リベラルアーツ教育特集 学部長インタビュー:玉川大学|大学Times

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大学Times Vol.36(2020年5月発行)

リベラルアーツ教育特集 学部長インタビュー:玉川大学

2007年、日本初の「リベラルアーツ学部」を誕生させた玉川大学。学部設置は“全人教育の実現”を掲げた玉川学園の教育理念に源流があるという。総合大学の1学部としてのリベラルアーツは、他学部との連携や学際性が特色であり、オフキャンパスでのフィールドワークでは柔軟な学びや行動力を育みながら、学生一人ひとりの人間形成に寄与している。本学部設立時から尽力する八木橋 伸浩学部長に話を伺った。

玉川大学リベラルアーツ学部 教授/学部長八木橋 伸浩 (やぎはしのぶひろ)

玉川大学リベラルアーツ学部 教授/学部長八木橋 伸浩 (やぎはしのぶひろ)

1982年成城大学文芸学部文化史学科卒業、1989年同大学院日本常民文化専攻単位取得満期退学。専攻は民俗学・文化人類学。国際基督教大学講師、玉川学園女子短期大学助教授等を経て2007年より玉川大学リベラルアーツ学部教授。

“玉川らしさ”は学際性にあり

そもそもリベラルアーツとは古代ギリシャの教育理念のことで、自由民が自由に学ぶ学問を意味します。本学の教育理念『偏りのない知識をもった円満な人間形成』という全人教育の実現は、まさにリベラルアーツ教育そのものであり、“できるべくしてできた”という思いがありました。今では首都圏にもリベラルアーツ学部をもつ大学が増えましたが、差別化をはかるためにも私たちは常に“玉川らしさ”を追求しなければなりません。その一つが学際性です。学生が複眼的なものの見方を身につけられるよう、先生方で「学際研究会」を立ち上げて取り組んでいますが、常に新鮮で斬新な教育でありたいと日々研鑽を積んでいます。

新校舎 STREAM Hall 2019 竣工
専門性を担保しつつ柔軟に学ぶ姿勢を示す

本学部では多様な分野を複合的に学ぶ4つの領域(別図参照)を示していますが、これは目安であり、年々変化するものと考えています。そして学生たちが就活の際、大学で学んだことを説明するときの心の拠りどころとして7つの“メジャー”(哲学・宗教/心理学/社会学/国際関係/日本語・日本文学/日本学/STEM)を設定しています。私の専門は民俗学ですので、日本学メジャーに分類されますが、常に柔軟な学びのフィールドを提供できるよう努力しています。

4つの領域

また、本学では「ESTEAM※教育」をさらに推し進めるべく、新校舎「STREAM Hall 2019」(タイトル写真参照)もこの春竣工しました。工学部、農学部、芸術学部が同一校舎に集うことで、小原芳明学長の提唱する「サイロ化した各学部の研究財産の融合を図る」新たなフィールドに、私たちリベラルアーツ学部が今後どのように関わっていけるか、総合大学ならではの良さを活かしていく所存です。特に、入学当初から何をやりたいか決めかねている学生にとっては、あらゆる学問分野を身近に感じることができますので、専門性を担保しながら幅広く学ぶことができるでしょう。

さらに本学では『ブリッジ講座』を実施しています。一つのテーマ(たとえば桜)を自然科学、民俗学、文学、音楽などさまざまな分野の教授が講義し、ディスカッションを行うというものです。このように一つの事柄でも視点が異なり、広範な分野の専門家である先生方から得た知見は、学生が広く深く学ぶための手引きとして、関心を持って受講されています。

1年次研修でフィールドワーク体験
独自の海外インターンシップや単位認定も

リベラルアーツは図書館で書物を読むだけでなく、オフキャンパス・スタディーズがとても重要です。そこで入学直後の5、6月に一泊二日の研修を毎年実施しています。昨年は箱根でフィールドワークを行い、各自が発表までを体験しました。ほとんどの学生にとっては初めての経験となり、新鮮な印象を持ってくれたと思います。在学中に何度も経験するフィールドワークは、入学後できるだけ早めに一度体験したほうが良いと考えています。まず自分でやってみることと、他の学生がどのようなことを課題に取り組んだかを見ることも大切です。

フィールドワークは海外でも実施しています。本学部独自の留学制度もあり、語学プラスフィールドワークを課題としています。さらに海外インターンシップも実施しています。台湾のホテルでのインターンシップでは、対面接客を通じて社会人基礎力を養い、ELF(共通語としての英語)修得にも貴重な経験となるでしょう。本学ではクイーンズ・イングリッシュではなく、アジア地域の人々にも親しみやすいELFプログラムを全学で実践しています。

さらにオフキャンパスでの経験を発展させ、分野を問わず「何をやりたいのか」が決まれば単位認定のための学修企画書を提出することも可能です。学生の自ら学ぶ姿勢を尊重し、複数の教員で審査のうえ、認められれば実践し発表まで完了させれば、単位認定を行っています。

総合型・学校推薦型選抜利用者増加で
重要になる「入学前教育課題」

本学部でも総合型・学校推薦型選抜による入学者が年々増え、彼らの学力を担保し確認する方法が問題になりました。そこで本学部では早期に合格した総合型・学校推薦型選抜の入学予定者に、入学前教育課題として「小論文」「TOEIC®学習」「課題図書のレポート」を実施しています。

小論文については、課題について作成した文章を指定先に送り、添削指導後、書き直した文章を大学に提出してもらいます。文章力は入学後多くの授業で必須のスキルであり、早いうちに添削指導を受けることで今の力を可視化できるメリットがあります。

TOEIC®は学習記録の提出を課しています。本学部では「ELF301」をめざし、入学直後にTOEICBridge® Testsを実施、達成度によって入学後の英語クラス分けを行うための資料としています。

課題図書については、各分野の先生方が推薦した図書から数冊を選び、内容に関するレポートを提出します。高校生が日頃手に取る書籍とは一味違った、大学での新たな学びの扉を開くためのアカデミックなラインナップです。入学前教育課題については本学部webサイトで公開しており、一般選抜受験者へのメッセージにもなっています。

AIを操るには柔軟な考えが必要

本学部の卒業生は打たれ強い印象があります。それは「こんなものの見方もできる」と間口を広げて物事を捉えることができているからです。将来的にAIが人間の仕事を代替するといわれますが、AIを操るには頭の柔らかさが必要であり、柔軟な考え方を身につけるにはオフキャンパスの活動が大切なのです。

玉川大学のリベラルアーツ学部では現場に出て学ぶことが重視されます。いろいろなことに興味関心を持ち、多感で行動力のある高校生に、ぜひとも本学部をめざしてもらいたいです。入学後は活発に行動して人と関わる機会が多くなりますので、素直で積極性のある人はフィールドワークでも上手に行動できるでしょう。

※「ESTEAM」とは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)、を総合的に教える「STEM教育」に、芸術(Arts)とELF(English as a Lingua Franca:共通語としての英語)を融合するものです。