【大学ism】静岡産業大学|大学Times

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大学Times Vol.32(2019年4月発行)

【大学ism】静岡産業大学

鷲崎早雄学長は高度成長期の製鉄会社でコンピュータエンジニアとしてシステムの企画開発に寄与、後に起業し、静岡産業大学の実務家教員へと転身した経歴を持つ。産業界と教育界の双方を知る鷲崎学長に、2020年4月に新設予定、県内初の「スポーツ人間科学部(仮称)」および今春より改組再編した「経営学部」から、同大学がめざす“地域社会に必要とされる人材育成”への課題を伺った。

静岡産業大学学長

静岡産業大学学長
鷲崎 早雄(わしざき はやお)

東京大学大学院工学系研究科博士課程先端学際工学専攻修了、学術博士(2001年3月)東京大学、M.A. in Economics(1977年5月)ペンシルバニア大学。
1968年、東京大学工学部卒業と同時に、富士製鉄(現新日鉄住金)入社。製鉄所生産管理部、本社にて、経営計画システムの企画開発に従事。1989年4月にビジネス・システムコンサルティング会社を設立しコンサルティング活動に従事。2002年4月に静岡産業大学経営学部教授となり、2016年4月より静岡産業大学学長に就任。専門分野は経営情報学、経済工学

企業人として日本の高度成長に寄与
開発成果を論文にまとめ大学教授へ転身

大学時代は数理工学を専攻し、黎明期のコンピュータについて学びました。卒業後は新しい技術を企業で活かしたいと考え、当時、製造業の中でも急成長を遂げていた鉄鋼業の企業に入社。工場のオートメーション化などのシステム開発を行いました。大手企業のコンピュータ普及と日本の高度成長期は合致しており、恵まれた時代にシステム開発の最前線で仕事ができたと思います。その後、コンピュタを取り巻く環境が激変する中、新しい時代に対応したコンピュータのコンサルタント会社を若い世代の人たちと起業。50代になってから産業における情報化の進展を実証するために母校の大学院博士課程へ進学し、2001年に博士号を取得。翌年本学の教員募集に応募して今日に至っています。

順位では測れない学生の可能性を引き出し
個々の成長に注力したゼミ教育

本学に入職してから特に力を入れたのはゼミの授業です。学生ひとり一人と向き合うことで、学生それぞれが持つ“可能性”に気付くことができました。高等教育機関であっても、まずは「人間力」を身に付けてほしいと思い、個々の可能性を伸ばし成長させることに10年ぐらい没頭しました。人間としての能力は、本来、順番をつけるものではありません。あらゆる可能性を引き出すことで「自分自身の価値」に気付くことができ、「自己肯定感」を持って社会で活躍できれば、人はさらに成長することができます。本学の学生の多くは卒業後、静岡県内の企業への就職を希望しています。そのため、学問だけでなく将来、地域社会を支える人材となれるように、「実学教育」を通して学生が地域社会のことを知り、自らの価値に気付くよう導いていくことが、地域の中にある本学の使命であると思っています。

磐田という地域特性から
スポーツ×他分野の化学反応で地元貢献

静岡産業大学

2020年4月に新設予定の「スポーツ人間科学部」(仮称・設置認可申請中)は、磐田市をはじめとした周辺地域と密着するための柱にしたいと考えています。「スポーツ科学」は体育学のほかに教育学、社会学、心理学、統計学などを総合して研究する学問であり、本学はそこに「人間」や「社会」を考えるさまざまな領域の学びを融合させます。スポーツと文化・ビジネス・情報・教育・保育・医学などの学問分野を掛け合わせ、化学反応を起こしながら「スポーツの持つ可能性」を探り、それを地域社会の活性化や人材育成に活かす静岡県内初の学びを展開していきます。たとえば、幼児期におけるスポーツを活かした保育活動は、子どもの健全な心と身体の発達や人間形成の観点などから近年注目を集めていますが、本学では何年も前から「スポーツ保育」を提唱して「キッズスクール」に取り組んできました。こうした「実学財産」が磐田キャンパスには多数あります。また、磐田市にはサッカーJ1リーグやラグビーのトップリーグの強豪チームがあり、地域の人々にとってスポーツ文化が浸透し、広く支えられている土壌がすでにあります。スポーツは産業、教育、健康、福祉などと深く関わっており、幼児期から高齢者までがあらゆる対象となります。広く地域に密着しながら、スポーツを通じて“新しい実学”を進めていく基盤がここにあると考えています。

藤枝市との連携を強める新・経営学部は
静岡をはじめ国内外での活躍する人材を育成

静岡産業大学

磐田キャンパスに「スポーツ人間科学部」(仮称)を新設することに伴い、「経営学部」は藤枝キャンパスに移転します。これは本学と藤枝市との連携を強める目的もあります。藤枝市とは大学を中心とした街づくり・地域発展の協定(藤枝市と静岡産業大学との包括連携に関する協定書)を結んでおり、これまでも藤枝駅前にサテライトキャンパス「BiViキャン」設置など、広く市民に開かれた学びの場を提供してきました。今回、その中核に新しい経営学部を置くことで、これまでよりもさらに間口の広い学びを展開したいと考えています。たとえば、実社会を教科書とした実践的な学習を目指し、BiViキャンを拠点にして地域社会をフィールドにした課題解決型のプロジェクトを充実させます。また、今日のビジネスに欠かせない「ICT能力」と「コミュニケーション英語能力」の教育も重要ですので、ビジネスソフトの使い方からプログラミングまでのコンピュータを使いこなす力と、アウトプット重視の実践的な英語力を養成します。さらに、学生には学びながら常に「出口」(卒業後)を意識できるような「教育プログラム」を掲げることで、明確な目標に向かって励んでもらえるように工夫するなど、新たな試みが詰まった学部として進化していきます。

地元企業と大学の“対話”を推進し
静岡県を活性化する人材輩出をめざす

最近では「高大接続から大社接続へ」といわれますが、本学では創立より「静岡で実学を学べる大学」として、静岡県の人材育成の一端を担ってきました。静岡県内に必要な人材を、大学と地域社会が一緒になって育てることをめざして開講する「冠講座」もそのひとつです。冠講座とは、企業の冠(社名)を付けた講座なので本学ではそう呼んでいますが、これは静岡県と関係の深い企業、団体、行政機関より、寄付金ではなく人材と最先端のビジネス情報を提供してもらう授業として、磐田、藤枝の両キャンパスで開講しています。実際の仕事内容や諸課題、最先端の取り組み事例など、現場にいる人だからこそ語れる貴重な話が聞けるため、学生にとても人気があります。このほかにも本学では産業界が「求める人材」に結びつけることをめざして設計した「教育プログラム」や「就職・キャリア支援」、「資格取得講座」など支援体制を充実させてきました。しかし、地元の企業・行政等と大学との対話はいまだ十分とはいえません。企業や地域社会で必要とされる人材にはどういった知識や技能を持ち合わせるべきなのか。双方が歩み寄って常に情報を掌握しながら連携することが、今後さらに重要になっていくと考えています。

勉強オンリーよりも大学生活を楽しんで、
主体的に行動できる人を歓迎

在学中に勉強だけでなく、スポーツや地域活動、ボランティア活動などを「楽しみながら行動」できる学生は4年間で大きく成長します。本学が推奨する「実学教育」は、教室で学んだ知識をそのままにせず、フィールドワークなどの活動を通じて、より実践的に知識を修得することをめざします。そして、活動の中で主体性や対話力、調整力などの「社会人基礎力」が身に付くようにより多くの機会を提供しています。具体的な目標や意欲のある学生にとって最適な環境が本学にありますので、それに共感してくれる高校生を受け入れるべく入試制度も大きく見直しました。自分の可能性を信じて、大学で新しいことにチャレンジしてみようと考えている学生のために、今後も教育改革を推進していく所存です。