【社会への扉】東邦大学 薬学部・理学部|大学Times

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大学Times Vol.25(2017年7月発行)

【社会への扉】東邦大学 薬学部・理学部

東邦大学

大正時代に女子医学専門学校として開学、戦後は自然科学系総合大学として90余年の伝統を誇る東邦大学。医学部や看護学部は就職事情が異なるため、現在は千葉県の習志野キャンパスにある薬学部と理学部の学生に対し、キャリアセンターがサポートを行っている。売り手市場といわれる薬剤師をはじめ、現在の理系学生の就職事情について、渡辺博喜キャリアセンター長に話を伺った。

国の制度変更がきっかけで
薬剤師は売り手市場となった

薬学部が6年制に移行してからのデータですが、卒業後は企業(治験・製薬)10%、病院30%、調剤薬局30〜40%、ドラッグストア15〜20%、公務員5%、その他という割合です。

以前は大学院に進学する学生も多かったのですが、6年制卒業後のドクターコースはプラス4年と長いため、現在では数名程度に落ち着いています。

薬学部が4年制から6年制に移行するときに、2年間薬剤師が社会に出なかったことに加え、2012年の診療報酬改定で病棟薬剤師業務実施加算が新設され病院の薬剤師採用が増え、世の中の薬剤師不足が加速しました。それ以来、今日まで、薬剤師の就職は追い風が続いています。調剤薬局やドラッグストアの採用意欲も依然として高いため、選り好みをしなければ誰でも就職できるという状況になっています。

東邦大学

就活よりも国家試験対策に力を注ぎたい
薬学部生の事情

我々が危惧しているのは、薬剤師国家試験は6年次の2月にあり、その前に卒業試験がありますので、学生は就活よりも試験対策に早く取り掛かりたい、という意識が年々強くなっている現状です。求人意欲の高い調剤薬局やドラッグストアは、5年生の冬の時期に早めの内定を出す傾向があり、学生も就活を早く終わらせたいという思いから、早々に内定の出た企業に決めてしまいます。我々としては将来性を鑑み、本学として採用実績のある、製薬メーカーや病院などの就職試験にもぜひチャレンジしてほしいという思いがありますが、病院薬剤師は欠員募集が原則ですので、定期採用のような募集時期がないことも影響しているようです。

奨学金返済のため報酬優先で
就職する学生も

本学でも卒業から3年後の職場在籍調査を行っていますが、離職率は10%台で全国平均より安定しています。ドラッグストアや調剤薬局の初任給は、製薬メーカーや病院よりも高額なため、奨学金返済のある学生は返済優先で職に就き、完了後に次の道を考えるという人生設計を立てている人もいます。そのような事情もあり、直近の5,6年はメーカー・病院の就職比率が下がっている傾向です。

薬学部が6年制になったことで、奨学金返済の問題や、保護者の要望からか「薬剤師資格」が必須要件の就職を希望する学生が以前よりも増えたことは、就職活動にも影響が出ています。

就職希望先で変わる
薬学部生へのキャリアサポート

キャリアセンターのサポートは、5年次の4月からになりますが、薬学部の5年生は病院・薬局実習があるので、全員が参加できる限られた期間に集中してガイダンスやイベントを行っています。実習で毎日忙しく、就職対策に時間を割けないという事情から、昨今は1年先輩からの情報の影響を受けやすく、就活に対して甘くなりがちな傾向もあるので、その点は我々が注意して学生の動向を見守っています。薬学部生の中でも製薬メーカーなど企業就職を希望している学生には、解禁日を見据えたきめ細やかなキャリア支援を行っています。

また、病院薬剤師の求人は民間の求人サイトには公開されず、大学に直接求人が来ます。病院の採用試験は併願ができないという独特の慣習もありますので、薬学部内でも希望就職先ごとのサポートを行っています。

同じ理学部でも異なる求人事情
理系の強みを活かした自前のキャリア支援を 実施

理学部は情報科学科を中心に、IT系の就職が約30%を占めています。情報系の求人は多く、SE・プログラマーは業界として人員が充足してないので、通年採用を行っているほどの状況です。景気は良く、売り手市場が続いています。

その一方、生物学科などでは、動植物や生態系を研究対象としており、大学での研究がそのまま就職に直結するのが難しい現状があります。就職に対する視野を広く持ち、理系の強みを活かせるよう、企業名だけにとらわれずに、その業界内で実績のある、堅実な中小企業も受けるよう指導しています。企業も学科指定で求人を出すのは稀で、理系全体として考えれば求人は決して少なくありません。

理学部のガイダンスは年4回実施しています。ガイダンスをペースメーカーにして、学生がその時期に何をしなければならないかを確認できるようにしています。現在はプログラムを内製化し、カウンセラーの有資格者でもあるキャリアセンター職員がすべて行っています。3年ほどかけて改善を重ね、内容も安定しました。

企業と協同して“魅力ある人材”を育成

2010年より「TOHOアライアンス」という本学と企業とのネットワークを組織しました。質の高い学生を育てて、企業へ就職するためのWIN−WINの関係づくりを目的としています。加盟企業は年々増加し、現在は710社と提携しています。

薬学部、理学部の学生の就職先に関連する製薬・治験企業は近年M&Aが盛んに行われています。調剤薬局も買収などを繰り返し、大型チェーン化の傾向が見られます。社会全体が流動化する今日にあって、学生たちには、どのような状況でも乗り越えられるポータブルスキルを身につけて、精神的なたくましさを培ってほしいと思います。文系学生と比較して、理系の本学学生は、就職活動に対しても精神的なたくましさや貪欲さが不足していると感じています。

理系学生は本当によく勉強をしているのでいつも感心しますが、そのような良さに気付いていない、コミュニケーションも苦手な傾向がありますので、カウンセリングを行う職員は、学生一人ひとりの良さをみつけて自信を持たせるよう、声をかけることを心がけています。

売り手市場が一時のブームでも
常に社会で必要とされる人材に

薬学部の売り手市場は、将来的には続かないと予測しています。歯科医院がコンビニエンスストアよりも増え、過剰傾向になってしまったように、薬学部も新設が相次ぎ、その分薬剤師も増えていくので、いつかは過剰となるでしょう。そんな時代が来ても、常に世の中に必要とされる人材として、実社会で研鑽を積んでほしいと思います。医療行政も、かかりつけ薬剤師や在宅医療を推進していますので、時代の変化に対応した専門職として活躍を願っています。