【栄養学特集】食を通じて人々を健康へと導く栄養学。医療・災害対策・産学官連携と職域広がる|大学Times

  1. 大学Times
  2. 特集記事一覧
  3. 【栄養学特集】食を通じて人々を健康へと導く栄養学。医療・災害対策・産学官連携と職域広がる

大学Times Vol.30(2018年10月発行)

【栄養学特集】食を通じて人々を健康へと導く栄養学。医療・災害対策・産学官連携と職域広がる

日本は世界の中でも、予防医学としての“食”にいち早く着目し、そのための栄養知識が人々に普及した国のひとつである。女性の就業率が年々増加する今日、栄養士・管理栄養士をはじめとした食と栄養の専門職は、長年女性が中心となって職責を担ってきた。「健康で長生き」が多くの国民の願いでもあり、栄養学を修めた人材はますます活躍の場が拡大している。

日本の「健康ブーム」を支える管理栄養士

テレビの情報番組では、ほぼ毎日のように「健康と栄養」について広く特集が組まれている。この傾向は20年ほど前から盛んになったといわれ、現在も色褪せることなく続いている。これは単に“健康ブーム”という一過性のものではなく、国民の生活に栄養学が広く浸透した証ではないだろうか。各局の番組にも、食と栄養についての解説を医師等とともに行っているのが、管理栄養士である。

チーム医療の一員や市民への栄養指導の機会が増える

18歳人口が減少する中、管理栄養士をめざす学科は、各地の大学で次々新設されている。特徴としては、これまでの栄養学=家政系の学問系統から、医療系学部の一学科として設置されている点だ。チーム医療の一員として、食と栄養の果たす役割がますます大きくなっていることが伺える。病院はもとより、近年は調剤薬局での栄養指導という機会も増え、さらにコンビニエンスストアへ常駐するなど、活躍の場が広がりをみせている。

災害対策に栄養学の知識を活かす

昨今は日本の各地で自然災害が発生し、避難を余儀なくされるケースが後を絶たない。災害発生直後は「自分の身は自分で守る」ことが不可欠であるが、特に救援物資が到着するまでの一次避難では、食と栄養の知識が役立つと今、注目されている。備蓄食など日頃の備えに対し、栄養面からの提案・サポートは今後ますます必要とされるだろう。

産学官・地域間の連携も各地で進む

超高齢社会が加速する中、医療費抑制など財政面の課題が指摘されて久しい。食と健康が広く国民の関心事となり「健康寿命をいかに伸ばすか」といった命題を、全国の自治体も地元大学や企業等と積極的に取り組んでいる。食品の安心・安全への関心も高く、食品を取り扱う企業は利益優先ではなく、国民が安心できる食材や調理法を提案、供給することが消費者への信頼となり、ブランド力を上げる相乗効果となっている。産学官連携はますます拡大しているが、その中でも「栄養学」が、人々の生活に寄り添い、健康へと導いている。

以下、現在大学で取り組んでいる産学官連携の一例を紹介する。

健康栄養センターを開設、産学官連携で栄養相談など実施
【大阪樟蔭女子大学大学院】

2018年4月、人間科学研究科人間栄養学専攻に附属する「くすのき健康栄養センター」を開設した。栄養の専門家の教育・育成に関するアカデミックなスキルを一般に提供し、地域医療や自治体と連携した栄養相談などを行う。大学附属機関としては大阪府では初めての取り組みとなる。センターでは、フレッシュママ、親子、一人暮らし、高齢者(その家族、介護者)など、参加者のライフステージ別に「家庭でも手軽に作れる」をコンセプトとした料理教室を開講。「健康栄養フェア」では学生と地域住民との交流の場を創出する。また健康機器を使ったヘルスチェックや食べ方セミナー、栄養相談などを通じて、健康に関する食の情報を正しく発信し、安心な食生活を提案する。6月1日には、より地域住民により添いながら支援することを目的に、学外(東大阪市長栄寺)にセンターを移転。栄養の力で地域住民の健康寿命延伸に寄与し、大阪樟蔭女子大学の学生及び卒業生の専門スキルを高めることを目指す。

農林水産省×鹿児島大学×日本マクドナルドなど
食品安全の専門家を育成
【鹿児島大学】

鹿児島大学、農林水産省、日本マクドナルド株式会社、一般財団法人食品安全マネジメントは、「産学官連携による食品安全専門人材育成」を協働ですすめ、その一環として、鹿児島大学での食品安全管理の教育カリキュラムの開発に取り組むことを発表した。

食品業界では、世界的に食品安全の規制強化と民間規格による食品安全管理の標準化が進んでおり、10〜20年前に比べ、事業者における食品安全管理に必要な知識が増加。今後の食品産業発展のためには、食品安全に関して産業界で必要とされる基礎的な知識を有する人材、安全管理についての国際的な議論に参画できる人材の確保が大きな課題となっている。プログラムの一部では、日本マクドナルドによる講義を行うとともに、将来に向け、食品安全マネジメント規格の監査員研修コースを組み込み、受講者にはその修了書を交付する。農林水産省は、行政関連情報、食品安全に関する世界の情勢、規格・認証等に関する情報の提供、講師の紹介などで協力する。

都庁で「食生活改善普及」レシピ公開
【昭和女子大学】

昭和女子大学の「輝け☆健康『美』プロジェクト」は、東京都食生活改善普及運動の一環としてオリジナルレシピを提案。「野菜たっぷりバランスランチ」は、2018年9月8日から13日まで、都庁第一本庁舎1階アートワーク台座で写真展示された。また、東京都保健福祉局のホームページでも、同大学が提案したレシピ「ゆで豚と彩野菜の元気もりもりランチ」を閲覧できる。

「輝け☆健康『美』プロジェクト」とは、各学科で学んだ知識を生かし、食事や運動を通して身体の中から健康で美しくなることを目指すプロジェクトのことで、生活科学部健康デザイン学科・管理栄養学科・食安全マネジメント学科の有志学生が集まり、チームに分かれて活動している。今回は「メニュー提案」チームの活動。ほかにも企業協働プロジェクトなど、学外で様々な取り組みを行っている。