【専門職大学/専門職短期大学特集】シンポジウム レポート|大学Times

  1. 大学Times
  2. 特集記事一覧
  3. 【専門職大学/専門職短期大学特集】シンポジウム レポート

大学Times Vol.35(2020年1月発行)

【専門職大学/専門職短期大学特集】シンポジウム レポート

制度2年目の専門職大学は、引き続き認可のハードルが高かった。今回は20校が認可申請したが12校が取り下げ、最終的に8校(うち専門職短期大学1校)が答申可となった。「大学新設よりも難しい」と囁かれる文部科学省の設置審査を、各学校法人はいかにして乗り越えたのだろうか。2019年11月6日に催された「専門職大学シンポジウムVol.8 専門職大学設置をめざす学校法人等の留意点とは?―これまでの審査結果を踏まえて―」(コンテンツ教育学会主催)のレポートから探ってみたい。

「新しいタイプの大学」としての確立に期待
今までとは違う大学をめざしてほしい

〜第一部・講演 文部科学省 高等教育局
専門教育課 課長補佐 菊池博之氏

「専門職大学等の設置構想のポイント」として、文部科学省の担当官である菊池博之氏が登壇し次のように述べた。
「専門職大学の制度化の背景には、産業構造の急激な転換や就業構造の変化といった経済社会の状況と、高等教育をめぐる状況の変化があります。大学進学率が上昇したことで多様な学生が入学し、これまでのアカデミックな教育よりも実践的な教育に適性を持った学生が増えました。また、学問重視の大学教育と産業界が求める人材のミスマッチも課題となりました。そのため「新しいタイプの大学」が必要となり、専門職大学が誕生しました。今後の成長分野を見据え、新たに養成すべき専門職業人材には、【高度な実践力】と【豊かな創造力】が求められます。質の高い実践的な職業教育を、制度として義務付けられた新たな高等教育機関が専門職大学・専門職短期大学です」

制度化ポイントの3つの要素

産業界や地域社会と一緒に教育する(教育課程連携協議会の設置)
教育課程の編成・実施に対して学長に意見を述べ、産業界や社会のニーズを教育に反映

機関の目的には「研究」を含め、教員は研究を行う
教員が研究や学生の教育研究指導を行うための適切な研究室の確保(機密性や広さ)も必要

養成する人物像からシラバスまで内容を整合させる
社会の養成を十分に踏まえ、ディプロマポリシーからカリキュラムポリシー、シラバスまで整合性をとる

展開科目は専任の教授・准教授が必要

専門職大学/専門職短期大学の教育課程のうち「展開科目」は特色のひとつだが、認可申請する学校法人と文部科学省の大学設置審査会(以下設置審)の間に、見解の相違が散見された。展開科目のポイントを、菊池氏は次のように述べている。

「展開科目は関連する他分野の応用的な能力で、当該職業分野において創造的な役割を果たすために必要なものです。どのような考え方に基づいて配置されているか、展開科目全体を通じてどのような能力が育成され創造的な役割が果たされるか、それは社会や業界のニーズがあるかどうか、がポイントとなります」

以前にも「たとえば看護学部の学生が理学療法や作業療法を学ぶことは、展開科目にあたらない」と文部科学省の担当官は述べていた。専門職大学における「創造的な役割」とは、当該分野で新たなビジネスや行政サービス等を創出することであり、各大学で研究を行う専任の教授・准教授による教育が必要ということであろう。

日本の高等教育のミッションは多様

「大学という機関に対し“世界的な教育・研究”“地域社会の人材育成”“職業に直結する学びを提供”“芸術や体育など特定の専門分野に特化”などがイメージできます。この多様性がわが国で学び、日本や世界で活躍する人材の厚い層を創出し、今後も尊重していくべきです」と最後に締めくくった。

一般の大学の基準を満たし
なお且つ専門職大学ならではの特色の両方を求められた

〜第二部・パネルディスカッション
学校法人敬心学園 小林光俊理事長(東京保健医療専門職大学)
学校法人電子学園 古賀稔邦理事(情報経営イノベーション専門職大学)
文部科学省 高等教育局 専門教育課 菊池博之課長補佐
モデレーター:コンテンツ教育学会 高橋光輝理事長(デジタルハリウッド大学学部長/教授)

モデレーターを務めた高橋光輝コンテンツ教育学会理事長の質問ならびに会場からの質疑応答を中心に、各パネリストが貴重な経験談を語るディスカッションが繰り広げられた。

Q:専門職大学の設置申請で何が大変だったか?

A:(敬心学園 小林理事長:以下小林)
新しい学校種のためモデルとなるものがなく、初年度は取り下げました。設置審は大学の先生ばかりで、厳しい意見もありました。また2年目に認可申請したところ違う先生に代わり、1年目とは異なる意見を述べることもありました。1年目は4回目の審査で取り下げを決断しましたが、当学園は既存の専門学校を募集停止して専門職大学設置をめざしていたため、時期が間に合わず専門学校生を募集できなかった点も経営的に厳しかったです。

A:(電子学園 古賀理事:以下古賀)設置申請は慎重に行いました。当学園は昨年10月に申請して1年後の今年11月に認可となりました。今年も取り下げた学校数の方が多く、簡単には通らないという感想です。

Q:両校は今年8月の時点で認可保留になったが、どの点を修正したのか?

A:(小林)
設置基準のうち、専任教員の研究室を15〜20u規模で30個室必要とのことで共同研究室はNGになりました。当初は介護福祉教員の高度化をめざし学科設置を申請しましたが、介護分野は大学の研究論文がほとんどなく、医療・福祉分野でも認可が下りず、諦めて研究室に割り当てました。

A:(古賀)
本来は8月31日に認可予定でしたので、2か月延びました。本学園は展開科目の見解に相違がありました。情報・経営の勉強を行い、イノベーションを起こす人材を育成しますので、たとえばスティーブ・ジョブズのような人物像を目標とし、英語に力を入れました。ところが設置審からは「それでいいのか」と。グローバル社会では英語だけでなく、世界の多文化や宗教を理解する学びが求められました。その前にも基礎科目は「社会人として自立するための科目」であり、いわゆる専門基礎ではない点が指摘されました。

Q:既存の専門学校から専門職大学へ移行する教員はどのくらいいるのか?

A:(小林)
2割くらいです。専門職大学開学をめざし、教員には全員修士以上を取得させました。しかし博士号を持っていても、大学での教員経験がないと通りませんでした。

A:(古賀)
経済系分野で申請をしましたので、日本電子専門学校の教員はゼロです。学長(中村伊知哉氏)の影響力もあり200名が応募し、28名採用しました。うち20名が実務家で、企業研究所などの経験者は学士もいます。教員は全員通りました。

Q:専門職大学の展望と大学院構想をどのように持っているか?

A:(小林)
教育の主流は大学院、これが世界の潮流です。そのためには「いい教員」づくりをしたい。日本の専門職大学が高等教育の“ハブ機関”として、日本の教育の良さを世界に知らしめるのが目標です。日本全体で10年後は50校、将来的に各県1校、総数で100校をめざします。職業教育の高度化は、近い将来国際社会でも評価されるでしょう。一般大学よりも設置が厳しいですが、専門職大学ならでは特色ある職業教育に期待を寄せています。