【大学タイムズセミナー】増設する看護学部と大卒看護師の今後の展望−看護系大学に進学するメリットとは−|大学Times

大学Times Vol.14(2014年9月発行)

【大学タイムズセミナー】増設する看護学部と大卒看護師の今後の展望−看護系大学に進学するメリットとは−

大学タイムズセミナー

平成26年7月7日(月)大阪市にて高等学校教員を対象とした「大学タイムズセミナー【看護系大学・短大特集】」が開催された。当日、18校の関西地方の大学・短期大学の参加に高等学校教員99名が熱心に情報を収集し、意見交換が行われた。今回は、畿央大学健康科学部看護医療学科教授の伊藤明子氏による講演が行われ、増設する看護学部の背景にある現在の医療の現場と大学進学のメリット等についてお話しいただいた。

セミナー参加大学

看護系大学は増加の一途
求められる地域医療を支える在宅看護師

現在、全国的に大学の看護学部の増設が目立っている。以前は看護師といえば、専門学校卒業後、国家試験を通って病院に就職する人が圧倒的に多かったが、4年制大学の看護学部の増設の背景にはどのような事情があったのだろうか。看護師をめざしたいが、専門学校の方がいいか、大学へ進学した方がいいのかと悩む高校生の進路指導にあたる教員の方々を対象に、株式会社さんぽうでは大学が目指す看護師の育成についてのセミナーを開催。大学院修士課程を卒業後、現場で看護師を経験され、その後各大学で長年看護教育に携わってこられた畿央大学健康学部看護医療学科教授の伊藤明子氏に専門学校と大学の教育の違い、その将来性、また、現在の医療の現場と求められる人材とは等についての解説を伺った。

全国の看護系大学は毎年10校前後増え続け、12年前(平成14年)には100校だったものが、今年4月には234校となり、134校も増加した(表1)。全国約800弱の大学のうち、3割弱の大学が看護学部を有している状況である。この大学での看護師養成が急がれている背景には、まず、医療の複雑化、少子高齢化を支える医療スタッフの不足を補う目的がある。特に地域医療では、在宅看護を支える有能なスタッフを必要としているのである。

また、もうひとつの理由として、18歳の人口が減り、一人の子どもにかける教育費が豊かになった高学歴時代という一面もある。

看護系大学数及び入学定員の推移

大学で学ぶメリットは?専門学校とのちがいは?

では、実際専門学校と大学ではどのような違いがあるのだろうか。まず、看護師国家試験の合格率で比べてみると、今年の2月に行われた結果は、大学、養成所(専門学校含む)の新卒合格率は共に、96.9%と同数の高い割合であった。また、看護師への就職率で比べると、私立大学では87.1%、養成所は100%に近い数値である。(養成所は全国に523施設あり、その数値のばらつきもあるようだ。)

しかし、大きく違う点は、専門学校で修得できるのが、看護師国家試験受験資格だけに対し、4年制大学では、看護師国家試験受験資格のほかに、保健師と助産師の国家試験受験資格、また養護教諭一種免除が選択により取得が可能であり、職業の選択が広がるという点である。また、大学では専門学校と比べ、教養科目、専門科目とも選択項目が多く、幅広く学ぶことができる。つまり、現在求められている複雑化した医療、さらに地域医療の看護知識などに対応する学習が身につくわけである。

期待されるチーム医療での認定看護師の役割

また、大卒ならば大学院への進学も可能であり、より高い知識を修得した専門看護師やチーム医療で活躍する認定看護師、さらに、看護師長として働くための認定看護管理者へのステップアップも大学卒なら可能である。チーム医療というと、以前は医師を中心としたチーム編成であったが、現在は個々の専門知識を身につけたプロの集団を意味するという。看護師もそのスタッフの一員として重要な役割を担う。そのためにも、幅広く、深い知識を身につけた有能な看護師の養成が必要なのである。

今後、団塊の世代が65歳以上になる2025年に向けて、さらなる在宅医療等の推進を図っていくためには、医師または歯科医師の判断を待たずに一定の診療の補助を行う看護師の養成が急がれている。

伊藤氏は日本看護系大学協議会にて「大学で看護を学ぼう!」キャンペーンを看護協会と連携してPR活動に参画している。「大学で看護を学ぶことの意義」については日本看護系大学協議会のHPにて詳しく解説しているそうだ。

日々進化を遂げる医療の現場で、一人でも多くの優秀な看護師を送り出すためにも、大学が担う役割は大きい。学生の目的意識と個々の大学の掲げる理念とのすり合わせの重要さを知り、進路指導を考える機会となったことを期待する。

伊藤明子氏

【講演者プロフィール】

伊藤明子(いとうあきこ)氏

畿央大学健康科学部 看護医療学科教授(学科長)
松山赤十字高等看護学院卒業、日本女子大学養護教員養成修了
佛教大学文学部教育学科卒業、大阪教育大学大学院修士課程修了。
病院で看護師、また、高校教師等を経て、奈良県立医科大学看護短期大学・医学部看護学科教授、畿央大学教育学部現代学科を経て、現在に至る。