【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)|大学Times

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大学Times Vol.33(2019年7月発行)

【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)

大学のグローバル化はなぜ必要か?

今、大学はグローバル化の中心を担う文化交流機関として、重要な役割が求められている。異文化間の理解と交流推進、世界観をもつ学生や社会を支えるリーダーの育成など、海外大学との厳しい競争時代を迎えて、日本の大学もこれまで以上に世界に開かれなければならない。全国的に国際系学部学科の新設が相次ぐ中、日本のグローバル教育の中心的役割を果たしてきた大学は、どのように考え展開しているのかを考察する。

大学評価の新指標「THE世界大学ランキング日本版」
ICUが私立大学で第1位

3月27日「THE世界大学ランキング日本版2019」が発表され、国際基督教大学が私立大学内では総合1位、国公立を含めた中では11位となった(別表1参照)。THE(タイムズハイヤーエデュケーション)世界大学ランキング日本版は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野16項目で構成され、大学の教育力を総合的に評価(別表2参照)。今回のランキングからは、学生が自分の大学を評価する「学生調査」の結果が新たに加えられた。調査結果は欧米諸国を中心に、留学先や提携先大学選びの参考資料にも活用されており、3回目の発表となった日本でも、偏差値とは異なる大学選びの指標として広く認知されることが期待されている。ランキング詳細は以下webサイトを参照
https://japanuniversityrankings.jp/rankings/

学生の評価でランクアップ
「教育充実度」「国際性」の高評価で私大1位に

今回ICUは、総合順位で昨年より5つ順位を上げ、私立大学で1位になりました。その主な要因は特に、学生調査の結果による「教員・学生の交流、協働学習の機会」、「授業・指導の充実度」、「大学の推奨度」の3項目が加わった「教育充実度」分野で、全大学中2位(昨年10位)になったことが大きく反映されています。その他外国人学生比率、外国人教員比率、日本人学生の留学比率、外国語で行われている講座の比率の4項目からなる「国際性」も、全大学中2位(昨年3位)の評価を得ました。

これまでは医学部や理工系学部をもつ大学の評価が高い傾向(論文発表数、資金獲得等)がありましたが、今年は評価配分の変化や学生の評価(全項目の18%)がプラスされた結果、従来のランキングに変化が生じました。

教育充実度の中でも「協働学習」については、ICUは大変充実しており、留学生を含めさまざまなバックグラウンドを持つ学生がともに学んでいます。また「教員・学生の交流」に関しては、少人数教育の特長を評価されています。ICUは、毎年発行する入学案内冊子で多くの在学生を紹介していますが、学長である私が個人的にこれらの学生を多数知っているのは学生数の多い大学では考えられないことですし、この点からも交流の深さ、距離の近さ(教員学生比率が1:19)を実感し、高く評価されていると思います。在学生による「大学の推奨度」も、ICUの卒業時調査で高い値が出ています。

メジャーの異なる学生との協働学習で
広い視野やクリティカルシンキングを育む

ICUでは2つのメジャー(専修分野)を同時に専攻できますので、たとえば「生命とは何か」という命題に対して、生物学的視点から哲学的視点まで、幅広い視点で取り組むことができます。また自分のメジャー以外の授業も自由に履修できますので、メジャーの異なる学生同士の協働学習が多いのも、特色のひとつです。大学での学びの多くは学部学科単位で行われますが、文系理系を問わず異なるメジャーの学生が隣同士で授業を受け、議論をするという機会がたくさんあります。留学生も同様ですが、前提となる志向が異なることで、物事の結論を導く過程において「なぜ」「本当にそうなのか」と批判的に問いながら納得のいく結論に到達するための思考を育むことができます。卒業時調査からも「クリティカルシンキングが伸びた」という回答が多く得られています。

偏差値では測れない大学の強みを可視化

ICUでは全項目得点のあった総合35位までの大学の結果を独自分析してみました。得点の伸びなかった「教育成果」のうち「企業人事の評判調査」は、全国内上場企業と一部優良未上場企業を対象としておりましたが、本学卒業生の進路は、これら企業のみならず外資系や海外企業、公的機関などに就職する人も多いため、調査対象となった企業に就職した人数の少ないことが要因と考えられます。「研究者の評判調査」は研究系大学の評価が高い項目です。同じく「教育リソース」については、旧帝大や医学部を持つ大学などの評価が高い項目であり、ICUは高くありません。

本調査結果の発表は日本では3回目であり、さまざまな意見もありますが、ランキングや評点内容は、たとえば海外の大学が提携先を探す際のベンチマークにもなっていると思います。少なくとも今後の志望校選びにおいて、受験生や保護者の方が偏差値だけで考えるのではなく、このような指標でも大学を見てほしいと思います。

大学で“バランスよく”学ぶために
教える側の改革も必要

ここ数年で国際系学部の新設や、グローバル人材を養成する大学が目立つようになりました。志望者数も年々増えています。その一方では国際化を掲げる日本の大学の多くは、圧倒的に日本人男性ばかりで運営されている実情があります。教える側も外国籍、女性、男性のバランスが必要なのではないでしょうか。学生も教員を見ていますので、学生だけに国際化を求めるのではなく、こちら側も変わってゆかねばなりません。

大学教育における真のグローバル人材とは、異なる価値観を受容できる多様性のある環境で、リベラルアーツのように文系・理系に偏らずバランスよく学ぶこと、言語についても日本語と英語・他言語でバランスよく学ぶことによって育まれると思います。

国際基督教大学 学長<br>日比谷 潤子

国際基督教大学 学長
日比谷 潤子(ひびや じゅんこ)

ペンシルヴェニア大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。慶應義塾大学国際センター助教授、ダートマス大学客員准教授、国際基督教大学准教授、教授、学務副学長 を経て2012年学長就任。日本学術振興会評議員、日本私立大学連盟常務理事、日本産学フォーラム委員、文部科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会委員、第9期央教育審議会委員。著書に「日本語教育の過去・現在・未来 文法」、「はじめて学ぶ社会言語学」など。専門は社会言語学。日本学術会議連携委員(言語・文学)。