【社会への扉】静岡産業大学|大学Times

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大学Times Vol.31(2019年1月発行)

【社会への扉】静岡産業大学

静岡産業大学

地域創生が叫ばれて久しい。大学進学や就職においても、東京の一極集中を食い止めるべく官民挙げての施策は各地で行われているが、首都圏の人口は依然として、若者を中心に増加の一途を辿っているのが現状だ。しかし、東京と名古屋の中間に位置しながらも、地元進学・地元就職で着実に実績をあげる静岡産業大学は、特徴あるキャリア教育で今、注目されている。池ヶ谷雅一キャリア支援課統括課長に話を伺った。

入学から卒業までキャリア教育と就職支援の両輪で
将来設計をサポート

本学では「就職をゴールとしない」、「社会に出てからも成長を続ける」人材の育成を目標に、学生のキャリア教育と就職支援を行なっています。1年次の目標設定から始めるキャリア教育と2年次のキャリア面談やインターンシップ支援、そして3年次からは就職支援の両輪が機能し、各学部の教員職とキャリア支援課が協力しながら多彩なプログラムを実践しています。

先般、経団連が就活解禁日の廃止の方針を打ち出し、就活生や大学現場が混乱というような報道が相次ぎましたが、このような制度変更があっても左右されることなく、学生一人ひとりが自分の将来設計に対してブレない軸を持つことが、何より大事であると考えるからです。

20代をどう生きるか
全員とのキャリア面談で意識を変える

まず1年次では就職に対する意識を理解するところからスタートしますが、入学間もない学生にキャリアデザインの重要性について話しても、実感がわかないのが現状です。そこで、2年次、3年次と繰り返し、就業意識を高めるための対話をする機会を設けています。特に、大学生活4年間のうち、比較的自由な時間を持てる2年次の過ごし方で学生は大きく変わると捉えています。そのため、ほとんどの学生が19歳から20歳となるこの時期に、本学では全員と時間をかけてキャリア面談を実施しています。「20代をどう生きるか」をテーマに、そのための通過点として「就職」をどう捉えているかを、丁寧にヒアリングします。その情報をもとに、3年次からの就職活動に向けて、「就職先は自分で決める」ためのヒントやきっかけづくりを考えサポートしています。

今の若者に欠けている、誰かに「相談する力」

学生面談を行うことで、学生たちに足りない力についても理解することができます。例えば、今の若者は生まれた時から、インターネットが当たり前の時代を過ごしているせいか、わからないことがあっても「人に聞く、尋ねる」という文化がありません。困ったら、何でもスマートフォンで調べて単独で解決しようとするので、まず一報を誰かに伝えることがなかなかできないのです。現在多くの企業では、社員に求める人物像として必ずと言っていいほど「コミュニケーション力」を挙げますが、新卒者に求めているコミュニケーション力とは「相談する力」ではないかと私は分析しています。若者の情報収集や情報発信のしかた、在り方がメディア等で取り上げられていますが、困ったときに声をあげて誰かに相談できれば、課題である新卒社員の早期離職も、ある程度防げるのではないでしょうか。相談する力は、「相談される力」も自然と育みます。これこそが、コミュニケーション力であると考えています。

経験が人を変え成長させる
行政・企業等と連携し経験値を積み上げる

静岡産業大学

本学の静岡県内就職率は例年75%から85%で推移しています。藤枝キャンパスのある県中部地域は東京横浜など首都圏に、磐田キャンパスのある県西部地域は名古屋圏の文化や経済の影響を受けやすいですが、地元に根ざした大学ならではの「実学教育」を重視しています。学生が大きく成長するために必要なことは、在学中に多くの「第三の大人と出会うこと」、つまり保護者や教職員以外の大人たちから刺激を受けることだと考えています。そのため、本学では行政や企業等に協力をいただきながら、学生が経験値を積み上げるための「実践的なプログラム」を多数用意しています。

例えば、昨年秋には藤枝駅前サテライトキャンパスにて「学生と企業の交流会〜自分を知る、企業を知る一日〜」というイベントを開催しました。地元の中小企業20社を招き、直接経営者の方から経営理念を基にした自社の考え方、特徴ある技術力やサービスを通じて世の中にどのように役に立とうとしているかなどを熱く語っていただくことで、就職活動とは違った企業理解を深める機会を設けました。その結果、多くの学生が中小企業を見る目が変わり、企業選びの視野を広げることができました。今の若者たちは「クール」な印象がありますが、人から得る熱量に敏感に反応する学生も多くいることもわかり、企業の魅力を伝える手段を企業・行政だけでなく学生とも相談しながら考えていくことの大切さを改めて感じました。

企業に選ばれるのではなく
学生が企業を選ぶための研究

静岡産業大学

入学時から就業意識を持ち、積極的に取り組む意欲のある学生もいます。そうした学生は就職活動が本格化する前に、地元静岡の魅力ある企業をみつけて直接訪問するという活動も行っています。静岡県は温暖な気候や地形を活かした農業・漁業、世界に誇る高い技術を持つ製造業、富士山や伊豆半島を中心とした観光業、また複数のプロサッカーチームなど、全国有数の1次2次3次産業が揃う稀有な土地柄であり、堅実に業績を伸ばす地元企業も多数あります。この活動は、知名度や待遇など条件面の尺度で企業をみるのではなく、経営理念を深掘りするインタビューを行いながら、その企業で働く意義を探索することで、働き甲斐を知ることを目的としています。この活動を通じて学生たちの生の声を聞く機会にもなり、私たちにとっても参考となる情報収集の場にもなっています。

やってきたことに意味を見出す
スポーツ系学生のキャリア支援

4年間をスポーツなど部活動と学業の両輪で生活している学生は前述のような学外活動を行う時間が十分にありません。しかし、実はチームワークを重んじ役割分担を遂行する部活動は、企業インターンシップに近いと捉えることもできます。日々の鍛練や困難を通してアスリートとしてのキャリアを積み上げるだけでなく、学びをスポーツに活かすことを実践的に育んでいるのです。そのため、スポーツ系の学生が陥りやすい「自分はスポーツしかやっていない、できない」という意識を改めるべく、「自分たちのやっていることに意味を見出す」ための整理を中心としたキャリア面談を行っています。また、トップアスリートを目指す学生ばかりではなく、プロチームを支えることを目標にしている学生もいますので、スポーツの持つ価値や地域活動の意義も視野に入れた、キャリア教育と就職支援を心がけています。

卒業生全員の自立を願い
「程よく、おせっかい」が理想

昨今は自己肯定感の低い学生も多く、ともすると在学中何もしないまま卒業し、その後の人生で路頭に迷う事態が懸念されます。本学を卒業したら全員が幸せになってほしい、それにはまず「自立」してほしいと常に願っています。特に1年次のうちから、いつでもキャリア支援課へ来てもらいたい、わからないことを知るために活用してもらいたいと、私たちから積極的に声をかけています。2年次のキャリア面談も480名全員と計2回、1回60分の時間を持ち、丁寧にヒアリングを重ね、アドバイスも行います。このような「程よく、おせっかい」の姿勢で学生一人ひとりと向き合い、学生自身では気づけない彼らの良い点をみつけて伝えることで、自信をもって就職活動に臨めるよう支援しています。また、キャリア支援課では、学生に関する情報を共有し、誰が対応しても同じ回答ができるよう徹底しています。学生の名前と顔が一致できるのは小規模大学の「強み」であり、一方で学生も私たちを見ていますので、身近な大人の手本となるよう襟を正しています。