【専門職大学/専門職短期大学特集】どうなる専門職大学〜初年度の認可審査結果と次年度の展望|大学Times

  1. 大学Times
  2. 特集記事一覧
  3. 【専門職大学/専門職短期大学特集】どうなる専門職大学〜初年度の認可審査結果と次年度の展望

大学Times Vol.31(2019年1月発行)

【専門職大学/専門職短期大学特集】どうなる専門職大学〜初年度の認可審査結果と次年度の展望

2019年4月、いよいよ55年ぶりの新学校種・専門職大学/専門職短期大学が誕生する。しかし、初年度は申請した学校法人のうち8割以上が取り下げという事態になり、初年度開学は大学2校、短期大学1校となった。取り下げの要因は何だったのか、そして2020年以降の開学はどうなるのか、大学設置・学校法人審議会の答申を元に分析した。

17校のうち認可は3校のみ、14校が申請を取り下げ

専門職大学制度創設後最初の審査は、専門職大学13校、専門職短期大学3校、既存大学の専門職学科1校の17校について行われたが、大学設置・学校法人審議会(以下「設置審」という。)が認可するべきと答申したのはわずか3校であり、14校が申請を取り下げるという極めて厳しい結果となった。一般の大学における新学部等の審査では、申請案件の9割程度が認可されていることから、今回の専門職大学の審査結果は特異な結果と言えよう。では、なぜこのような結果となったのか。今回の専門職大学に対する設置審の指摘事項を概観しながら、14校が申請を取り下げるに至った要因を見ていきたい。

審査結果の概要

<設置審分科会長の異例のコメント>

答申に際して、設置審の吉岡大学設置分科会長から「専門職大学等の審査結果について」と題する異例のコメントが発表された。その内容は「専門職大学の特色である企業実習に関する事項や実務家教員に関する事項、施設・設備等の整備に関する事項等に課題が見られ、多くの申請案件が総じて準備不足で法人として大学設置に取り組む体制が不十分と感じられた」というものであった。それでは、具体的にどのような点が審査で課題とされたのか。主な課題点を整理すると、「設置の趣旨・必要性」「教育課程・実習計画」「教員組織」「施設・設備等」の4つに区分できる。

@ 設置の趣旨・必要性

審査で最初に問われたのは、専門職大学を設置する必要性である。大学、短期大学、専門学校などの既存の教育機関がある中で、なぜ専門職大学を新規に設置する必要があるのか、その妥当性が問われた。申請者は社会的な課題を述べた上で、その課題を解決できる人材を専門職大学で養成するとして必要性を述べたが、設置審からは、専門職大学で養成する必要性が必ずしも認められないとの指摘が相次いだ。

17校の学部学科を見ると、看護師や理学療法士など既存の大学や短期大学に既に設置されている学部学科が多かったが、既存の大学等との違いが不明確であるとして、専門職大学を設置する必要性に疑問符が付けられた。また、申請案件の多くは、同一法人が設置している専門学校の学科を専門職大学に移行する計画であったが、専門職大学となってどのような改善充実が図られるのか不明確との指摘も多く、専門職大学で人材養成を行う意義や目的が必ずしも認められないとされた。

こうした設置審の審査意見に対して、各申請者は説明を追加したり内容を変更するなど設置計画の補正を行ったが、補正した内容に対しても必要性の説明が不十分などの指摘を受けた案件は、申請を取り下げることになった。

A 教育課程・実習計画

大学入学者選抜改革特集

専門職大学の教育課程は4つの科目群(上記表参照)で構成することになっているが、各科目群の内容に対応した授業科目が適切に配置されていない、との指摘がほとんどの申請案件に付された。中でも、専門職大学の特色の一つである展開科目に関する審査意見が多かった。展開科目は、他分野の応用的な能力を身に付け、創造的な役割を果たすための能力を身に付ける科目群であるが、展開科目に配置した科目が相応しくないとの指摘や、当該専門職大学で身に付けさせる応用的・創造的な能力が不明瞭などの指摘である。展開科目に関する審査意見に対して適切に対応できなかったことが、申請取り下げの一因になった案件もあった。

また、専門職大学の最大の特色とも言える企業等での実習(臨地実務実習)についても多くの審査意見が付された。例えば、学生が企業等で行う実習の具体的内容が不明確、企業側の実習指導者の質が確保されていない、学生が別々の実習先に行く場合の実習先の同質性が確保されていない、遠方への実習における費用負担のあり方が不明確、などである。

設置審は、専門職大学の教育の肝とも言える臨地実務実習について慎重に審査している。事前に企業等と実習計画を十分に詰めることができなかった案件では、審査意見に対して十分な対応ができず、申請を取り下げる一因になった。

B 教員組織

既存の専門学校の教員を専門職大学の専任教員として申請した案件も多かったが、申請した職位(教授、准教授等)が認められずに職位が降格になったり、専任教員として十分な実績や業績が無いため専門職大学の専任教員としては不適格との審査結果も多かった。専門職大学の特色の一つである実務家教員に関しても、実務実績が不十分で不適格などの厳しい結果が少なくなかった。

また、主要な授業科目には教授又は准教授を配置することが設置基準に定められているが、教授や准教授で申請した教員が講師や助教に降格となった結果、主要な授業科目に新たに教授又は准教授を補充しなければならなくなった申請案件もあった。ほぼすべての案件が審査の過程で専任教員の補充を求められたと見られるが、補充が間に合わずに申請を取り下げた案件もあった。

専門学校のみを設置している学校法人では、大学教員に求められる教育研究業績のイメージが掴みにくかったのかもしれない。審査のハードルが想定以上に高かったと感じた法人も多いと思われる。

C 施設・設備等

専門職大学が整備すべき施設・設備等は設置基準に定められている。各申請者は設置基準を満たすだけの施設・設備等を整備して申請したが、設置基準はあくまでも最低基準であり、設置審は、当該専門職大学において計画された教育活動や研究活動が十分に実現できるだけの整備がなされているかを審査した。

その結果、教育活動のための施設や設備は十分であったとしても、研究用の実験室が無いなど研究活動の観点からは十分とは言えないとの指摘がなされた。また、教員研究室が個室ではなく複数の教員で使用する共同研究室にしていた案件では、教員数に対して面積が狭く、各教員の情報管理が適切に行えるだけの機密性が確保できるとは認められない、などと指摘された案件もあった。

図書館に関する審査意見では、狭隘であり教育研究が促進できる機能等が十分に備わっていないとの指摘や、専門分野の図書のみではなく、豊かな創造力を育成するために他領域の図書についても整備するよう指摘された案件も見られた。

施設や設備等の整備が不十分とされた案件では、審査の過程で施設の拡充や設備の充実のための追加投資が求められた案件もあったが、短期間に追加投資を行うことができず申請を取り下げた案件もあった。

専門職大学の展望

吉岡分科会長はコメントで「総じて準備不足」と述べたが、制度創設後最初の審査を振り返ると、専門職大学の審査は既存の大学等の審査よりもハードルが高いと思われる。専門職大学は大学制度の中に位置付けられる高等教育機関であり、学校教育法には「大学のうち実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とするものを専門職大学とする」と書かれている。専門職大学は一般の大学と同レベルの水準を満たすことは最低要件であり、その上で、さらに高度かつ実践的な職業教育を行う教育機関として適切な水準を満たしていることが求められている。専門職大学の制度化は、専修学校を学校教育法第1条に規定する「専修学校の1条校化」の動きから続く一連の流れと見る向きもあったが、そうではなく、まったく新しい高等教育機関として誕生したものと捉えるべきである。

2018年10月には、2回目の申請として、専門職大学15校、専門職短期大学5校が申請された。今回の申請でも医療系の人材養成を行う案件が多数を占めているが、ICTや農業、食、観光などの学部学科も見られる。既存の大学等と同系統の学部学科であるかどうかに関わらず、専門職大学としての社会的必要性が問われるとともに、既存の大学等と同等あるいはそれ以上の教育研究活動が実現可能なのかが問われることになる。また審査では、設置審から指摘される様々な要求に適切に対応できる組織力も問われることになる。2回目の審査も最初の審査と同様に厳しい審査が行われると思われるが、社会的に必要性が高く、高度で実践的な高等教育機関が一つでも多く誕生することを期待したい。

2020年度開学に向け認可を申請中の学校(PDF)

2020年度以降の設置を構想・検討中の学校(PDF)

【執筆者紹介】
山田 直彦
一般財団法人日本開発構想研究所 高等教育研究部 副主幹研究員

20年以上にわたり全国の大学改革に携わる。各大学の教育改革、学部学科の廃止・新設、中長期計画の策定、自己点検評価などの取組を支援しているほか、地方自治体による公立大学の設置にも数多く関わる。地域と大学の連携事業など、地域と大学の関係に関する調査などにも従事している。

●一般財団法人 日本開発構想研究所について

くにづくりから、まちづくり、ひとづくりまで、社会の形成に役立つ学際的な研究調査を進めるために、1972(昭和47)年に設立された研究機関。