「道なきところに道をつくる」のがリベラルアーツ〜国際基督教大学(ICU)〜|大学Times

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大学Times Vol.25(2017年7月発行)

「道なきところに道をつくる」のがリベラルアーツ〜国際基督教大学(ICU)〜

第二次世界大戦後、世界平和に貢献する人材の育成をめざし、日米両国の国際的な善意により大学の礎が築かれた国際基督教大学(ICU)。日本初のリベラルアーツ・カレッジであり、入学時には専攻を決めず、様々な「学問分野に触れた後にメジャー(専修分野)を決定するメジャー制が特徴。学生の自主性を尊重した履修スタイルや、日英バイリンガルの語学教育も、次世代を見据えた新たな展開をみせている。日比谷潤子学長に話を伺った。

学生と教員、職員の距離が近く
「行き届いた」少人数教育

ひとりの教員に対し何人の学生がいるか、という大学の規模を示す指標がありますが、本学は1対18です。学生同士や学生と教員の距離が近く、職員も学生一人ひとりのことをよく知っています。そして、少人数だからこそさまざまな分野を一つのキャンパスで学ぶことができ、バランスのとれた大学だと思います。

リベラルアーツの本質は学生が
「自力で学ぶ姿勢」を育むこと

今日の学問は、物凄い勢いで進んでいます。したがって大学で学んだ専門的な知識が、生涯役に立つとは全く言えない状況になっています。いかなる状況になっても、学びたい事柄について「自力で学ぶ姿勢」を育むことが大事で、大学へ行くことの意味は、4年間ある学問を修めて卒業することだけではなく、これからさらに「学んでいくための基礎をつくる」ことだと考えています。

本学では専門科目だけでなく、選択科目も含めた卒業要件の枠の中で、その中から何を学んで何をつかみとっていくかを、学生自身が自律的に考えます。もちろんアドヴァイザーの教員や職員が助言や支援をしていますが、与えられたものだけではなく、自分自身で納得しながら4年間の学びを組み立てていくことが最大の特徴です。

よく言われる、「魚を獲って与えるよりも、魚の獲り方を教える」というイメージです。本学では獲り方だけでなく、魚の種類や旬を知り、生態系や環境問題、乱獲問題にまで関心を持ち、さらには道具やエサがなかった時の工夫のしかたまで学んでほしいのです。こうして、全体像の中で「魚を獲る」とはどういうことかを考えるのです。教員が教えるというよりも、「学生自身が関心を持って深く学ぶ場」を提供しています。

世界の分断を救うための教育としての宗教

ICUはキリスト教の精神に基づいて献学された大学です。キリスト教徒をつくることを目的とはしていませんが、何らかの形で宗教について考える機会を持ってほしいと願っています。

世界には「宗教」が大きな意味を持つ国や地域も多く、あまりにも「宗教」に無関心な生活をしていると、今世界で起こっていることが理解できなくなります。本学でも学生がキリスト教の身を学ぶのではなく、ひとつの宗教のバックボーンを基に、他の宗教はどういうものであるかを学んでいます。

また、日本は信仰者の数に比して、キリスト教主義を掲げた大学の割合が多いという特徴があります。このような大学の掲げる教育方針などを調べると、その多くが「奉仕」という言葉を明示していることに気付きます。以前、本学学生が卒業論文のために、キリスト教主義の学校に子どもを通わせた保護者にアンケート調査を行ったことがあるのですが、その結果によると「信徒にならなくても、キリスト教の教えを通じて、人に対しての寛容さなどを身につけること」へ、多くの保護者が期待感を持っていることがわかったのだそうです。

信仰を持つかどうかはともかく、キリスト教を通じて「自分だけが良ければそれでいい」という考えでは立ち行かないというのが世界だということを学び、同時に他の宗教の人たちも同じ精神を持っていることを理解することが大事だと考えています。

キャンパス内に全学生の3割が住む学生寮では
地域社会の一員としての活動も

国際基督教大学(ICU)

この春に新しい学生寮が竣工し、大学敷地内に約900名の学生が暮らす環境が整いました。学生寮の良さは、異なる価値観や生活習慣を持つ人との共同生活から、多くを学べることです。新しい寮は1フロア32名を一つの単位として、1〜4年生をバランスよく配置しています。1階には新たに、通学生や教職員も利用できるコミュニティ活動の場を設けました。

先般は寮で、東日本大震災の被災者支援を行った卒業生を招いて話を聞き、災害が起こった時に自分たちは何ができるかを話し合うワークショップを催しました。本学キャンパスは災害時の避難場所になっていますが、近隣には高齢者も多く、支援するにも「知り合い」でなければ連絡するのも困難な状況となるでしょう。そこで寮の学生たちは地域のお祭りに参加するなど、地域住民としての活動も行っています。寮生活に留まらない地域社会への参加は、これから世界で活躍する学生たちにとっても、グローバルな視点を持ちつつローカルな課題を解決するための貴重な経験となることでしょう。

新たなユニヴァーサル・アドミッションズは
日英+1の語学力をめざす布石に

近年は学生の教育背景や、言語習得状況が多様化しています。このため、さまざまな言語環境や教育背景に対応した入学者選抜制度と語学カリキュラムの構築をめざしています。今年度の9月入学からは、日本語、英語のどちらも母語ではないなど、より多様な背景を持つ学生を受け入れるために、ユニヴァーサル・アドミッションズを始めました。日英以外の母語を持つことを、学生の強みと捉えての受け入れとなります。

従来、主に日本の教育制度で学んできた4月入学生は最初にリベラルアーツ英語プログラムを履修し、主に海外の教育制度で学んできた9月入学生は最初に日本語教育プログラムを履修していましたが、日英バイリンガル+1言語の修得をめざす本学の学生にとって、日本語・英語以外の母語を持つ学生と交わることは、プラス1言語を学ぶ上での有意義な機会になると考えています。単に教室で履修する言語に留まらず、学生が日常生活で会話する機会も増えることでしょう。創立時からの日英バイリンガルに加え、さまざまな「+1言語」にあるふれるキャンパスにしたいと思います。

いろいろな学び方があって良い

一度職業に就いた人が、休職をして大学に行ける、あるいは会社を辞めた人が「次につながる」学びを学部や大学院でできるようになればという思いがあります。本学では「5年プログラム」という学部4年と修士1年で、合計6年分の学びが5年間で可能な履修方法もあり、学生一人ひとりの将来設計に対応できる、さまざまな学びの場を提供していく所存です。

本学をめざす高校生は、受験対策よりも日常の勉強をしっかり行い、片寄りなく広く学んでください。加えて、自分の興味あること(読書、部活動、自由研究など)に打ち込んで、苦手や限界を作らずに、自由な発想を持って本学に入学してください。

国際基督教大学 学長 日比谷 潤子氏

国際基督教大学 学長 日比谷 潤子(ひびや・じゅんこ)

ペンシルヴェニア大学大学院博士課程修了(Ph.D)。
慶應義塾大学国際センター助教授、ダートマス大学客員準教授、国際基督教大学準教授、教授、学務副学長を経て2012年学長就任。日本学術振興会評議員、日本私立大学連盟常務理事、日本産学フォーラム委員、文部科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会委員、第9期中央教育審議会委員。著書に「日本語教育の過去・現在・未来文法」「はじめて学ぶ社会言語学」など。専門は社会言語学。日本学術会議連携会員(言語・文学)。