーン社長の下、本当にV字回復を果たしたのかなどの学生の疑問や問題意識から出発して、企業の財務データやその時期にとった企業戦略、組織の動きなどと照らし合わせながら分析し、自分なりの答えを導きだします。また我々のゼミでは日本経済新聞社などが主催する日経STOCKリーグというプログラムに学生は参加しています。自分たちが決めたテーマに基づいて仮想の株式投資ポートフォリオを組みます。単に儲けのためだけではなく、日本経済や企業をよくするために、どういう企業に投資するといいかという発想で取り組み、レポートを提出していきます。

会計学はいろいろな学問と密接に結びついています。ですから、高校生の方には、企業や経済に関心を持ち、企業や経済を発展させていく学問としてぜひ会計学に興味を持っていただけたらと思います。

【プロフィール】

加賀谷哲之(かがやてつゆき)

2000年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部専任講師、助教授を経て2007年より現職。専門分野は財務会計、IR、リスク管理、企業価値評価。

【中央大学 商学部 河合久教授】
会計学は、会社をリードし動かす役割を担う。

企業の会計においてはコンピュータとの連動が不可欠

中央大学 商学部 河合久教授

会計学は、大きく分けて財務会計と管理会計の二つの領域に分けられます。会計は経営成績や財務状況などの情報を正しく伝える役割を担っており、財務会計の場合は、株主や銀行など資金の提供者に対して、会社の資金がどのように使われているのかということを正しく伝えることが求められます。また会社は正しい情報を伝えるだけでなく、当然、株主のために業績をあげて存続していかなければなりません。このとき、マネジメントや業績向上に役立つよう、経営者などに有益な情報を提供していくためには、先ほどの財務会計とは別の側面の会計が必要とされますが、こちらは管理会計と呼ばれます。

私の専門とする分野の一つが「会計情報システム」です。例えば製造業、卸売業、小売業など、物の生産とか提供を生業とする会社では、物を「買う」「作る」「売る」というのが役割となります。その3つの段階それぞれにおいて必ず会社の財産が動きますよね。会社の決算書を作成する際には、この「買う」「作る」「売る」という各々の段階でどのような事実があったのかを記録し、それをお金の変動としての会計情報に変えていく必要があります。各業務を会計情報に変換するしくみのことを会計情報システムというのです。

最近では仕事の現場には必ずパソコンが置いてあり、ネットワークでつながっています。例えばコンビニで、どのようなお客さんにどの商品が売られたかはレジ端末からコンピュータに記録されます。会計のしくみを会社で展開していくプロセスで組織のいたる所から情報や事実が集約されます。今日の会計は、経営者など一部の管理者だけでなく、組織の全ての人間に対して詳細な会計情報を提供していくことができ、その点においても大きな意味を持つのです。

会計情報システムの勉強は、単にコンピュータ操作の側面だけでなく、会計のしくみによって得られた情報が組織にどのような影響を与えるかにも係わり、ときには心理学、組織論または経済学を学んでいるのではないかと思うほど、多様な分野となっています。

「情報を作る」会計学から「情報を活用する」会計学へ

高校生や、会計学を学んだことのない方にとって、会計というのは、「簿記によって会社の数値を明らかにする」という印象どまりで、会計の持つその先のステップをイメージできていないかもしれません。物を売ったときに、普通の会計でいうと、「何をいくらで売った」だけですんでしまうかもしれません。しかし、経営においてそれを役立てようとしたとき「どの商品」が「どの支店」の「どの営業マン」によって売られたのかという情報が必要になってきます。このように、「だれ」が「何を売ったか」といった情報どうしをどのように結びつけるかは、普通の簿記では学びませんが、本学では、その先の「コンピュータ会計」に関する授業でその基本を学んでいきます。

これまで多くの大学の商学部や経営学部では、おそらく会計情報を創るということに主眼を置いてきたと思います。会計情報をどのように活用していくかという側面に注目して会計教育を進化させていけば、高校生にとっても会計に対する別の視点が生まれてくるのではと思います。

近年の情報化と連動することにより、会計は単なる職人の地味な仕事ではなく、会社を動かし、リードしていく役割を担います。これから会計学を勉強する人たちはそのような認識を持ってもらいたいと思います。

【プロフィール】

河合久(かわいひさし)

1983年中央大学大学院商学研究科博士前期課程修了。
いわき短期大学助教授、高千穂商科大学助教授、中央大学助教授などを経て2000年より現職。