【農学特集】農学部で学ぶ未知なるライフサイエンス〜玉川大学 農学部〜|大学Times

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大学Times Vol.33(2019年7月発行)

【農学特集】生物資源科学系11学科と獣医学科の“農学系総合学部”

環境や食糧問題など、課題が山積している現代社会。そうした問題にアプローチすべく2017年に『生産農学科』、『環境農学科』、『先端食農学科』を新設した玉川大学農学部。社会の持続的な発展を目指し、2019年には新たなカリキュラムとして「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(PBL授業)」を開講。工学部・農学部・芸術学部の学生がそれぞれの専門分野の垣根を越えたチームで協働し、「学部融合によるモノづくり」によって“玉川大学の未来”に関する課題に取り組んでいる。独自の特長について、先端食農学科主任 冨田信一教授、環境農学科主任 関川清広教授に取り組みを伺った。

ワンキャンパスの総合大学

玉川大学農学部の学びの特長を教えてください。

冨田 玉川大学は、都会からアクセスのいいワンキャンパスに8つの学部全てが揃う総合大学というのが大きな特長です。そして農学部にはカラーの違う生産農学科、環境農学科、先端食農学科という3つの学科があり、現在の形に学部改組されて、今年で3年目になります。私の所属する先端食農学科ではLEDを使った植物工場や水産分野の陸上養殖を行い、どちらも生産という分野を閉鎖環境で実現しようとしています。植物工場でのレタス栽培は、既に商業ベースに乗っています。陸上養殖は始まったばかりで、関連する基礎的な研究を積み重ねています。こうした生産システムと製造、流通のいわゆる「食の6次産業化」に注力をしています。農業は環境への負荷を考えつつ、ヒトに還元されるものですから、ヒトの生理、つまり食べ物の消化・吸収を含めて、食と健康という形を視野に置きながら研究・教育を進めています。

関川 私が所属している環境農学科では、学科カリキュラムの中心に「環境」を据え、「自然」、「農業」、「社会」の3つを重要なキーワードとしています。なぜなら、農業は自然の中から衣・食・住に関わる大切なものを生産しているので、自然の力は非常に大切です。かつての農地は里山の一部でした。本学の農場には里山的な環境が残されており、我々はその中で農場実習を行っています。農地を取り巻いているさまざまな「自然」、そこで営まれる「農業」、そして作られた農産物は「社会」の中で利用される、そのような視点から、これら3つを重要視した教育プログラムを展開しています。
2年次には全員がカナダかオーストラリアに海外留学をします。海外で自然や農業、そして文化や社会の違いを実体験し、3年次以降は専門的な教育を行うことが大きな特長となっています。

海外留学された学生さんは、どのような成長を遂げますか。

関川 留学先では、ホームステイをしながら大学に通います。英語に苦手意識を持つ学生も多いのですが、授業と日常生活で英語漬けの日々を送り、英語に対する距離感を縮めることができます。苦手だった外国人とのコミュニケーションに、帰国後は積極的に取り組もうとする学生が増えます。卒業生には、留学で触発されて4年生の時に、アメリカ国務省主催のSUSIプログラムの選抜メンバーに選ばれたという実績もあります。

農学部の研究領域で解決すべき問題点のポイントを教えてください。

冨田 どんな時代であっても食の安全・安心は避けられない問題です。何かが起こる前に予防に努め、起きてからでも上手にクリアすることを心がけています。また最近では季節限定の食べ物や生鮮食品など、食品ロスの問題もあげられます。問題解決のためには、社会の仕組みや日本の食物自給率のことなどを含めて、授業でも時事問題として取り上げています。食の安全・安心の課題は、植物工場や陸上養殖でも重要な問題です。

関川先生はいかがですか。

関川 環境農学科には、「自然」と「農業と社会」に取り組んでいる2つの研究室があり、学生たちは3年次からこれらの研究室に分かれます。彼らは、2年次に海外留学や実習をともにした、よく知った仲間です。研究室に入ると、それぞれの専門性を高めるプログラムがスタートします。環境農学科の3つのキーワード、「自然」、「農業」、「社会」を念頭において、異なる研究室間で切磋琢磨や協力しつつ、専門を極めてほしいと思います。また、学生それぞれが、周囲に知的アンテナを張り、学んでいくことが大切だと思います。

工学・農学・芸術学の融合

工学部と農学部と芸術学部が融合して課題に取り組む、複合領域研究について教えてください。

冨田 ひとつ大きなテーマがあり、学生個々が農学的視点、工学的視点、芸術学的視点から見ていくことで異なる分野での気づきがあります。それを講義型授業ではなくディスカッション中心のアクティブラーニング形式で導きます。例えば農学部で生産したものを製造・加工し、流通させる時はパッケージが必要となります。パッケージデザインや容器の持ちやすさなど、芸術学部ならではのアイデアがあるかもしれません。工学部からは、省力や省エネでムダのない農業が可能な、センサー技術のアイデアなども想定できます。農学的な知識と工学的な素養、芸術的な視点を学ぶことによる化学反応に期待ができます。

3学部の融合で期待される相乗効果は?

関川 従来型の農業は天候に非常に左右されます。一方、工業技術は植物工場やトラクターの自動運転など、農業分野への応用が進みつつあります。工学部的なセンスは農学部の中では限定的ですし、ビックデータやIoT、AIの応用などを含めると、農学部だけでの教育や研究には限界があります。このような視点に立ち、工学部と共同で最新技術を開発・応用していく、また最新技術と人間の接点となるインターフェースデザイン面で、芸術学部との共同も大いに期待されます。

農学部への進路で悩む高校生にメッセージをお願いします。

冨田 衣・食・住の中で食品は一番身近なものです。玉川大学で、より一層食品への興味を発展させられます。食品加工実習と農場実習の両方を学んだことをきっかけに、総務省のプログラムに参加した学生や、卒業後に八丈島に渡って酪農で起業し、乳製品をネット販売している先輩もいます。いろいろな疑問や希望を持って、その疑問解決・夢の実現の糸口を学びましょう。きっと何かが見つかります。

関川 未来は待っているのではなく、自身で切り開いていくものと考えます。環境農学科では海外留学の他に、箱根、北海道、鹿児島にある森林や農場での実習も行っています。いろいろな地域での体験をもとに、グローバルな視野を持った活躍が期待できます。実際に世界を股にかけて、森林関係の国際的支援事業に携わっているOBもいます。ぜひ玉川大学に冒険しにきてください。