グローバル教育とグローバル入試の実際とは|大学Times

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大学Times Vol.21(2016年7月発行)

グローバル教育とグローバル入試の実際とは

東京オリンピック・パラリンピックの開催、訪日外国人の増加、企業のグローバル進出の広がりなど、日本中がグローバルに向かって動き出している。先駆けて文部科学省が打ち立てたグローバル人材育成事業により、大学のグローバル系の学部・学科の増加は顕著である。さらに英語の外部入試を利用したグローバル入試もますます広がっている。はたして文部科学省の思惑通りに大学のグローバル人材育成は順調に進んでいるのか検証してみた。

SGUで朝日新聞に衝撃的な見出し「まるで詐欺」

こんな見出しは怪しい商法や企業に対してのもの、と思いきや、2016年4月26日の朝日新聞は違った。文部科学省の「スーパーグローバル大学」(SGU)構想についての記事であり、関係者に大きな衝撃を与えた。「SGUは世界に通用する研究や国際化を進める大学を重点支援するため、文科省が2014年に募集。104大学が計画を提出し、37大学が選ばれた。『世界ランキングトップ100を目指す力のある大学』(タイプA)は最大で年5億円、『グローバル化を牽引(けんいん)する大学』(タイプB)は最大年3億円を、それぞれ最長10年間支援する。だが、15年度の平均支援額は、タイプAが2億8800万円、タイプBは1億3100万円。1億円未満も5大学あった。『あれだけぶち上げておいてこれか』(西日本の大学)。『今も納得していない。でも、「文部科学省さま」に文句は言えない』(関東の私大)」
一方、大学側も、計画について、選定を受けるために「盛って」しまったことなどが書かれている。

高校以前の英語指導にも問題がある?

大学の国際化、グローバル化が急務であることは間違いなく、方向性としては間違っていない。ただ、その手法となると、文部科学省、大学、それぞれ追いついていないか、迷走しているのが現状、と言わざるを得ない。

最大の問題は、大学生になる前、高校以前の教育において英語の教育効果が表れていない点にある。「文部科学省が今月発表した2015年度の英語教育実施状況調査で、全国中学3年生の『実用英語技能検定(英検)3級以上」を取得した生徒と同等の英語力があると思われる生徒を合わせた割合は36.6%となった。また『英検準2級程度以上』の力があると思われる高校生の割合は34.3%。英検は、英検準2級を高校中級程度とし、英検3級を中学卒業程度に設定している』(日本経済新聞2016年4月4日)

同記事では、「国は2017年度までに、それぞれ50%をめざしている」とあるが、その目標達成のためにはさらなる努力が求められるだろう。英語ができない高校生が多いにも関わらず、グローバル人材がどうこうと議論しても詮無いことである。もちろん、英語がすべてというわけではなく、英語ができればいいという問題でもない。

英語の成績が優秀な高校生をグローバル人材として、さらに育成していく、というのも一つの考え方ではある。そのためにグローバル系の学部を増設していくのも、ある程度であれば理解はできる。

2015年度の英語力調査の達成度

グローバル系学部乱立で定員割れの国立大も

だが、グローバル系学部の新設については、文系学部の改組方針と合わさって「とりあえず、グローバル系」という国立大学があまりにも増えすぎた。やっていることは国際教養大と同じか、その二番煎じでしかない。そのうえ、乱立してしまったこともあり、国立大グローバル系学部によっては受験生集めで苦戦する大学も出てしまった。

ある国立大グローバル系学部は2015年、AO・前期・後期、いずれも集まらず、定員割れをしてしまった。
2016年は定員割れこそしなかったが、前期入試の実質倍率は1.1倍と順調とは言いがたい数値である。

英語の成績が良く、かつ、高校生にグローバル志向があれば、すでに実績を出している国際教養大や東京外国語大、大阪大外国語学部など。あるいは私立大なら早稲田大、上智大など、どちらにしても難関校に進学をする。英語の成績が悪ければ難関校には進学できない。

結果、地方国立大のグローバル系学部に進学をした学生からはこんな悲鳴を聞いた。「どこか入れるところ、ということで倍率が低いこの学部を選びました。でも、TOEICの卒業要件スコアが高すぎて、卒業できるか不安です」

進路指導でこだわりたい実績

では、グローバル系学部や教育を展開する大学への進路指導の際には、どんな点にこだわるべきか。学部としての実績、大学・教育全般としての実績、それから隠れ学費の3点が考えられる。

1点目、学部としての実績だが、これは従来の進路指導からすれば、「グローバル志向があれば、外国語学部かグローバル系学部」と考えてしまう。が、私立大だけでなく国公立大もグローバル系学部を新設し、いまや乱立していると言っていい。すでに卒業実績のある学部なら安心だが、新設の場合は実質倍率なども含めて慎重な検討が求められる。特に国公立大で実質倍率が2倍を切っている学部だと、その低評価の理由も含めて検討すべきだろう。むしろ、グローバル系学部ではない、伝統学部に進学し、そこで留学の機会を探る方がよっぽどいい、というケースもある。

2点目、大学・教育全般の実績とはグローバル系学部を持っていなくても、大学・教育全般で、もともとグローバル志向があったかどうかを確認しておきたい。北海道大学はグローバル系学部こそないが、留学と留学のための英語などを重視した教育プログラム・新渡戸カレッジを開設した。芝浦工業大も「工学教育の国際化」を掲げ、工学英語の強化、TOEICの4年間4回受験などを進めている。同大は私立理工系大では唯一、SGUに採択された。一方、グローバル系学部を新設した大学によっては、国公立・私立大を問わず、「とりあえず、『国際』や『グローバル』と付けておけば受験生が来ると思った」とする大学も少なからずある。

3点目、隠れ学費とは海外留学などを含めた総費用である。
グローバル系学部だと、海外留学・研修が4年間で半年から1年程度、設定されている。単位認定をされるので4年間で卒業は可能だ。とはいえ、留学にかかる諸経費は学生の個人負担となる。生活費の高い欧米圏だと学費と合わせて4年間の総額が450万円から600万円にものぼる。これは文部科学省「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果」の私立大平均額446万円(入学金、授業料、施設整備費)とほぼ同額か、それをさらに上回る。この隠れ学費の問題は、入学後に気付いても、転部等が困難となり、手遅れとなりかねない。進路指導の際には、この隠れ学費の問題もクリアできるかどうか、慎重な対応が求められる。

こうした現状は当の大学側も把握しているはずであり、今後の改善策に期待したい。

石渡 嶺司氏

【執筆者プロフィール】

石渡 嶺司(いしわたり れいじ)

大学ジャーナリストとして大学、就職活動などの書籍・記事を執筆。高校での進路講演、保護者向け講演や大学でのキャリア講演なども多数。主な著書に『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のバカヤロー』(共著・光文社新書)、『就活のコノヤロー』(光文社)、『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(共著・光文社)など多数。