「2017年度以降の次年度新設学部・改組新キャンパスの動向」|大学Times

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「2017年度以降の次年度新設学部・改組新キャンパスの動向」

2017年度以降の学部新設・キャンパス新設については、「国立大の学部改組」「地方私立大学の公立大学化」「キャンパスの都心回帰」「医療系学部の増加」の4つの大きなポイントがみられる。それぞれの特徴について解説する。

2017年度以降の学部新設・キャンパス新設について、大きなポイントは4点ある。以下にそれぞれまとめた。

国立大の学部改組

2015年に大きな話題となった国立大の文系学部改組。実質的には、文系学部縮小であり、大学関係者から大きな反発が起こった。一方、「予算の配分などで受け入れるしかない」との意見も強く、2015年7月のNHK調査によると、人文社会科学系の学部がある国立大学42校のうち、8割が「改組・再編等を検討」と回答した。

2016年度は、弘前大学、岩手大学、信州大学、和歌山大学、高知大学など30校以上で学部改組・新設が進んだ。 新設学部としては、千葉大学国際教養学部、愛媛大学社会共創学部、佐賀大学芸術地域デザイン学部などである。2017年度以降も、横浜国立大学、神戸大学、九州大学などで学部改組・新設が進む予定である。

文系学部改組のうち、教育系学部のいわゆるゼロ免課程(教員免許取得をしなくても卒業可能)はいずれ改組される見込みではあった。誕生の経緯は1980年代の教育系学部縮小によるものであり、存在意義がはっきりしていなかったからである。

ただ、ゼロ免課程の改組だけにとどまらず文系学部全般が役立たず、とのイメージを広げた文部科学省の責任は重い。
しかも、あまりにも急に学部改組・新設を進めた結果、国立大学ながら学部の看板だけが先行してしまった大学もある。

新設学部の学生に取材をすると、学部理念・教育内容にあっている学生は勉強も進んでいる。一方で、「国立大学ならどこでも、と入学したが、方向性があいまい過ぎてきちんと就職できるか、不安」(西日本の国立大新設学部1年生)など、不安視する意見もある。国立大学といえど、新設学部については教育内容など吟味することが求められる。

地方私立大学の公立大学化

2016年度、山口東京理科大学が山陽小野田市立山口東京理科大学となった。今までは私立大学だったが、2016年度からは名前が示す通り、公立大学である。
山陽小野田市立山口東京理科大学以外にも、2009年の高知工科大学を皮切りに長岡造形大学、静岡文化芸術大学、名桜大学、鳥取環境大学、成美大学(2016年度)が公立大学となった。
2017年度以降も、旭川大学、長野大学、諏訪東京理科大学、新潟産業大学などが公立大化を検討している(日本経済新聞2015年11月18日)。

今までの私立大学が公立大学化すると、極端に人気が上がる。学費の安さや公立大学ブランドによるものだ。
当然ながら、これまでは大学所在地域の学生しか集まっていなかった志願者が地域外からも受験するようになる。

もともと、公立大学に転換する私立大学は、公設民営方式(自治体が設立し費用を負担、運営形態は私立大学)の大学が多い。自治体側としては「投資した分をムダにするくらいなら、公立大学化で生き残りを図ろう」ということだ。それに公立大学化したところで、自治体の負担はそう増えない。

公立大学化となれば、それだけ優秀な学生が集まり、その分だけ就職実績も上がる。いいことづくめではあるが、遠隔地にある公立大学への進学となれば、帰省や就職活動にそれだけ費用がかかることを意味する。

キャンパスの都心回帰

中央大学が法学部を2022年までに後楽園キャンパスに移転する予定であることを中長期事業計画に明記した(東京新聞2015年11月10日)。
2013年には、青山学院大学が文系学部を相模原キャンパスから青山キャンパスに移転。2016年には東京理科大学経営学部が埼玉県の久喜キャンパスを閉鎖、神楽坂キャンパスに移転。杏林大学は文系2学部を八王子キャンパスから井の頭キャンパスに移転している。
2017年にも、大阪工業大学が大阪の中心部である梅田に新キャンパスを設置。ロボティクス&デザイン工学部を新設する予定だ。

キャンパスの整備には巨額の費用がかかる。特に都心の中心部となると、土地代だけでも数十億円以上もの支出となる。
しかし、大学側としては不便な郊外キャンパスを維持したまま、受験生の減少に苦しむのは避けたい。それよりは、都心キャンパスへの移転・新設により受験生を確保したい、という思惑がある。

一方、学生側はキャンパスの都心移転で、郊外キャンパスまで行く時間が節約できるという大きなメリットを得られる。
実際、東洋大学が文系学部を朝霞キャンパスから白山キャンパスに集約(それまでは1・2年生が朝霞キャンパス、3・4年生が白山キャンパス)するようになると、受験生の出身地域が変化した。それまでは神奈川、千葉両県出身者はそれほど多くなかったが、移転後は大きく増えたのだ。
神奈川・千葉の受験生からすれば、2年間、乗り換えなどが不便な朝霞キャンパスに通うことは苦痛となる。しかし、4年間、ずっと便利な白山キャンパスであれば志望校候補とする理由として十分である。

さらに入学後の就職活動も大きい。郊外キャンパスであれば、就職課・キャリアセンターなどを利用したくても、説明会・選考などが都心である以上、そう簡単に利用できない。
しかし、都心キャンパスであれば、説明会・選考の合間にも就職課・キャリアセンターなどを利用できる。居場所があって、相談できる環境があれば他大学生よりも精神的に楽と言えるだろう。

こうした事情から、今後もキャンパスの都心回帰は東京・大阪だけでなく全国でも進むものと思われる。

医療系学部の増加

医療系学部、特に看護師、理学療法士、作業療法士養成の学部については、2000年代に入ってから、ずっと新設が続いている。
背景には、医療業界における人不足、短期大学・専門学校の閉鎖・四年制化が挙げられる。
特に後者については、医療業界や関連団体からの要請などもあり、顕著である。

2017年度も、福井医療大学(福井医療短大は募集停止)、一宮研伸大学(愛知きわみ看護短大は募集停止)、北海道千歳リハビリテーション大学、岩手保健医療大学、福岡看護大学などが新設される予定だ。

医療系学部は、就職に直結した実学系学部である。しかも、医療業界はどの職種も人不足であり、就職で苦労することはまずない。
ただし、医療そのものに向いた人材かどうかはよく検討する必要がある。また、大学・学部の新設が相次いだことから、一部の大学については文部科学省が教育内容の不備を指摘する事態にもなっている。

石渡 嶺司氏

【執筆者プロフィール】

石渡 嶺司(いしわたり れいじ)

大学ジャーナリストとして大学、就職活動などの書籍・記事を執筆。高校での進路講演、保護者向け講演や大学でのキャリア講演なども多数。主な著書に『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のバカヤロー』(共著・光文社新書)、『就活のコノヤロー』(光文社)、『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(共著・光文社)など多数。