リベラルアーツ教育特集 学長インタビュー:神田外語大学|大学Times

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大学Times Vol.36(2020年5月発行)

リベラルアーツ教育特集 学長インタビュー:神田外語大学

宮内孝久学長は、長年に亘り、国際ビジネスの表舞台で活躍した経歴を持つ。2021年4月新設予定の「グローバル・リベラルアーツ学部」(2020年4月設置届出)は、ビジネス経験で得た知見やネットワークも生かした、さまざまな教育プログラムを準備中だという。神田外語大学の目指す新しいリベラルアーツ教育について、宮内学長に話を伺った。

神田外語大学 学長
宮内 孝久 (みやうちたかひさ)

1950年東京都生まれ。1975年早稲田大学法学部卒業、三菱商事入社。サウジアラビアのリヤド駐在や、メキシコで塩田の経営などを経験。代表取締役副社長などを経て、2018年4月から現職。元横浜市教育委員、国連UNHCR協会理事。

日本人は一生懸命働くことは立派だが
もっと考え抜く力を持つべき

「ビジネスマンとして世界各地で仕事をしていた頃、日本人のものの考え方の多くは、世界の非常識だと感じました。古代オリエント(中近東や北アフリカ)の歴史がギリシャ・ローマへと受け継がれ今日を形成し、ヨーロッパ・アメリカスタンダードが今でも世界を支配していると言っても過言ではありません。それは、論理的な思考、経済、軍事から生活、マナーに至るまでです。1980年代、日本経済は高度経済成長期にあり、『Japan as No.1』とまで言われ、時価総額で世界のトップ企業50社のうち、32社が日本企業という隆盛期の時にあっても、やはり国際社会では『日本は異端』と見られていると同時に、ヨーロッパ文明の亜流的地位でした。とは言え、世界経済をリードする日本企業の一員として、誇りを持ってビジネスには取り組みました。

その後、平成の約30年間でBRICs(ブラジル・露・印・中国)やASEAN諸国の経済が急成長し、石油資源で潤った中東諸国も次世代を見据え『脱・石油』を模索し始めました。そのような活気に満ちた世界の情勢の中で、バブル崩壊という経済的ダメージを負った日本は、社会が何となくしらけ、虚無感が蔓延し『自分は何の為に生きているのか?自己の存在は何か?』といったビジョンや理念について思考することも忘れ、ただひたすらに『もぐら叩き』のような日々の作業に埋没する面白みに欠ける社会集団になってしまいました。日本の自動車産業に象徴されるような、先人たちが得た知識や方法論をアップグレードする「カイゼン」、「改良」は日本のお家芸として一世を風靡したものの、やはりヨーロッパ・アメリカスタンダードが未だに世界を支配しています。平成以降の日本は、GAFAのようなイノベーションに至るユニークな発想、研究、開発する力が弱くなり一般的に薄っぺらい社会に成り下がったと危機感を持ちました。『変えなければ!』という強い思いから、教育の道を志しました。

偏差値信仰や『文系』『理系』の区分けは
若者の可能性に『フタ』をするようなもの

宮内学長は、日本の若者達が「まず、何でも見てやろう」と世界に目を向けることが大事であると考えているが、昨今の若者の「内向き志向」には危機感を抱いており、特に、中高生にも憂慮する点があるという。

それは多くの高校生が偏差値に縛られ過ぎていることです。その序列が一生ついて回り、社会秩序が出来あがる事を危惧しています。本来であれば、中高生はまずは『何をしたいか』を考え、それを実現する為の大学を探し、そこにたどり着く為の努力する事が自然ですが、模擬テスト結果の偏差値という序列を容易に受け入れ自分の可能性にフタをし、偏差値に合わせ学校選びを行い、科目の偏差値に応じて進学する学部学科を決めるのは変です。その結果、面白いと思う事に向かってがむしゃらに努力しない傾向を非常に残念に思います。本来、大学とは一つの概念では語れない存在であり、色々な価値観や理念を持つ大学があるのにもかかわらず、中高生達が、受験産業が創る大学ランクイメージを無批判的に受け入れてはいけません。『文系』『理系』といった学生の区分けも学習範囲を限定してしまい、同じように一人ひとりの可能性にフタをするようなものだと考えています。スウェーデンの女子高校生で環境活動家・グレタ・トゥーンベリさんのように『社会を変えよう』とする意思や行動力が欲しいですね。青春時代を中途半端に過ごさずに何かに没頭した方が愉快でしょう。更に、人生100年の大半を日本独特の『そこそこの満足感』に甘んじているのでは、面白くないでしょう!人生には刺激が必要なのです。グローバル化が加速する社会で、個々人が理想や理念を持たない画一的な日本人は取り残されてしまいます。そんな中、好奇心旺盛かつ海外志向が強く、行動力もある学生達が集まりお互いを刺激し合う校風に浸るとワクワクするでしょう。本学では、自らの可能性にフタをする事無く、今後のグローバル社会で活躍する学生が育って行くものと思っています。

「無知の知」と「社会の矛盾」を体感する
平和のためのリベラルアーツ

2021年4月新設予定の「グローバル・リベラルアーツ学部」(2020年4月設置届出)は、神田外語大学の建学の理念である「言葉は世界をつなぐ平和の礎」をベースに、1、Humanities(人間と文化)、2、Societies(社会と共生)、3、Global Studies(グローバルスタディーズ)の3つの領域を、教員と学生が議論をしながら少人数で学ぶことを目指している。

国際社会は常に緊張感の中で交渉や駆け引きが行われ、英語の4技能が求められます。特に『話す』と『伝わる』は別のことであり、話しても相手に伝わらない『虚しさ』を覚えることもあるでしょう。相手の言うことや書くことを理解し、自分の意見を話し、書いて伝え、更に刺激し合い発展する事はとても難しい事です。基礎的な4技能修得は、その難しいcommunicationの入り口なのです。グローバル・リベラルアーツ学部では、世界の共通語である英語を学ぶとともに、日本語や日本文化も相対的に学び、自己を客観視できる視点を身につけます。また1年次には日本の常識が通用しない、社会の矛盾を内包する地域に足を運ぶことによって、肌感覚で日本との違いを体験します(海外スタディ・ツアー)。ショックで『頭をガーン』と打たれる程の体験をし、頭を真空状態にします。自分達は知らない事だらけという事を自覚する事から、知識欲やその吸収力が高まり、頭が回転し始めます。そして課題意識を高めて共生の道を模索してもらいます。自らの常識が、世界の常識ではないと認識し、その際社会がどんな姿に見えたのかを経験します。その後は、各自が関心を持った分野、例えば経済、医療、その他何でも良いのですが自分自身が「面白い」と思ったことを学び続けるのです。これから激動が続くグローバル社会に於いても、世界の平和と繁栄の為に人々の多様な価値観を深く理解し、世界の課題に対して主体的に貢献する為の能力、マインドを身につけるのが本学の目指す『平和のためのリベラルアーツ』なのです。

国際社会で活躍するビジネスパーソンによる
「生々しい世界を知る講座」とNY州立大学への半年留学

もう一つの特徴は、国際社会の一線で活躍する外交官、国際公務員、日本企業の元トップなどによる生々しい現場体験を切り口にした特別講座を準備している事。そこでは宮内学長のネットワークが存分に活かされた人選がされる。

大学のアカデミアの観点とは違った、理不尽な現実の世界を知るための講座を開きたいと思います。国際社会には表に出てこない裏の駆け引きやドロドロとした力のゲームといった現実があり、それを経験者に話してもらうのです。私は世界を多面的に知り、世の中に関心を持ち、自分の力で考える能力、批判的思考力こそが、本当のリベラルアーツだと考えます。著名な元外務省高官の方々からも『海外での活躍を希望する神田外語大生にエールを送りたい』とのメッセージを受けています。現在、本学の卒業生が40〜50名、在外大使館に職員として勤務し、世界の舞台で活躍しています。グローバル・リベラルアーツ学部では、本を読み、現地へ赴き、経験者から学ぶという現場感覚に富んだ教育カリキュラムを展開したいと考えています。

さらに、3年次には半年間、SUNY(ニューヨーク州立大学)への長期留学を必修プログラムといたします。自らの力で考える問題解決力を前進させ、これまでの期間で身につけた知識や教養、問題意識、そしてそれらのアプローチ法を総動員して一つのテーマを決定し、卒業研究としてまとめます。そして国際公務員や国際NGO、グローバル企業など時代が求める幅広い分野での活躍を目指してもらいたいです。

リベラルアーツ教育で
うまくAIを使える人材を目指そう

リベラルアーツは人生を有意義に生きて行くために身につけるものです。AIが将来的に人間の労働を解放する一方、AIに振り回されないことも重要です。格差社会の増幅も懸念されますが、これらの課題解決に導ける教育がリベラルアーツ教育だと確信しています。Don’t be a slave to AI(AIの奴隷になってはいけない)です。好奇心があり世界を変えたいという意欲のある高校生に、是非、神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部を目指してもらいたい。