看護・医療系大学の入試動向【関西圏】|大学Times

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大学Times Vol.23(2017年1月発行)

看護・医療系大学の入試動向【関西圏】

急速に進む高齢化と高度化し続ける医療技術を支えるため、より高度で専門的な実務能力を持つ人材の育成が求められるという背景のもと、2005年から2015年の10年間に全国各地で看護・医療系大学や関連学部を新設・増設する動きが活発になり、大学の数は2倍に増えた。受験生にとって進路選択の幅が広がった看護・医療系大学の入試動向を解説する。
看護医療系進学アドバイザー 植松弘幸

看護系の大学院へ進学して
専門看護師を目指そう

専門看護師とは看護師として5年以上の実務経験を持ち、看護系の大学院で修士課程を修了して、必要な単位を取得した後に専門看護師認定審査に合格すると取得できる資格のことである。

専門看護師は水準の高い看護を効率よく行うための技術と知識を深め、卓越した看護の実践を目的とする。日本看護協会が認定を進め、右表のように現在では11分野の専門看護師が病院や大学などの教育機関、訪問看護ステーション等で活躍している。

専門看護師の具体的な仕事内容を下記にまとめた。

・専門知識や技術に基づき、看護師に教育を行う。医療施設や地域の看護の質を高める。

・療養が病院から自宅へと移動しても必要な医療サービスが受けられるように、医師や看護師、地域の訪問看護ステーションなど、様々な職種・施設に働きかけ、連携を推進する。

・治療方針の決定など倫理的問題が生じやすい場面に関わり、患者や家族の立場を尊重して治療や療養を行えるように、医師や看護師などの関係者に働きかける。

・複雑で困難な問題・課題を抱える患者や家族の、病気とその背景にある不安や葛藤等の様々な要因を総合的に捉え、どのような看護が必要か判断して実践する。

・患者・家族によりそい看護を行うにはどのようなかかわりが必要か、看護師や他の医療機関の相談に乗り、専門知識を活かした助言を行い、問題解決を図る。

・日々の看護における課題を研究対象として捉え探求する。研究成果を実践に還元することで、看護の質の向上に貢献する。

専門看護師は自己研鑽の実績を重ね、資格を5年ごとに更新し、2016年1月現在1,678人の専門看護師が全国で活躍している。

専門看護分野別専門看護師教育課程数の推移

看護・医療系のセンター試験傾向分析

国公立大学の傾向

国公立大学の場合、一般入試のみならず、推薦入試やAO入試でもセンター試験の結果を合否判定に使用するケースがある。国公立大志望者にとって5教科7科目の対策は欠かせない。

中でも理科は2科目必須が主流である。また、理科の基礎を付した科目を選択科目に指定しない大学もある。10月のセンター試験出願時には、理科の受験科目を登録しなければならない。志望校の理科の範囲を確認し、登録科目を間違えないよう、細心の注意を払いたい。

下表は学科ごとに合格可能性60%とされる得点率の分布帯をまとめている。看護は学校数も多いため、得点率の幅が広くなっているが、学校数が少ない臨床検査や診療放射線の学科は、最低でも70%の得点率が必要となっている。

センター試験合格者平均得点率

センター試験を受験した後、ほとんどの受験生はセンターリサーチに参加し、合格可能性の判定結果を確認する。その結果によって、2次出願の大学を変更する受験生も少なくない。最新のデータを把握して受験生の動向を分析し、2次出願先を決定するようにしたい。

私立大学の傾向

私立大学のセンター試験利用入試は、センター試験の結果だけで判定する場合がほとんどである。出願だけで合否判定を受けられるという手軽さから、毎年多くの受験生がこの方式を利用している。

国公立大学との大きな違いは、判定に使用する科目が3科目(英語必須+選択科目2科目)という大学が多く、科目負担が少ないことである。また、選択科目の範囲も複数の教科にまたがっているため、高得点科目を選んで判定に使用することができる。特に理科の科目指定は「基礎1科目」「基礎2科目」「基礎+基礎なし科目」「基礎2科目または基礎+基礎なし科目」と多様なパターンに分かれる。各大学の募集要項でしっかりと確認したい。また、出願締切日がセンターリサーチ後という大学も多いので、得点状況によって出願先の変更・追加も可能である。

一方、受験科目が少ない分、合格者の得点率が国公立大学より高い傾向がある。また、募集人数が定員の10%前後と少ないため、いずれの大学でも倍率が高めになっている。

西日本の高倍率私立大学一覧

2016年度入試、西日本で一般入試の競争率が高かった大学を看護学科で比較してみた。私立看護大学数は61校、一般入試定員合計は3,082名、平均倍率は3.8倍だった。

看護・医療系大学の入試状況

各大学一般入試の最も募集定員の大きい日程で、競争倍率をまとめてみた。競争倍率が4.0倍を超えている大学は19校あった。東日本に比べ比較的私立看護大学の定員が少なく、競争倍率が5.0倍を超えている大学が11校あり、注目される。

西日本の高倍率私立大学一覧

医療系学校の状況

看護系と同様に養成校は4年制の大学と、3年制または4年制の専門学校(昼間・夜間)に分けられるが、医療系には公立の専門学校がほぼ存在しない。そのため、大学と専門学校の学費があまり変わらず、4年間で600〜800万円と看護系より高額になっている。全体的な志願者数は看護分野より少ないが、養成校も看護分野より少ないため、分野(職種)によっては倍率の高いところもある。また、ここ数年で養成大学が増加したが大学志向の影響もあり、首都圏の大学では平均的に志願者が多くなっている。医療系分野にも社会人受験生がいるが、経済的理由から3年制の専門学校を志望する割合が高くなっているため、大学入試への影響は見受けられない。 

専門学校はAO入試・公募推薦の実施回数が多く、早い段階から入学を決める受験生も多くなっている。そのため定員の残りが少なくなった一般入試では、競争倍率も高くなり、推薦入試に比べ難関となる場合が多くなった。専門学校への進学はAO入試・推薦対策が重要となっている。

■理学療法士

2016年度現在、養成所は全国で約250校あるが、2006年から2015年までの10年間で約100校が新設され、養成校の定員数が約7,300名から約13,600名と2倍近くに増えた。2005年度までは専門学校の新設が続いていたが、2006年度以降は大学が急増し、今では大学の定員数が全体の約4割を占めるようになった。また、もともとの募集定員が公立大学20〜40名、私立大学でも80名と少ないことや、大学志向の影響により大学の一般入試は競争率3.0〜6.0倍といった数字が目立っている。ここ数年、国家試験も看護に比べ、難関になってきている。2016年に実施された回では合格率74.1%と3,200名以上の不合格者が出ている。今後は卒業生の実績データも重視されるであろう。

■作業療法士

元々は理学療法と作業療法を併設する学校がほとんどであったが、最近は理学療法学科のみの新設が続き、現在では作業療法全体の定員数は理学療法の半分程、学校数も7割程となっている。国公立大学や難関私立大学の中にも公募推薦や一般入試でも競争率1.5倍を下回っている大学もあり、全体的に志願者数も理学療法より少なくなっている。大きな動作の訓練を行う理学療法に比べ地味な印象があるようだが、超高齢社会を迎えた現在、総合病院、老人保健施設、社会福祉施設、在宅分野など、活躍の場が広がっている。求人の場所や人数も増え、今後も注目すべき職業と言えるだろう。

■言語聴覚士・視能訓練士

職種名や職務内容などもあまり知られていないため、志願者数も例年あまり多くない。学校数・定員数ともに少ない分野ではあるが、理学療法に比べ入試倍率が低く、国家資格取得者の求人状況も安定しているため、進路選択としてはお勧めの分野である。また、今後の超高齢社会では需要の増加も見込まれている。ただし、言語聴覚士の国家試験合格率は他職種に比べ難関と言われていて、全国の合格率も他職種より低くなっている。学校選択の際には学校ごとの国家試験対策なども重要ポイントになるであろう。

■臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士

今後、医療技術の高度化が進む中、最新の知識と情報を持った技術者への求人は高い状況が続くと考えられている。様々な医療器具や、検査データを扱う仕事柄、理数系の知識を必要とされる。そのため、他の医療系職種よりも「理系志望」の受験生の流入が見られ、臨床検査は薬学志望、診療放射線や臨床工学では工学部志望の受験生が併願する傾向がある。この分野の中では大学の新設・増設が少ないため、大学の競争率は高い状態が続いている。専門学校を含めても学校数はあまり多くないため、推薦・AO入試だけでなく、一般入試対策も重要になっている。

看護医療系進学アドバイザー 植松弘幸

植松 弘幸(うえまつ ひろゆき)

看護医療系学校進学アドバイザーとして、高校・大学・専門学校で受験対策のガイダンス講師として活動。看護医療系学校の受験動向や、小論文・学科の対策を中心に講話。入試の面接や志望動機へのアドバイスも実施。