静岡産業大学副学長インタビュー|大学Times

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大学Times Vol.29(2018年7月発行)

【静岡産業大学副学長インタビュー】学内スポーツのガバナンスを強化し、大学、地域のスポーツ活動全てを有機的につなぐ

静岡産業大学

大学のみならず日本の学校において、スポーツ部活動の意義は練習と勝利、修養やしつけと永らくされてきた。だが今、その在り様にはたして偏重や停滞はなかったか、疑問が持たれている。2020年4月のスポーツ人間科学部(仮称)設立に先立ち、今年静岡産業大学に誕生した「スポーツ振興部」では、本来スポーツが持つ楽しさや豊かさを取り戻すために学内のスポーツ組織を統括・運営し、スポーツによる地域の活性化もめざすという。振興部の部長を務める小澤治夫副学長に、その理念や役割について話を伺った。

最強のクラブではなく、
最高のクラブを作るために

スポーツ振興部というと、スポーツの強化部みたいなイメージをされるかとも思うんですが、私たちの言葉で言うなら「最強のクラブではなく、最高のクラブを作る」ための支援活動をしていく組織なんです。たとえスポーツ大会などで成績が振るわなくとも、「スポーツのおかげで最高の大学四年間を過ごせた」と学生が言えるような。

いまの日本の大学では、スポーツ系のクラブ活動はやらないという学生も多いんです。入部のための選抜があったり、入部できてもレギュラーに落ちて試合に出られなかったり、過酷な練習についていけなかったりなど、「スポーツは大好きなのに、スポーツをやらされている」と感じている人が多い。大学スポーツのそんな現状を改めたい。そのためにはスポーツをきちんと統括する存在が必要だ。私は昔からそう考えていました。

今回、本学が新しくスポーツ人間科学部(仮称)を設立するための構想ができて、ずっとやりたかったことを実行するチャンスが来たと思いました。その後、本学のサッカー部で初代監督を務められた三浦哲治氏(スポーツ・アドミニストレーター)といろいろ話し合った結果、スポーツ振興部を作って学内のスポーツ系クラブのガバナンス(統治体制)を強化し、バラバラだった大学のスポーツ活動、地域のスポーツ活動、それら全てを有機的につないでいこうという方針ができました。

静岡産業大学

学部・大学院・研究センターの連携が
カレッジスポーツのあるべき姿

静岡産業大学

スポーツ振興部が直接連携する主な組織は、自然科学・人文社会科学の両面からスポーツの特性や本質を研究し発信する「スポーツ教育研究センター」、幅広い世代を対象とした総合型スポーツクラブ「いわた総合スポーツクラブ」、そしてスポーツ医科学について基幹的な役割を担う「スポーツ医科学研究センター」の3つです。

医学部のある大学には、学んだ医療技術や知識を実践・研究する場として附属病院があります。教育系の大学では附属の小中学校で教育実習ができます。それらと同様に、今回開設される「スポーツ医科学研究センター」は、スポーツ人間科学部で学んだスポーツ医科学について、さまざまな実習や臨床、そして研究を行うための場なんです。

ただスポーツクラブが強くなることを目指すのではなく、スポーツ医科学を学べる学部があり、その教育をさらに深められる大学院と、研究・実習の経験を積める研究組織があり、その3つすべてが連携している。これが「カレッジスポーツ」のあるべき姿だと私は考えます。そして、その連携のカギとなる役割を持つのがスポーツ振興部です。

指導者不足に悩む学校に学生を派遣
静岡県版、東海地方版NCAAを作りたい

静岡産業大学

スポーツ振興部は「いわた総合スポーツクラブ」と連携していますが、さらにそこから磐田市や静岡県といった、地域全体との連携を進めています。現在、学校の部活動での指導者が減少していますが、静岡産業大学ではそうしたところに、スポーツスキルや指導方法を学んだ学生を講師などで派遣し、効率的なコーチングをするなど、静岡県と連携した「いわたスポーツ部活」を展開しています。

また、今後ますます高齢化が進む日本の自治体は、健康促進のためにもスポーツ振興に目を向けていく必要があると思います。そのために我々の持つスポーツの人的財産を活かし、大学のみならずまずは地元の磐田市を豊かに発展させていければなと思っています。ゆくゆくは、いまスポーツ庁が日本版NCAA※の設立構想を推し進めていますが、本学もこれの静岡県版か、東海地方版のNCAAというべき組織を作っていければと思います。

※NCAA=全米大学体育協会。アメリカの大学におけるスポーツ関連分野を統括する組織。

広めたいのは勝利至上主義ではないスポーツの価値

スポーツをする人にとって、勝利を目指すことは大前提。誰も最初から負けることなんて考えていない。ですが勝利至上主義に偏重するあまり、今の大学スポーツは決して良い姿であるとは言えなくなっています。これからはそんな一元的な価値観にとらわれないスポーツの価値を広めていって、みんなが本当に豊かになる。その延長上に勝利がある。それが「最高」であり「最強」であるということだと思いますし、私たちの掲げる理念でもあります。

イギリスには、「サッカーは子供を大人に、大人を紳士にする」という格言があります。これはほかのスポーツ全てに置き換えられる言葉であり、スポーツは運動能力を高めるだけでなく、その人自身の価値を高め、成長を促します。私はその理念をスポーツ振興部で強く発信していきたいと思っています。そのためにも今後セミナーや講座を繰り返し開催し、研究も積み重ねていきたいと思います。