全教職員挙げて、全学年の学生が取り組む音楽大学の新しいキャリア教育とは−東邦音楽大学−|大学Times

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全教職員挙げて、全学年の学生が取り組む音楽大学の新しいキャリア教育とは−東邦音楽大学−

吹奏楽部やコーラス部で熱心に活動し、大学でも音楽を本格的に学びたいと考えている高校生は大勢いるだろう。しかし、就職は大丈夫なのだろうかという漠然とした不安から音楽大学への受験を断念したという学生が多いのも事実のようだ。しかし、音楽に打ち込んできた経験が、実は実社会で大切なスキルになるのだという。音楽の専門性を活かし、新しいキャリア教育を行っている東邦音楽大学。その名も「東邦スタンダード」というカリキュラムについて伺った。

音大生が持つ忍耐力、企画力、
コミュニケーション力の高さをを気付かせることから

徹底したキャリア教育が求められる現代 専門性を伸ばしつつ社会教育を

もともと「東邦スタンダード」とはどういうことからスタートしたのですか。

ご存知のように近年、大学はさまざまな形で大学評価を受けなければならない状況になっています。本学でも7年に一回、高等教育評価機構や基準協会などから、教育の方針、財政等の評価を受審しています。本学は平成20年度に前々回の評価を受けましたが、その際カリキュラムや指導法、経営基盤については承認をいただきました。一方、現在の社会状況がドラスティックに変貌していることから「音楽のみを教えているだけでは社会のニーズに合わないのではないか。社会に役立つための、あるいは社会を生き抜くための力を付けることが、芸術系の大学でも必要なのではないか」という課題が浮かび上がってきました。ちょうど一般の大学でもキャリア教育の機運が高まっていた時期にあたります。

本学でもこれを契機に「情操豊かな人格の形成」という建学の精神をベースに、「社会を生き抜く力としてのキャリア教育」というものを大学の授業で学べる体制を創って行こうという方針が学長から出されました。

音大生が企業から評価される潜在的キャリア能力

一般大学の就職に特化したキャリア教育との違いはどこですか。

東邦音楽大学

はじめはキャリア教育という色が強かったのですが、建学の精神を基本に据えながら、それを人格形成、社会人基礎力の育成に結び付けていこうという方向で、全学一致して取り組みをスタートしました。1年生から4年生までさまざまなステージを踏みながら必修科目として身に着けていく独自のシステムを構築しています。これは他大学にはほとんど例を見ないものです。

前半の2年間は音楽の勉強を中心に据えながら、同時に社会を生き抜いていく力を付けようというメッセージを含む課題にグループで取り組みます。2年生の後半からキャリア色を少しずつ濃くして行きます。通常キャリア教育というと外部講師の方に講義を依頼するケースが多いようですが、本学ではその要素も取り入れながら、基本は音楽専門の教員が担任となり、音楽をベースにしながら、専門性とともにキャリア教育あるいは初年次教育を担っていきます。音楽大学として独自の科目にチャレンジしていこうという訳です。全教職員が研修を受け、勉強会をしながら、学生たちに専門のスキルを磨くとともに生きる力をも付ける教育システムです。

本学の学生が一般大学と一番違うのは、ある程度の音楽的知識や技術を持って入学してきている点です。その専門性を磨きつつ、それを生かすための人格、能力を客観的にお互いに尊重するというのが本学の校風でもあります。音大生には自分が音楽しかやってこなかったという意識が強いものもおり、自分が持っている魅力の幅広さを理解していないということが多く見られます。しかし、彼らは子どものころから練習を徹底的に積み上げるという持続力や、仲間と力を合わせて演奏会を行う協調性や企画力、大勢の聴衆のなかで発表する表現力などを持っています。持っているけれど、気が付いていないのです。それを「東邦スタンダード」という学びの中でいろいろな要素を取り込みながら気付かせ、さらにその能力を高めていこうというのが、この科目のコンセプトであり特徴です。

音大生が持っているといわれるスキルはどのようなものか、具体的にお聞かせください。

今、社会で求められている能力というと、よく言われるのがコミュニケーション能力、企画力、リーダーシップ力等だと思います。音大生は1年次から専門の勉強に取り組みますが、グループレッスンや演奏会、オーケストラなどで学年の垣根なく合同で活動します。また、大学の外でも楽団への参加やイベントの企画等で活動する機会は多く、これらを通して年代の違う人と接するときの礼儀作法や話の聴き方、企画力、リーダーシップなども自然と身について行きます。演奏会を行うにあたっての舞台づくり、セッティングなど誰に指図されなくても音大生は自然に身体が動いているのです。現にさまざまな企業の人事担当の方から音大生の能力は高い評価をいただいています。

最近の大学生は勉強時間が少ないと言われています。音大生は一つの曲を仕上げるために毎日何時間も練習していないと完成しません。音楽の学びを通して身についた予習、復習の習慣は、社会の中で生きていくための幅広い学びに応用できるということを気付かせるのも東邦スタンダードなのです。

スケールメリットを生かした担任制度
一人ひとりと向き合い問題解決

1年次から自らの能力と向き合い、客観的にジャッジする力を養う

東邦スタンダードの具体的な学びとはどういうものですか。

東邦音楽大学

さまざまな方法を使っているのですが、大きな特徴は一般的な座学ではなくワーク形式が中心であることです。あるケースでは、7分間と時間を決めて、個人の視点からアウトプットを出してもらうこともありますし、5〜6人のグループを作ってそこで討議させ、その後プレゼンテーションを実行することもあります。例えば、大学のある川越市の魅力を発信するためには、というテーマを出して、各グループに討論、発表させる。身近な例を使いながら考えさせ、まとめ、発表させるということを4年間にわたって徹底して学ばせるのです。

1年次は大学でどういう勉強をするのか、それがどう役に立つのだろうかというところから出発して、それを音楽大学で学んでいくには何が必要なのか、さらに高めていくためにはどうすればよいのかという方向へ具体化していくわけです。社会人基礎力としての発信力や協調性というものは、この学びで着実に身についていくと考えています。

授業評価アンケートにおいても「自分たちが大学の中で専門以外でも何をやらなければならないかを見つけられた」「自分の能力がこういうところにあるということが分かった」という評価が寄せられています。また、音楽教室講師やIT関連企業など、さまざまな分野で活躍する卒業生からも、東邦スタンダードの学びが実社会で大いに役立ったという声が届いています。

従来の音楽大学の学生は、自分の音楽的スキルを上げて、できれば音楽を仕事にしたいと考え、しかし3年次くらいになってそれは大変厳しい世界でありプロとして生きて行けるのはほんの一握りなのだということに直面し、あたふたと他の道を探すというのが一般的でした。東邦スタンダードを学ぶことで1年次からキャリアへの意識を持ち「音楽で生きるためにはこれだけのスキルが必要ですが、持っていますか?持っていなければもっと努力しましょう。でも違う能力があるかもしれないから、こういうことにもトライしてみては」というように、自分を客観視しながら可能性を広げることができます。加えて演奏家コース、教職特設コースなど出口を強く意識したカリキュラムも構築し、教職員全員で学生たちをバックアップしています。

通常音大では、ピアノ科の先生はピアノ科の学生を、声楽科の先生は声楽科の学生だけしか見ていませんでしたが、本学では東邦スタンダードを軸にクラス担任制を取ったことで各教員の視野が総合的に広がり、さまざまな学生とコミュニケーションを取り、学生一人ひとりの状況を把握して問題解決していくことができるようになりました。これは本学のスケールメリットを生かした教育方法だと自負しています。

―最後に東邦音楽大学への進学を考えている学生にメッセージを

自分の将来像を具体的に描くには、まず「自分を知る」ことが大切です。本学では自分の持つ能力を気付かせ、伸ばすための学びの時間をしっかり取り、将来へのステップを担任と副担任がきめ細かくサポートすることで、学生一人ひとりの個性に合った指導を行えるよう工夫しています。音楽大学で学ぶことを通して磨かれる感性や表現力を社会に活かす道は、さまざまな可能性と職種に向けて開かれています。音楽大学進学に不安や悩みを持っていらっしゃる方は是非、気軽にご相談にいらしていただきたいと思います。