【これからの日本を変えるこの分野】東洋大学 理工学部生体医工学科|大学Times

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【これからの日本を変えるこの分野 東洋大学 理工学部生体医工学科】学びの目的・意義を知り「生体医工学」を未来に生かすために

生体医工学というと、理系の知識のない者には理解できない難しい学問というイメージがあるが、実は医療・福祉という日常生活に不可欠な知識・技術と言っても過言ではない。この生体医工学を学ぼうとする学生に目的意識を持たせ、夢への実現をサポートする「ダ・ヴィンチ・プロジェクト」という名のキャリア教育を行っている、東洋大学の理工学部 寺田信幸教授にその画期的なプログラムについてご説明いただいた。

機械系、医療系、福祉系に活躍の舞台を広げられる学問

生体医工学のルーツは
レオナルド・ダ・ヴィンチ

東洋大学

生体医工学というのは、医学と工学を融合させた新しい分野です。なかなか皆さんには知られていませんが、実は今の医学を支えているのは工学なのです。代表例としてはレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼は芸術家ですが、身体を観察して最初に動脈硬化を発見した人でもあります。他にも胎児は子宮の中でどのようになっているのかなどの今の解剖学にあたることも究めました。さらには、飛行機の設計も手掛けています。ですから生体医工学のルーツはレオナルド・ダ・ヴィンチだと常々言っており、それを私共のプロジェクト名にしました。

生体医工学科では医学、工学と幅広い領域を学ぶため、将来の活躍の場も機械系、医療系、福祉系と多岐に渡ります。ただ、幅が広すぎるという状況では、自分が何をしていいのかわからなくなってしまうこともあります。学生たちがそうした考えに陥らないよう「ダ・ヴィンチ・プロジェクト」を立ち上げて、一年次からキャリア教育を行っています。

“学ぶ”意味を探る
ダ・ヴィンチ・プロジェクト

大学入学前から将来の目標が定まっている学生もいますが、基本的に大学に入ると気が緩んでしまい、何をやっていいかわからないという学生が多くいるのも事実です。そこで、まず自分で物事を考えさせ、目標意識を持たせることが大事になります。学生は入学時の高いモチベーションを維持していかないと4年間の大学生活が続かなくなってしまいます。そこをしっかりサポートしていくのが「ダ・ヴィンチ・プロジェクト」です。

たとえば数学ですが、入学試験の一部は文系数学に近いような問題を出しています。そのために理系の難しい数学が苦手な学生も入学してきます。そのサポートとして学習支援室を用意していますが、一方でどうしても学習についてこられない学生もでてきます。数学を理解してもらうには、まず数学がなぜ必要なのかをわかってもらう必要があります。学習の動機づけも含めて面倒を見られるような体制を取っています。

コミュニケーション能力は
体験を通して身に付ける

「ダ・ヴィンチ・プロジェクト」ではまず、新聞を読むことから始まります。新聞を読むことで、今の世の中にどういったキーワードがあるかを知り、自分の生活や学んでいる研究との関連性を探ります。また、壁新聞作りを経験します。各班に分かれ、自分の学科にはどんな先生がいて、何をしているのかという下調べをして、アポイントを取ってから、インタビューをします。最初はアポイントの取り方もわからなかったものが、学科の先生のチェックやダメ出しが入り、仲間との情報の共有を通して次第にコミュニケーション能力もついてきます。さらにその中で生体医工学の機械にはどういうものがあるか、実際学科によりさまざまな機械があり、その体験・実習を通して自分が本当に興味のある分野は何かを見極め、それをテーマにパンフレットの制作なども手掛けたりもします。装置の事を詳しく調べ、写真を撮り、記事を起こし、デザインも考えて、自分たちで作り上げていきます。この一連の作業でその機械の利点や不利点などもわかってきて、表現する力もついてきます。そういう総合的なプロジェクトを展開しています。

「生体医工学」は医療・福祉の未来を
描くワクワクする学問

東洋大学

私自身、産学連携のもとでさまざまな研究を行ってきました。その中のひとつで十数年前から研究開発してきた、耳から身体の振動を捉えて心臓の動きを診る外耳道内圧測定装置というものがあります。これは体に傷をつけないので患者さんに負担を与えず、身体の中の状況を判断できるものです。お年寄りの脱水状態や身体に水がたまりやすい透析患者さんの状態を診ることなどに適しています。他には背骨が曲がる病気「脊椎側弯症」を早期に発見するシステムの開発も行いました。

また、対高齢者への福祉分野の技術開発では、家の中全体をITホームネットワーク化し、高齢者を見守るシステムを開発しました。これはキャンパス内にある「共生ロボットハウス」で研究が続けられています。例えば風呂場で転倒すると、それを家族や地域の人たちに伝えます。また、健康状態がすぐれないと判断した場合は、ロボットがインターフェースとなって機能し、救急車を呼んでくれます。

このように生体医工学は、医療、福祉と工学がいかに結びつくか、未来にどう発展させていくかを考えるワクワクする学問だと思っています。人のためになるような仕事がしたい人は、是非見学に来ていただいて、生体医工学で何ができるのかを確かめてほしいと思います。

人間が好き、ものづくりが好き、
自分は何かができると考える人に最適

「ダ・ヴィンチ・プロジェクト」はあくまでも学生の目標意識、将来のステップアップへの動機づけです。やる気にさえなれば、途端にできるようになる、いわゆる“化ける”学生が多いのです。だから私たちは、いろいろな経験の中でいかに学生を化けさせようかと常に考えています。

2015年からは4年生の時に大学院の講義を取ることができる先行履修制度も始めました。大学院に進学すれば4年生の時点で講義を取っているわけですから、半年もしくは一年は自由になります。その時間を海外留学や企業のインターンシップに使えるようになります。ダ・ヴィンチ・プロジェクトで確かな目的意識を持った学生たちがその活動をよりレベルアップできる環境が整うことになります。人間が好きでものづくりが好き、さらに自分にはきっと何かができると前向きに考える人に是非学んでほしい学問です。

寺田信幸教授

寺田信幸 教授
東洋大学理工学部学部長

1982年山梨医科大学医学部助手、1992年山梨医科大学医学部助教授、2003年山梨大学助教授、2005年東洋大学教授(現在に至る)