【巻頭特集 大学イノベーション】大学教育におけるアクティブラーニングとは?|大学Times

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【巻頭特集 大学イノベーション】大学教育におけるアクティブラーニングとは?

平成19年の学校教育法の改正で「学力の3要素」が法律で定められた。基礎的な知識と技能を習得し、これらを活用して課題の解決に必要な「思考力・判断力・表現力」を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことが明記されている。
“学力”とは“生きる力”であり、大学で修得した知識や技能を、社会に出てからの実生活に活かしたいという傾向は近年ますます強くなっているが、その学修方法のひとつとして注目を浴びているのが【アクティブラーニング(能動的学修)】である。本年9月に公表された文部科学省の調査結果では、全国454大学がアクティブラーニングの効果的な導入に向けて検討を進めているという。
その背景には、近年劇的に変化を遂げている社会情勢がある。社会の変化にいち早く着目し、全国の大学に先駆けてアクティブラーニングを平成24年度より導入、早くも成果を出し始めた長崎大学の事例を紹介する。

地方から世界へ
〜長崎大学多文化社会学部の挑戦〜

今から6年前の平成21年度、長崎大学では自ら育てる全学共通の学士像を明確化した。
それは以下の4点である。
①研究者や専門職業人としての基盤知識を持つ人、②自ら学び、考え、主張し、行動変革できる人、③環境や多様性の保全に貢献できる人、④地球と地域社会及び将来世代に貢献できる人。

社会が変化すれば、大学の目標設定も変化させなければならない。「例えば国際プロジェクトで働く場合、医療やものづくりのプロであってもその国の政策や文化がわからなければ通用しない。それが日本の大学教育の弱点だった」と片峰茂学長が述べるように、現代社会は「現場に強くて行動力があり、問題発見や解決力もある。人とコミュニケーションもとれる」バランスの良いグローバル人材が求められている。

さらに学長と学生との話し合いなどを通じて、学生が従来の教養教育に有用感を感じていない、専門教育との結合が見られないことなどがわかったという。学士としての力を高めるには、自ら学び、考え、表現する力を身につけることが根幹であるという考えから教養教育を見直すことになり、平成24年度から教養教育の改革に取り組んだ。それが、【モジュール】と【アクティブラーニング】である。

教養教育の改革は「教員が学生に教える」常識を捨てたところから生まれた

新しいシステムとして、教養科目をテーマごとに8〜9科目ずつ25のグループに分けた集合体=【モジュール】を作り、それを選択して1年半じっくり学ぶスタイルに変えた。モジュール毎の学生数は60〜70名、学部の垣根を越えて共に学ぶ「学びの共同体」である。ここでは学生参加型の授業【アクティブラーニング】が行われ、学生同士はもちろん、学生と教員とのコミュニケーションも育まれている。一方的な講義とそれを記憶するけの学習から、学生が積極的に発言して表現することで、自分で学ぶ力や行動する力、コミュニケーション力が育まれることが特長のひとつ。学生たちは能動的に学習することを通して、学問的な基礎力を身につけるとともに、論理的分析能力や批判的思考力、創造的思考力を伸ばし、3年次以降からの専門教育や地域でのフィールドワーク、インターンシップなどで学びを深めていく。

学生たちに、主体的な学修習慣をいかにして身につけさせるか。教員が学生に教えるという、これまでの教育方法の常識を捨てたところから生まれたアクティブラーニングは、カリキュラムの再編をはじめ、学生たちが予習復習できるようにwebの授業支援サイトを構築、さらには学修しやすくするために工夫を凝らした専用の教室を設けるなど、整備も進められている。

アクティブラーニングをベースにした
柔軟な思考力を育てる多文化社会学部

多文化社会学部は人文社会系の学部として平成26年にスタートした。外国語・社会科学・人文学からなる多様なカリキュラム、海外留学やフィールドワークなど積極的な学びのプログラムを通して、豊かな人間性を持つグローバル人材を育成している。授業はグループワークやプレゼンテーション、ディベートなど他者の発言を理解しつつも自らの意見を表明することに力点を置いたアクティブラーニング方式の授業を積極的に導入している。

1年次から徹底して英語力をトレーニング

同学部では「ことばの力」を重視し、系統的で集中した4年一貫の英語力養成プログラムを実施。その一環として1年次前期には「Transition Program」を導入しているが、英語科目と大学入門科目の他に夏季英語集中講座、英語カフェへの参加、教養ゼミナール成果発表会(英語プレゼンテーション大会)が含まれる。このプログラムにより、1年次10月時点でTOEFL iBT61点、TOEFL PBT(ITP)500点、IELTS5.5を目指す。同学部では学生の英語力の伸長度を測るため、TOEFL ITPを定期的に受験。第1期生の1年次前期と1年次後期では、TOEFLスコアの平均点が30点アップしたという(1年次前期484点→1年次後期505点)。

アクティブラーニングを取り入れた授業の一例
「教養ゼミナール」(1年次前期・必修)

1年次前期の学びの総まとめとして、英語プレゼンテーション大会を実施。学生達による対話型のグループワークを通してテーマを設定、学術的・社会的意義を備えた研究計画を立て、調査、アンケートの集約、キーインフォーマント・インタビューを実施し、その研究成果は聴衆を惹きつける技法を使って英語で行う。今年のテーマは「カクレキリシタンの多様性」「愛が生まれる瞬間」「長崎における宗教の調和:対話としての原爆記念セレモニー」など。厳しい英語での質問に即答する本格的なものだった。

日本人学生と留学生が共同生活

同学部1年生は入学時から1年間、寮で生活を共にする。1ユニットに個室と共有部分があり、4人のうち外国人留学生が1人入るルームシェア形式となっている。新入生同士や外国人留学生と共同生活を送りながら、大学キャンパス外の日常生活でも多文化状況の中での交流を体験している。学生の声「ルームメイトと一緒にご飯を作ったり課題をしたりとても充実しています。留学生と一緒に話をしているといろいろな日本との文化の違いに気が付くことができてとても面白いです。みんなとても仲良くなれ、安心して生活しています」

世界への扉を開くさまざまな留学プログラム

【短期留学】

1年次に,アメリカやカナダなどの英語圏へ3〜4週間の海外短期留学を全員必修で実施。英語をはじめとする外国語能力の向上と、異文化交流への関心を高めることを目的として数週間程度、サマープログラム、スプリングプログラムなどの海外大学との提携プログラムに参加する。

【中期・長期留学】

グローバル社会コースは半年から1年間海外の大学へ、オランダ特別コースは1年間オランダのライデン大学へ、それぞれ必修で留学する。社会動態コース、共生文化コースの学生にも中期・長期の留学を推奨している。

NPT再検討会議への参加など
活躍する学生たち

平成27年春にニューヨークの国連本部で開催された「NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議」では、「ナガサキ・ユース代表団」として派遣された12名のうち多文化社会学部から3名が参加。会議の傍聴や、ワークショップなどの活動を行った。