【これからの日本を変えるこの分野】北里大学 医療衛生学部|大学Times

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大学Times Vol.27(2018年1月発行)

【これからの日本を変えるこの分野】北里大学 医療衛生学部

日本初の心理職国家資格「公認心理師」。2018年度からは全国100以上の大学で公認心理師資格対応カリキュラムがスタートする。しかし学部は心理学部をはじめ文学部、人文学部、教育学部、人間学部、社会福祉学部、健康科学部など幅広く、受験生の志望校選択も迷うところであろう。超高齢社会が加速し社会構造が変化する現代、医療系大学で学ぶ心理学には、どのような特徴があるのだろうか。ますます活躍が期待される心理職の活動や卒業後の職域について、北里大学医療衛生学部 村山憲男准教授に伺った。

高齢者の「こころ」を研究する

私は臨床心理学、発達心理学、神経心理学が専門で、おもに高齢者の「こころ」の研究、認知症やうつ病の研究を行っています。本学に着任する前は、高齢者専門の大学病院で10年近く臨床・研究活動を行ってきました。認知症は、医学的な治療や心理的介入のために、早期からの的確な診断が求められます。この病院で働いている間には、創立メンバーの一人として院内にもの忘れドックを開設し、心理アセスメントを担当してきました。また、約40名の高齢者が入院する認知症病棟でも、心理職として業務を担当してきました。認知症高齢者の質の高いケアのためには、現在の患者の特徴を的確にアセスメントするだけでなく、若いころからの人生を尊重することも重要です。平均年齢を80歳として、40名分つまり合計3200年分の人生を請け負っているという、とても尊厳のある仕事だと感じていました。

心理臨床では、一人ひとりと向き合って生の声を聞き、時に家族や他職種の協力を得ながら、これまでの人生を踏まえて、その人の特徴を全体的に捉えることを目指します。実際のカウンセリングにおいては、丁寧に傾聴を重ねることによって対象者を支え、こちらが病気を治すというより、対象者自身が健康になるようにサポートする役割が求められます。

認知症は高校生の将来にも関わるテーマ

チーム医療演習

高齢化は今後、日本を筆頭に世界的に深刻化していきますが、現在の日本の高齢化率が26.6%(2015年国勢調査)であるのに対して、2060年には40%近くになるという予測もあり、高校生が高齢になるころには、今ほどに若者に支えてもらえない時代が到来すると考えられます。

また、高齢者の割合が増えれば、認知症の方の割合も増えることになります。認知機能が低下して一人で生活ができなくなった状態を「認知症」と呼びますが、その前に「軽度認知障害(MCI)」(認知機能は低下しているが、一応生活できている状態)という段階があり、65歳以上の4名に1名が認知症かMCIという統計があります。これは、自分自身が認知症やMCIになるリスクとして重要なだけでなく、家族が認知症やMCIになり、介護者として対応を余儀なくされるという点においても重要です(父方・母方それぞれの祖父母を合せると4名!)。

心理学を学ぶことは、人間の生涯の心の変化を知るだけでなく、自分自身と向き合うための知識と教養を得ることにもなります。また、高齢となる家族の心のケアのほか、「自分がいずれ年寄りになったらどう生きていきたいか」といった難しいテーマを考えることが今以上に切実となり、その点からも心理学を学ぶ意義があるのではないかと考えます。

在学中からの「チーム医療演習」「病院実習」経験は強みに

北里大学は医療系の学部がある総合大学です。心理学は人文や教育などいわゆる文系の大学でも学べる学問ですが、本学では医療衛生学部健康科学科において学びます。当学科では、身体的・医療的な科目とともに心理学を学ぶことができるので、病院勤務など医療の心理職をめざす人にとって、とても良い環境です。

大きな特徴は、在学中に「チーム医療演習」や「病院実習」があることです。「チーム医療演習」では医学部をはじめ各学部の垣根を超えた演習がカリキュラムとして整っているので、医療現場で心理職として働く自分の将来像や就業意識が育まれます。

また、第一種衛生管理者(国家資格)などの資格も取得できるので、産業領域で心理職として働きたい方のほか、一般企業に就職する際にも役立ちます。

心理職の国家資格誕生で医療では需要アップ

心のケアの重要性が叫ばれて久しいですが、これまで心理職の国家資格がなかったため、医療では心理職による「カウンセリング」が診療報酬の対象とならず問題視する声がありました。公認心理師が誕生した背景のひとつには、医療における心のケアの充実があります。国家資格である公認心理師は、今後、診療報酬の対象となってくると考えられますので、公認心理師の需要が増え、働き口も増えることが期待されます。

公認心理師はさまざまな場所で「心のケア」の
従事が可能に

公認心理師の資格を取得することで、将来の仕事の幅が広がります。 学校など教育現場では現在、スクールカウンセラーとして主に臨床心理士が就業していますが、今後、公認心理師がその役割を担うことが期待されています。医療の現場でも患者のこころのケアやアセスメントなどチーム医療の一員としての仕事が増え、産業界では一定規模以上の企業に義務化されたストレスチェックの運用に、福祉の現場では虐待などの被害を受けた子どもへの対応に、司法などの世界でもこれまで以上に心理職としての活動範囲や役割も増えるでしょう。

公認心理師は、医療における診療報酬の適用になることが期待されるほか、国家資格という社会的信用も加わって就業の場が広がり、より多くの国民がこころのケアを受ける機会が増えるので、その点でも良い資格だと思います。

実は、スクールカウンセラー等を志望する人こそ
医療系大学で心理学の修得を

チーム医療演習

高校の文系クラスで心理学を志望する人も、ぜひ本学のような医療系の総合大学への入学をお勧めします。特に将来、教育現場でのカウンセラーなどをめざしている人には、医療系大学ならではのカリキュラムが有用となるからです。たとえば、生徒が抱える問題のなかには医師との連携が必要不可欠なものがありますが、学校のなかに普段は医師がいないため、心理職はその点を特に的確に判断しなければなりません。教育現場での心理職は、実は医療現場で働く心理職以上に医療的な基礎知識が求められるという意見もあります。その点で、本学で学ぶチーム医療演習など学部の垣根を超えた学びの経験は大いに役立つでしょう。

本学入学後、医療的な知識を学ぶために理系科目がありますが、高校で生物、化学、物理を履修していない場合でも、本学には学習サポートセンターなどのフォローアップ体制が整っていますので、文系の方も安心してください。

日本のココが変わる

村山 憲男 准教授

国家資格である公認心理師がスタートすることで、今よりも様々な職場に進出できます。医療、教育、産業、司法、福祉などの各現場でのポストは増え、ストレス社会における心のケアの重要性が叫ばれる日本では、ますます活動の場が広がるでしょう。
特に、高齢者人口の増加にともない、医療や介護における心理職の需要は確実に増えますので、人材育成においても社会のニーズに応えていかなければならないと考えます。

北里大学 医療衛生学部 村山 憲男 准教授 博士(心理学) 臨床心理士
(北里大学大学院医療系研究科 臨床脳神経心理学)

順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターで、心理臨床業務・研究に従事。2011年より北里大学勤務。(臨床心理学、発達心理学、神経心理学)現職に至る。理念は「世の中のためになる活動をすること」