【美大特集】東京造形大学|大学Times

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大学Times Vol.29(2018年7月発行)

【美大特集】東京造形大学 「自由闊達で愉快な大学」が仕掛ける「埋蔵資源の見える化」の実際

一般企業での経験を活かし、「やりがい、働きがいのある職場づくり」、「埋蔵資源の発掘」、「見える化」の3大方針を掲げ、自由闊達にして愉快な空間づくりに力を発揮する東京造形大学 山際康之学長。本年2月・話題をさらった「山手線グラフィック展」を展開し、広く一般を巻き込んだ形で同大の知名度を一気に上昇させた。マネジメント手腕に注目が集まる山際学長に話を伺った。

山際 康之 学長

自由闊達にして愉快な企業の勤務経験がベース

東京造形大学

私は家電メーカーで、ウォークマン、パソコン、ロボットなどの開発をしてきました。職場は人々が躍動し、自由闊達にして愉快な空間でした。12年前に本学に初めて赴任した時、前職と雰囲気が似ているのを感じました。

大学とは、間違いなく「学生のため」にあるものです。2017年に学長に就任した際、今まで培った経験を駆使して「自由闊達で愉快な大学を築きあげ、社会をデザインする価値を創造する」という基本方針を打ち出しました。

現場を活性化させる3つの方針

東京造形大学

実際にはまず3つの方針を立てました。1つ目は、「やりがい、働きがいのある職場づくり」です。学生を笑顔にするためには、まず教職員が笑顔にならなくてはいけません。教員が日々の業務に忙殺され、活力が失われることがないよう、会議や書類作成を軽減し、「教える仕事」に集中できるようにしました。美大の教科書とは、教員の研究や学内外での創作活動から得られる経験そのものです。そうした活動に積極的に取り組み、それを学びに還元するよう努力してもらっています。

2つ目は「埋蔵資源の発掘」です。学内では創立以来52年間にわたり多くの作品が創作されてきました。これらはすべて貴重な資源ですが、すべてが世に出ているわけではありません。もっと自分たちの足元を見据えて、本学の資源を「良いものは良い」と自分たちで発信していくことを決めました。

そして3つ目が「見える化」です。大学の資源を学外に積極的に発信していこうという考えのもと、10の専攻領域からアイデアを出してもらいました。教員が話し合って最終的に出てきたのが11個のアイデアで、そのうちの1つが「山手線グラフィック展」です。

「見える化」の取り組み、「山手線グラフィック展」が注目を集める

本年2月、「山手線が“走るアートミュージアム”に!」をキャッチフレーズに、“TOKYO”をテーマとした「山手線グラフィック展」を13日間にわたりJR山手線内で開催しました。学生たちの300点に及ぶ個性あふれるグラフィック作品が山手線の車両内を彩りました。

このプロジェクトは、造形学部デザイン学科グラフィックデザイン専攻領域の学生による作品展でした。デザインは本来、美術館やギャラリーのように限られた空間だけで観賞されるべきものではありません。デザインは社会を形成する大切な要素であり、人々の日常に溶け込んでこそ真価を発揮するものと考えておりますので、東京の中心を走る山手線という空間は非常にマッチしたステージとなりました。

広く一般の方にも見ていただくという企画でしたが、もちろんJR側も初めての試みでしたので、企画のすり合わせから交渉、事務作業にいたるまですべて教員がやり、全員がチーム一丸となって成功させました。おかげさまで新聞、雑誌やネットニュース等100程のメディアに取り上げてもらい、シンボリックな形で評価をいただきました。何名かの卒業生から「たまたま乗った山手線で見ました」と連絡も来ました。インパクトと反響はかなり大きかったようです。何よりも本学をご存知でない一般の方々や、卒業生に今の東京造形大学の学びや取り組みを知っていただけたことは非常に大きかったと思います。

専門性の追求が、多様性につながる

美大の学生は、アイデアを自分で企画し、デザインし、制作する。そして最終的にそれを誰かに見てもらうということを学び訓練しています。実はこのプロセスはどんなビジネスに携わる上でも応用することができます。一般大学が要素技術を教えるのに対し、一連の流れを教えていくのが美大の大きな特徴です。美大での学びを活かせば、どこの業界でもどんな仕事でも順応できます。社会が求めている人材は美術の能力だけではなく、コミュニケーション能力でしたり、企画のすり合わせをする際の俊敏な対応力などいろいろな要素です。本学の入試も従来の実技試験だけではなくて、指定校推薦やAO(自己アピール)入試など多様な受け入れ体制が整っています。多様なタイプの学生が入学されることを期待しています。

大切なことは、卒業の時点でどれだけ満足度が高いのかということだと思います。「入口の満足度ではなく、出口の満足度」。卒業の時に、お互い「ありがとうございました」と言える、そんな大学を目指しています。