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「大学ism」〜わが大学の誇り 女子美術大学 100年後に残り続ける 日本の工芸を問い、発信する

女子美術大学

染、織、刺繍、陶、ガラスなど日本工芸の復興に主眼を置き、これからの工芸のクオリティを高めるために、新たなる市場の創造を目的とした工芸の祭典、「21世紀鷹峯フォーラム」第2回in東京が10月22日〜2017年1月29日まで、都内各所にて開幕する。第1回大会の「京都提言」を引き継ぐ形で開催される、日本最大規模の工芸の祭典。イベントの主幹を担うのは、日本の工芸を牽引してきた女子美術大学。開幕直前の意気込みを、横山 勝樹学長・五十嵐 義明常務理事に伺った。

100年後に残したいと思える工芸の姿を検証する!

「21世紀鷹峯フォーラム」について教えてください。

横山 日本最初の芸術村とされる京都市北部・洛北の鷹峯には、職人であるつくり手から、芸術家、文化を支えた町衆、豪商たちが集い、それまでになかった使い手の視点を直接反映した工芸が生まれました。「日本の文化そのもの」といっても過言ではない工芸を日本全体で考え、見つめ直し100年後に残る工芸のために、日本全体をつなぐ取り組みが、「21世紀鷹峯フォーラム」です。第1回大会が昨年京都で開催されました。

五十嵐 主に京都の美術館が連携し、工芸にまつわる作家、職人、素材提供者、使い手、研究者、教育者、学生、そして広く一般の方々がそれぞれの立場から展示会、シンポジウム、フォーラムに集まり、「100年後の工芸のため」に多角的に考え、検証し、意見交換をして、未来に向けての提言を発信した、工芸の大々的なお祭です。

横山 その第2回大会が10月22日から来年の1月29日までの100日間、東京の美術館、美術系教育機関、研究所などが連携し合い各所で開幕します。そして、私ども女子美術大学が主幹を務めることになりました。本学の芸術学部 デザイン・工芸学科 工芸専攻は、開学以来116年の伝統を受け継ぎながら、「染、織、刺繍、陶、ガラス」を舞台に繰り広げられ、独自の発想を技術と知識で形にして発信し続けてきました。特に世界でも例を見ない刺繍の大学教育への導入に取り組み、工芸の刺繍を美術刺繍に格上げさせてきた功績など、日本の工芸を常に牽引してきました。そういう意味でも、「21世紀鷹峯フォーラム」の趣旨とは通ずるものがあります。

今回、貴学はどのような企画をお考えですか。

女子美術大学

五十嵐 京都には、伝統的な工芸の文化が根付いています。芸術家、職人など、つくり手の情報発信は大変充実しています。それに対して東京は、伝統的な工芸も育まれていますが、片方で絶大なる購買力の宝庫、大消費地という側面と、若者が非常に大勢いるという特徴があげられます。

横山 今や情報発信の拠点となっている渋谷、六本木、そして官庁街の虎ノ門というエリアを中心に、美術館のアカデミックな発信に加え、工芸とつながりを持っていないような若者に対しても、情報発信をしていきたいと考えています。

五十嵐 オープニングセレモニーは六本木ヒルズで行います。実際に本学の関係しているイベントは、工芸の教職員全員の作品を相模原キャンパスの美術館に1ヵ月間展示、渋谷ヒカリエでは、えどがわ伝統工芸者と学生とのコラボレーションによる江戸風鈴、江戸扇子の展示・販売、虎ノ門ヒルズでは複数大学の気鋭若手アーティストによるクラフトの展示をします。また日本の工芸を学生から盛り上げていく機運を醸成する狙いもあり、青山のスパイラルガーデンで、工芸専攻卒業制作・修了制作展も開催します。そのほかにもたくさんありますが、最終日には六本木ミッドタウンで「東京宣言」というような共同宣言を発表し、第3回の開催予定地、金沢につなげたいと思います。

東京ならではの情報発信力で工芸の市場拡大に期待!

大都市、東京大会にはどのような期待を込められていますか。

横山 東京ならではの情報発信力に期待をしています。工芸というものは、現在の大量生産時代を迎える前は、人々の生活の中心にありました。人が手でつくる大切さ、喜び、またその重要性は「人間の生活感の根源」でした。今回のさまざまなイベントや展示、ディスカッションなどを通して、「新たな美意識の発信」「便利なモノにあふれた生活の見直し」などを発信し、海外も見据えた、東京ならではの工芸に対する新しい価値観の創造に期待をしています。

五十嵐 民藝運動のなかで最も大切にされた美しさ、「用の美」。機能的であるとともに、手にして愛でて心を満たしてくれるという、日本が古来から守ってきた伝統を発信できればと思います。最近ではヨーロッパを中心とした諸外国でも、大変興味を持たれています。ただし伝統を守るには、常に改革をし続けることも大切です。ただジッとしていても、伝統は守れません。若者に100年後、残したいと思えるもの、そして工芸の良さを感じ取ってもらい、江戸文化を中心として工芸のネットワーク化が確立する100日間になればいいと思います。

工芸の世界では、後継者問題が大きなテーマといわれています。

五十嵐 東京でいえば、例えば江戸川区などの工芸品制作の現場でも、若者がいないわけではないのです。ですがすべてが手づくりで、効率、生産性で比べてしまうと自動化、大量生産とは勝負になりません。つまり生業として成立しにくいのも事実です。だからこそ、「21世紀鷹峯フォーラム」のような、関係各所が一体となった「オールジャパン」のイベントで、一人でも多くの使い手の皆さんにアピールし、工芸の良さを知っていただきたいのです。そうすれば自然と市場も大きくなり、後継者も育っていくものと信じています。

横山 現在の生産現場では、マーケティング、デザイン、モノづくりなどの生産行為はすべて分業化されています。それに対して本学では自ら構想し、デザインして創作するというアートの世界でしかできない「垂直統合」を教育の中で実践しています。一人の学生が素材の特性を知りつくし、加工のしやすさ、色の付けやすさなどを理解しているのです。どこへ出ても役に立てる人材の育成こそが本学のこだわりです。こうした学生と、つくり手とのマッチングがうまくいけば、後継者問題も解決に近づくと思います。

新たな価値観の創造と発信

現代の若者に対してのメッセージをお願いします。

横山 本学の学長に就任して6年になりますが、今の学生は、目標を見つけるとそのゴールに向かってキッチリと計画性を持って邁進する力が強いと感じています。そうした目標設定の一つとして、大学としては「21世紀鷹峯フォーラム」のような社会と接点のある活動を、今後も増やしていきたいと考えています。そのためにも、このたびの一大イベントを、是非とも成功に導きたいと思います。

本学には3週間〜6ヵ月間、長・短の海外留学制度も充実し、毎年100名ほどが海外で学んでいます。海外からの留学生も全体の5%を超え、文化の違う若者同士、お互い刺激を受け合っています。相互単位認定をする協定校制度も確立していますので、今後もどんどん海外へ出て、日常では味わえないアウェーの雰囲気の中で日本を見つめてもらいたいと思います。そして、次代を担う有望な学生には、「工芸は古いものではなく、新しいものである」という新たな価値観を感じてもらい、発信し続けてもらいたいと願っています。