【グローバル・国際系大学特集】世界100以上の地域と言語教育の集結地 〜東京外国語大学〜|大学Times

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大学Times Vol.29(2018年7月発行)

【グローバル・国際系大学特集】世界100以上の地域と言語教育の集結地 〜東京外国語大学〜

日本のグローバル教育を牽引する東京外国語大学に、2019年4月新しい学部が開設される。「国際日本学部」(仮称・認可申請中)とはどのような特色があるのだろうか。学部カリキュラムのコーディネートを担当するフィリップ・シートン教授と、既存の言語文化学部・根岸雅史教授、国際社会学部・篠原琢教授に各学部のめざすグローバル教育について伺った。

「知識の差」と「ことばの差」を学生・留学生が助け合いながら学ぶ
新しい日本学

フィリップ・シートン 教授

初来日から24年、これまで地方の中学生やエンジニアをめざす大学生などに英語を、2012年からは現代日本学を教えています。多くの学生をみて感じたことですが、日本人学生の英語力は、決して劣っているとは思いません。留学生に比べたら、書く能力がそんなに変わらない場合もありますが、「話すのが苦手」という傾向があり、それは「間違いを恐れている」からだと推察しています。

新しい「国際日本学部」の大きな特徴は、地域研究のひとつとして日本のことを深く知り、英語と日本語による授業を行う点にあります。日本人の学生と留学生が、同じ教室で授業を受ける形式です。英語で授業、といっても恐れることはありません。多くの日本の高校生にとって学ぶ内容はすでに、一度は見聞きした事柄が多いからです。母語でないことばを理解するときは、耳にした内容自体を「知っているかどうか」でその理解度は大きく変わります。今は英語が得意でなくても、授業の予習を行うことで「日本の何について英語で話しているか」を理解して授業に臨めば良いのです。こうして次第に英語のヒアリング力もアップしていくでしょう。日本の学生と留学生が、お互いの不得意を補い助け合って学ぶことを想定しています。

今は日本に対して、あこがれを持つ外国人が増えています。彼らはSNSやYouTubeなどで独自に調べて知識を得ていますが、その知識を活用することが大事です。これからの日本は多様性を受け入れ、相互理解がますます必要となるからです。留学生は日本に住んで経験を重ね、先入観を捨てて哲学を構築する、そのために日本について大学で教える意味があると考えます。

大学4年間の勉強は、自分にとっておもしろいことを学ぶのが良いと思います。本学部は世界の中の地域研究としての日本を学びますので、これまで考えたこともないことを教わる場にもなるでしょう。その中から、自分のアイデアを作り上げてください。

世界中の文化を肌で感じ リスペクトして言語を学ぶ

根岸 雅史 教授

本当の国際人とは、他地域の文化に関心を寄せて理解する人のことだと思います。単に言語能力が高ければ、相互理解が深まるというわけではありません。各地域文化へのリスペクトが、マインドとして不可欠ではないでしょうか。

本学は英語圏のみならず、100以上の国や地域から留学生が学びに来ているのも大きな特徴です。学生は単にことばや言語を身に付けるだけでなく、その過程での多くの人との関わりや、いろいろな体験を通じて能力やスキルを磨いていきますので、多くの留学生との日常の交流は、世界の各地域に関心を寄せるきっかけとなるでしょう。

日本語の世界、英語の世界とは全く違った地域のことばを学ぶことで、これまで持っていた価値観が揺さぶられます。たとえば「物の値段を聞く」ことはアジア圏では容易ではなく、交渉から始まって最終的に支払い額が成立します。ヨーロッパや日本では定価設定が当たり前ですが、価値観の違いに触れて見直すきっかけにもなるのです。さまざまな文化を持った学生がキャンパスにいますので、実体験として刺激を受けます。本学はステレオタイプの価値観に左右されることなく、文化の異なる学生たちがお互いを受け入れて、居心地の良いキャンパスです。今は、世界中の人と英語で話せればいいということではなく、その国に行ったらその言語を学ぶ姿勢やメンタリティが重要で、文化へのリスペクトでもあるのです。

入学後に未知の学問や言語と出会える

本学部では入学時に専攻語を選びますが、2年の後半には言語を使って学ぶ学問分野を選びます。
3.4年次の学びは範囲が広いので、自由度があります。また「ベトナムにおける英語教育の研究」「イランの英語教科書の研究」などひとつの言語の範囲から超越した学びができるのも、本学の特徴のひとつでもあります。高校生にとっては「こんな学問もあるのか」といった驚きと、新たな分野の出会いがあるかもしれません。

英語以外は、入学してゼロからスタートします。各教室では学生たちが声を出して学び、一体感が感じられます。始めから、誰かが突出してできるというようなことはありませんので、その国や文化に興味があれば、とことんその言語や地域をつきつめるのもいいでしょう。卒業後は多様な進路も選べますので、言語の好きな高校生はぜひ本学部をめざしてください。

日本・英語圏・他言語圏の三点観測から世界を立体的に捉える

篠原 琢 教授

20年前と比較して世界をつなげる言語として、英語が使われる範囲は広がっています。だからといって、英語を使う人々の価値観が皆同じになっているわけではありません。交流が深まるほど、各地域の“差”に対しては敏感になっていくのです。日本の外に異なる価値観を持った人々がいて、私たちは、日常生活でもその人たちと思いがけないところで繋がっています。グローバルの学びでは、異なる価値観に敏感に反応するための感受性やセンスを磨くことが重要です。

本学部では、学生の話す日本語とグローバル言語の英語に加え、専門とする地域言語を修得することで、グローバル社会に対する感受性を磨く基礎を学びます。自分のいる場所と、「グローバル」な場との二点では、距離感がわかりません。ある地域の言語と文化を深く学び、三点目を置くことによって、世界は立体的に見えるのです。それは、日本という場所をよりよく理解することにもつながるでしょう。こうして三点観測の方法を身につければ、将来、大学で専門に学んだ地域とは別の地域と関わることになっても、その地域の人々の価値観や行動規範に対して、より容易に接近し、理解することができます。そのように活躍する卒業生は少なくありません。

海外留学でたくましく成長

本学学生は留学経験者が多いのも特徴です。講義で学んだことを身近に感じるようになり、実際目で見てみたいという思いや、留学した先輩達や世界各地から来ている留学生に刺激を受けて留学を希望します。各国の行動様式を予め学びますので、過度に怖がる必要もありません。帰国後は自ら進んで課題をみつけ、解決のために行動するようになり、考え方が柔軟になるなどたくましく成長します。日本にじっとしていても、いずれ諸外国が押し寄せてくるのがグローバル化です。一度は外から日本を見てみることも良い経験ではないでしょうか。

異なる社会を学ぶためには、ある専門的な学問の方法を身につけなければなりません。本学部では、歴史学、政治学、経済学、社会学など、さまざまな学問分野が、「地域社会研究」、「現代世界論」、「国際関係論」という三つのコースで学べ、みなさんの興味・関心にしたがって、ある地域に接近するための専門知を習得できます。

英語が得意でなくても構いません。他者との違いを理解し関心を寄せるセンスを磨くためにも広く、柔軟な関心を持ち、挑戦心を持つ高校生に本学部をめざしてもらいたいです。