【関西特集】京都精華大学|大学Times

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大学Times Vol.28(2018年4月発行)

【関西特集】京都精華大学 特別対談 前学長 竹宮惠子× 新学長 ウスビ・サコ

2018年4月、多様性を尊重するキャンパスづくりを推進してきた竹宮惠子に代わり、人文学部教員のウスビ・サコが新学長に就任。「多様性」をキーワードにした2人の対談から見えてきたのは、「社会の通念にとらわれない学生を育てたい」という共通する想いでした。

前学長 竹宮惠子× 新学長 ウスビ・サコ

他者の多様性を理解することを当然と思っていた幼年・青年期

京都精華大学

竹宮 2014年に学長に就任してから、いくつかの改革に取り組みました。そのひとつが「ダイバーシティ推進宣言」の発表です。この宣言では、多種多様な人間によって形成される「大学」という場所で、すべての構成員が自分と異なる境遇や価値観を持つ他者への理解を深め、共助の精神を身につけることをめざしています。

サコ 「自分と異なる境遇や価値観を持つ他者」については、どのようにお考えですか?

竹宮 わたしは小学生の頃から、まわりが「あの人とはつきあわない方がいい」といわれる人がいれば、よく知りもしないのに敬遠する態度のほうを疑問に思い、あえて交わりに行く性格だったんです。それに漫画家として、性別、年齢、国籍、ときには惑星まで異なる登場人物をたくさん創造してきました。その経験から、たとえ異世界の人物やキャラクターであっても、創造力をはたらかせればその立場になって考えることができると信じています。サコさんはどんな幼少期を過ごされたのですか?

サコ わたしはアフリカのマリ共和国の首都で生まれ育ちました。兄弟は3人ですが、実家では常に20〜30人が一緒に生活していました。マリには23の民族がおり、宗教も言語も異なる人々が集合居住していることが多く、そのような環境では自然と多様性を認識するようになります。でも中国へ留学すると、当時は、アフリカ人がめずらしかったのでしょう、あれこれ言われました。手を洗っていたら「肌の色は落ちないんだね!」と驚かれたこともあります。来日してからも似たような体験はありましたね。

竹宮 そのようなとき、差別されているとは思われなかったんですか?

サコ 思いませんでした。私は一対一の人間関係で起こるのは「差別」ではなく、情報が足りていないことによる「区別」だと考えています。それは認識が変わることで改善できるものです。たとえば「日本人はアフリカ人をバカにしている」と怒る人がいれば、わたしは「それならどうすれば相手にアフリカの良さを知ってもらえるか、あなたが考えて行動しましょう」と提案します。

多数派の認識を変えることで少数派を特別視しない社会へ

京都精華大学

竹宮 「多様性を尊重する」というとき、社会的強者から弱者を気づかうような視点になる場合がありますね。わたしは、重要なのは「特別視をしない」ということだと考えています。なにか属性の違いによる摩擦があったとしても、過剰な対応をすることなく、普通に謝ったり、説明したりすればよいのです。

サコ いわゆるマイノリティ(社会的少数派)へ優遇措置をとるなどで対応する、という考え方で進めてきたのが日本の今までのやり方です。精華はもっと広い視点で、マジョリティといわれる物言わぬ多数派の認識を変えることに取り組んできたと思います。与えるという発想ではなく、違いは誰もが持つものと理解し、認め合い互いに成長するんです。この対談のテーマは「多様性とめざすべき社会」ですが、多様性というのは、そもそもすでにあるものなんですよ。重要なのは、それをどう認識していくかです。

竹宮 2017年3月に開設した寮(国際学生寮・修交館)がその象徴ですね。留学生と日本人学生がペアでひとつの部屋に住むことで、言葉や生活習慣、宗教などの違いから、大小さまざまな問題に直面せざるを得ない。摩擦は起こりますが、そうした経験こそが互いの壁を乗り越え、心を通わせるうえでの大切な学びとなります。

多様性を認める精華の環境で社会の通念から自由になる

竹宮 来年4月から学長職をバトンタッチしました。4年間、さまざまな改革に取り組んできましたが、まだまだ変えきれていない部分が多いので、ぜひサコさんに推進してほしいです。

サコ わたしが次期学長に選ばれたとき、ニュースではよくアフリカ人であることが話題になりました。ですが、精華の教職員がわたしを選んでくれたのは「サコと一緒に仕事がしたい」という感覚によるものです。学生たちもわたしを特別視せず、「サコさん」と呼んで、いち教員として接しています。そんな精華の環境で学んだ学生には、将来的に、めざすべき社会へ世の中を引っ張っていくリーダーシップが培われると期待しています。たとえばこれからの社会はAI技術の発展やIT化が進むことによって、今より人間の仕事がなくなるといわれているけれど、大切なのは「それらを活用していかにしあわせな社会をつくるか」を考える感性です。学生たちには精華の教育環境を通じて、社会の通念にとらわれず、自由な感覚を持てる人へと育ってほしいです。