【これからの日本を変えるこの分野】東邦音楽大学 パフォーマンス総合芸術文化専攻|大学Times

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大学Times Vol.28(2018年4月発行)

【これからの日本を変えるこの分野】東邦音楽大学 パフォーマンス総合芸術文化専攻 音楽大学への新しい進路、無数のエレメントをつなぎ合わせて、エンターテインメントを学ぶ

東邦音楽大学

音楽大学といえば、幼少期から音楽教育を受けてきた特別な学生だけが学ぶ場所といったイメージが強い。今年、東邦音楽大学に新設された「パフォーマンス総合芸術文化専攻」はそういったイメージを払拭させた。まず、特異なことは音大では必須とされる実技テストがない点だ。カリキュラムも独特でクラシックからポップス、邦楽などを実技と理論から学ぶ。また、講師としてさまざまな分野の著名人を招聘。音楽をバックボーンにエンターテインメントの世界だけでなく、さまざまな分野で活躍できる人材育成を目標に掲げている。この専攻に情熱を注ぐ高橋幸雄特任教授と城之内ミサ特任教授にお話を伺った。

開かれた音大へ、新専攻誕生の背景

新専攻開設の経緯は?

高橋:音楽大学は才能豊かな演奏家を送り出すことが使命ではありますが、演奏家にならない学生たちが音楽を学ぶことによって、どういったキャリアを身につけることができるのか、そうしたことを大学として考えざるを得なくなったんです。音楽をベースにして社会の中で自分の立ち位置を見つけられるような、そういう能力を見いだせる専攻を立ち上げることが、いまのニーズに合っているだろうとの考えに基づきパフォーマンス総合芸術文化専攻を開設しました。この専攻は実技中心というよりも文化や語学、あるいは音楽業界、世の中の仕組みなどを勉強しながらその内容を実際にインターンシップで体験をさせて、自分の立ち位置がどこにあるのかということを実感を持った上で、スキルを高めていくのが大きなポイントとなっています。

城之内先生はエンターテインメントの世界だけでなく、ユネスコの平和芸術家でもあり、大学の教育も担っていらっしゃいますので、エンターテインメントを中心にさまざまな領域を幅広くコラボレーションさせていけるだろうということで最適な選択をさせていただきました。

城之内:この新専攻のお誘いを受けた時『ようやくきたな!』と思いました。わたしが短大でコンポージングアーティスト専攻を立ち上げた頃、音大はもっと開かれてもいいという気持ちがあったのです。それがひいては文化的な枠組みでいろいろな音楽が捉えられるような、いわゆる総合芸術みたいな形を考えていました。

音大を出てピアニストにならなくても、たとえば舞台監督になるとか音響の人になるとかそういった道があってもいいんじゃないかなとも思っていました。でも、そういうのを形にするには、ちゃんとした育成システム、世の中の許容みたいなものだとかが問われてくるので、そこを高橋先生のような方がいてくれたおかげで実現できたのかなと感じています。

高橋:エンターテインメントはいろいろな要素が入っていますから、そういう要素が総合的にわかる、また、技術的にもある程度理解できて音楽的な知識を持っていたら、プロデュースとかディレクションをシステマチックに有用性を持って構築することができるんじゃないかと。いままでは横断的にエンターテインメントを学ぶ専攻はなかったんです。エンターテインメントといえばイコール芸能界だけではなく、この専攻ではクラシック的要素、文化的要素それから経済、社会的な要素もエンターテインメントとして捉えられる人間を4年間の中で実践的に育てていきます。これはかなり新しい試みではないかと自負しています。

音楽と文化、政経、サブカルチャーなど
さまざまな要素をつなぎ合わせる

講師が音楽業界だけでなく、異分野の方もいるが人選の理由は?

城之内:私は音大出身ではありますがポップスやドラマの音楽、エンターテインメントもたくさん手がけてきました。たとえばドラマの音楽を作るには脚本を読む力が必要とされますし、文学も勉強しなくてはならないんです。さらには監督やプロデューサーとの打ち合わせなどで学ぶことはさまざまです。劇伴を依頼されて『自分は音楽しかわかりません』と答えたら、この人間に本当に音楽を任せていいのか、ということになりかねません。だからこそ、この新専攻が必要。講師の先生方は、その道の一流の人たちで、酸いも甘いもわかり、どんな事柄にも、瞬時に経験則に基づいて説明できる先生方ばかりです。

たとえば中田宏・元横浜市長を講師に招いているのは、市政というのはプロデュース的要素が強いということを知ってもらうためです。中田氏のスキルと目線で話してもらった時、学生たちが自分の中でピーンと何かを感じてヒントを得てほしいと思っています。もしかしたら自分の考えていることは荒唐無稽かもしれないけど、これとこれを結び合わせればうまく形にできるんじゃないかという発想のきっかけにしてほしいです。

高橋:いま城之内先生がおっしゃったように社会的、文化的なことをきちんと受容して、その中でさまざまな経験則の実感を植えつけられていけば、自分のキャリアとしての方向性が見えてくるだろうし、大学の中でそれが体験できるというのは学生たちにとっては非常に大きな力になると思います。いままで音大ではそういう教育をしてこなかったんですね。主に音楽の技術、あるいは知識を伝達するだけでした。学生たちが生きていくためにはどういうものが必要なのかを実際に見せて、経験させて、自分にとって何が必要なのかということを勉強させることが大事だと考えています。きちんとしたPDCAサイクルを学生たちには植えつけて、なるべく多くの世界を見せ、さまざまな経験をさせてあげたいと思います。そして最終的に自分のポイントになるキャリアに結びつける。

本専攻には非常に幅広い到達点があります。アニソンの歌手になる学生もいるかもしれませんし、舞台俳優が出るかもしれないですね。

城之内:高橋先生はサブカルもちゃんと理解されているわけです。そういう人が教えてくれないとこの専攻の意味がないんです。何かの延長であることよりも、何かの延長だけど、その発する方向性というか、ベクトルが同じような人たちに講師になっていただきました。

進路があやふやであっても構わない。
万全のサポート体制で教育に臨む

最後にメッセージを

高橋:本学は音楽大学なので音楽的な基礎力はちゃんと身につけさせます。尚且つ社会人として立っていける社会人基礎力も身につけることができます。音楽を中心としながら広い視野に立って自分の可能性を具体的な職業やキャリアに結びつけることのできる専攻なので、自分の可能性を信じていらっしゃる学生さんには本学の新専攻に来ていただいて、その可能性を試してもらいたい。我々も思いっきりサポートしますし、具体的な制度を持っていますので是非とも本学へ来てください。

城之内:どうやって社会に貢献していきたいか、生きていきたいかというところが、薄ぼんやりと見えていても実現のためにはどうしたらいいのかという問題がありますよね。ピンポイントで何かになりたいというのであれば、その道筋はきっとあるでしょう。ですけれど、まだどうしようかな、どうやって社会に出ていけばいいんだろうって考えているのであれば、本学の新専攻に来ていただいて、こんな道があるんだなとか、こんな世界があったんだなというところを見てほしいです。本学は音大ですから様式美も含めて過去を検証して教えてくださる先生がいっぱいいます。さらにエンターテインメントの先生たちは未来を示してくれるので、過去から未来を総合的に学べると思います。進路があやふやな方こそ受験する価値はあると思います。

城之内ミサ(特任教授)
国連機関ユネスコ パリ本部任命ユネスコ平和芸術家・音楽家

東邦音楽大学附属中学〜高等学校(ピアノ科)を経て東邦音楽短期大学音楽科作曲楽理専攻を卒業。在学中よりプロとして映像音楽作曲を手がける。1988年より国立パリ・オペラ座、パリ管弦楽団と共演のオリジナルアルバムを発表。また自ら主宰する「世界遺産トーチランコンサート」はNY・カーネギーホールを始め五大陸で実施。これらの国際的活躍を評価され、2006年8月に国連機関ユネスコ本部より作曲部門では日本人初となるユネスコ平和芸術家に任命される。

高橋幸雄(学生部長/特任教授)

学習院大学文学部ドイツ文学科卒業、同大学院人文科学研究科ドイツ文学専攻修了。ボッパルト・ミュンヘン大学にてドイツ近代詩、世紀末文学の研究に従事。主な論文は「世紀転換期を生きたリルケ」、「空虚なる自律性」、「マルテの手記論」等。日本独文学会会員、ドイツ語教育部会会員。