【美大特集】多摩美術大学|大学Times

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大学Times Vol.29(2018年7月発行)

【美大特集】多摩美術大学 2018年4月、新カリキュラムへ移行、2019年度、新たな感覚を見極める入試を導入

絵画学科版画専攻は、2018年4月から版画の領域を拡大した新カリキュラムへと移行した。2019年度からは写真を構成・編集できる才能を見究める「コラージュ」の課題、一般入試の選択肢に「色彩表現」を加え、学科のコンセプトと方向性をさらに明確化させていく。版画を起点に写真家として活躍を続ける、大島教授に今後の展望を尋ねた。

Q:新カリキュラムの特徴をお聞かせください

大島成己教授

従来の美術の研究というのは自己の表現だけに特化されがちですが、新たにデザインの技法も学ぶことができるのが新カリキュラムの大きな特徴です。そして版画を広義に捉え、写真やデジタルプリントの研究も新しい特徴として加わってきます。

これまでは銅版画、木版画、リトグラフなどの伝統的な研究を専門的に深める方向でしたが、版画は歴史的にデザインとの関わりがあり、その関わりにおいて版画の研究領域を拡げていこうとしています。一方で今日のデジタル時代を受け、写真やデジタルとの関係において版画を捉えなおし、この現代的な方向にも版画の新しい可能性を見出そうとしています。これらが新カリキュラムの方向性となります。

版画でのデザインの学びは、まずは芸術表現として自分の世界を深めて、それをデザインヘと展開をしていく流れです。グラフィックアート、イラストレーション、ブックアートの授業を通じて版画のデザイン的展開を追求していきます。ここでのブックアートの授業は、装禎だけでなく、作品表現としての本を考える内容です。絵本や写真集のように、自分の表現を本へと展開し、製本まで行います。

写真の学びについて述べると、たとえば、アンディー・ウォーホールが写真で版画制作をしていたように、写真製版版画としての流れが歴史的にあり、それを展開させた方向となります。つまりここの写真の学びは、コマーシャルフォトの方向ではなく、絵画、版画、写真の関係を踏まえた、美術における写真表現を追求していくことになります。

Q:2019年度入試の主な変更点は?

多摩美術大学

写真表現には、絵画表現とは異なる感覚が求められます。従って、入試で写真映像に対する感覚が豊かな人を求めたいので、2019年度の推薦入試から「コラージュ[写真]」を選択できるように加えました。

一般入試は、これまで「デッサン」のみでしたが、 「色彩表現」が選択肢に加わります。デザイン学科の色彩構成に近い課題で、色彩感覚や、色彩構成力などを積極的に評価をしていきたいということで入試に加えます。

つまり、この新たな入試科目で写真映像に対する感覚や、色彩感覚に冴えた人たちを集めたいということです。これまでのデッサンを中心とした描画力だけでなく、別の優れた感覚を持っている人たちも受け入れることで、版画専攻を多種多様な学生も学ぶ場にしたいと思っています。

Q:新カリキュラムと入試の変更によって期待さ れることは?

デザイン志望の高校生たちの一部はアートにも興味を持っているのではと考えています。その逆もしかりです。だからこそアートとデザインを分けるのではなく、その両方を横断的に教えていきたい。デザインのクリエイティブな面とアートを突き合わせると、新しい物が生まれてくるのではないかと期待しています。

私たちは、アーティストだけではなくて、社会のいろいろなところにアートを繋げていける人を輩出していきたいと考えています。

【美大特集】多摩美術大学 メディアを扱うセンスをタブレット端末で
評価する画期的試み

最先端のメディアを駆使して人々に感動と驚きを与えるメディアアート。プロジェクションマッピング、ドローンアートがこの世界においてはメジャーな存在であり、社会現象といってもいいであろう。こうしたエンターテインメントにたずさわるアーティストを世に送り出すため、コースではタブレット端末を“新しい鉛筆”と捉え、他に類を見ないタブレット入試を実施した。

Q:メディア芸術コースの目標とする人材像、学びの要点をお話しください

多摩美術大学

美大出身のクリエイターというのは、時代を先取りしていく仕事です。後から追いかけて行くのはユーザーであって、それよりも時代を先取りする人たちをつくり出していかなければいけないと考えています。時代が動くから新しい分野が生まれるわけです。

私たちの学科は、そういうスタンスで伝統ある多摩美の中で生まれて、かれこれ20年が経ちます。時代の変化でいちばん分かりやすいのが、インターネット。これが普及したからウェブデザインという仕事が登場した。それまではそんな業種はなかったわけです。現在でいうと象徴的なのがスマホの普及。この10年ぐらいの間に、もう普及し尽くした感があります。小学生まで持っていて、当たり前のように使いこなしているわけです。でも、それはユーザーとして使いこなすということであって、そこにコンテンツを提供したり、新しい使い方を提供することこそ、美大出身のクリエイターがすべき仕事なんです。それを志望する学生のスキル的な下支えは既に世の中に出来上がりつつあります。メディア芸術コースはそのようなスキルを活かしたいという人たちの受け皿になると思います。

新しい分野を創造するということは、どういうことなのか、それは未来を予測しないといけない。未来予測をしながら学ぶ。私たちは未来のことは教えられないので、いっしょに想像しないといけない。そのためのスキルというか、方法論を身に付けるのがメディア芸術コースなのです。

Q:タブレット端末を活用した入試とは?

多摩美術大学

私たちはかねてより絵筆に代わる新しい道具としてタブレット端末に注目しており、2018年度入試から推薦枠入試で実験的にタブレット入試を始めました。おそらく世界初の試みではないかと思います。モチーフを与え、タブレット端末のカメラで撮影したものをアプリを使って作品化します。タブレット端末を活用した入試というのは新しい試みですけども、決して流行を取り入れたというわけではありません。これから活躍できる人を見抜くため、評価するツールとして入試の中で十分活用できるのではないかという手応えを感じています。

2018年度の入試ではモチーフを豆腐にしました。デッサンの課題であれば、手を触れないで、そのままの姿を描きますが、この入試では好きに扱ってくれていいよ、崩してもいいよ、放り投げてもいいよ、と。これは従来のモチーフでは、表れてはこないものです。受験生のひとりが、豆腐の崩れる様子を動画で撮って、その中から丁度良い一枚を選んでいるんですね。これがメディアを使いこなす感覚なんです。私たちが教えたわけじゃありません。この道具を制限なくどう活用してもいいってことです。従来の画材で、その道具を100%引き出しなさいってことと同じ。タブレット端末の機能を100%以上引き出せるような、メディアのセンスを持った人たちが、それを発展させたいと考えるならば、ぜひ受験してください。ここで学んで新しい分野を切り拓いて活躍できる人になってほしいです。