2021年度大学入試特集|大学Times

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大学Times Vol.37(2020年8月発行)

2021年度大学入試特集

6月19日(金)、文部科学省はコロナ禍による高等学校休校の長期化による学習の遅れなどに配慮した「令和3年度大学入学者選抜要項」を公表した。

【文部科学省「令和3年度大学入学者選抜要項」要旨】

①大学入学共通テスト(以下、「共通テスト」)

  • ●従来の「本試→追試(本試の1週間後)」ではなく、特例的に「当初の予定どおりの第1日程(2021年1月16・17日)→第2日程(1月30・31日)→特例追試(2月13・14日)」を追加
  • ●大学は高3で履修することの多い地歴、公民、理科の2科目指定を1科目に減らす、指定科目以外への科目変更を認める、など配慮
  • ●大学は特例追試の受験者も、共通テストを利用する各入試に出願できるよう配慮

②各大学の独自入試

  • ●総合型選抜の出願を9月1日⇒9月15日以降に後ろ倒し(他の選抜方法は当初予定どおり)
  • ●新型コロナウイルス感染症等に罹患した受験生への措置として、大学は必ず追試または振替を実施
  • ●高3で履修が多い科目は、問題を選択できるようにするなど配慮
  • ●教科書の「発展的な学習内容」は出題しない、あるいは注釈をつけるなど工夫
  • ●調査書に臨時休業により3年次の評定が記載できない場合、高校は理由をつけて記載不可とすることができる
  • ●資格・検定や大会等が中止、延期になったことで受験生が不利とならないよう配慮。特に総合型・学校推薦型では上記について努力のプロセスを評価する、ICTを活用する、など工夫

しかし、この入学者選抜要項の公表が例年より遅れたことで、各大学の独自入試要項の公表も遅らせる、あるいは変更する事態になっている。公表の期限は7月末日までとされているが、実際に各大学はどの程度上記の指針に沿って入試を行うのか、弊社では(事業拠点の無い北海道をのぞく)全国の大学・短期大学にアンケート調査を行った。

【調査概要】

調査目的

文部科学省が公表したコロナ禍による受験生への配慮を求めた「令和3年度大学入学者選抜要項」について、各大学はどの程度対応するのか、傾向を明らかにする。

調査方法

  • ●配布回収:FAXおよびインターネットによる
  • ●調査対象:北海道をのぞく全国の大学・短期大学 1,050校
  • ●調査時期:2020年6月22日~7月3日
  • ●回答枚数:446枚(回答率42.5%)
  • ●地域別回答数:東北…24 関東…136 中部…81 近畿…106 中国…36 四国…9  九州…54

なお、回答締切日が各大学の入試要項公表期限前であったため、各設問に対して「検討中、未定」と回答する割合が平均して30%にのぼった。そのため、以下に示す集計結果は上記を省いたものであり、決定後に改めて集計した結果、傾向が変わる可能性があることを予めお断りしておく。

アンケート集計結果

(1)入試日程について、当初の予定からの変更はありますか。

入試日程につい

●総合型選抜の後ろ倒しは3割強にとどまる

入試日程は一切変更しないという大学が6割以上となり、文科省の指針に従って総合型選抜の日程のみ後ろ倒しする大学は3割程度にとどまった。ただし、「変更しない」としている中には、もともと総合型選抜の出願を9月15日以降としていた大学や、総合型選抜自体を実施していない大学なども含まれる。

とはいえ、入試日程については既に募集要項を公表していた大学はもちろん、未公表の大学も、会場の確保や選考に携わる教職員のスケジュール、他大学の日程との兼ね合いなど、様々な観点から早い段階で日程を決めているだけに、当初萩生田光一・文部科学大臣が示唆した共通テストを含む全入試日程の後ろ倒し案に多くの大学が難色を示したとおりの結果となった。

●総合型選抜の実施回数や事前面談の回数を削減する大学も

総合型選抜の日程を後ろ倒しにするとしている各大学の要項を見てみると、後ろ倒しというよりも複数回実施するうちの第1回目の実施を取りやめ、第2回目の日程から実施する、あるいは、全2回実施を1回に集約するといった大学が見受けられた。昨今のAO入試は併願を認めるケースが増えていただけに、併願での出願を考えていた受験生はスケジュールの見直しを迫られることになりそうだ。

また、出願までに必須とされるオープンキャンパス参加時の面談や個別相談についても、2回行う予定を1回に、かつ、来校せずにビデオ会議システムを使用しての「オンライン面談」でも可とする大学もある。既に来校型のオープンキャンパスの多くはオンライン型に切り替わっているだけに、まだこのシステムに慣れていない受験生は、友人同士や高等学校の先生などと「オンライン面談」の練習をしておくことをおすすめする。

●共通テスト利用型選抜は出願期間延長の可能性あり

全ての入試日程を変更しないと回答していても、大学入学共通テストの成績のみ、あるいは共通テストと独自試験の結果を組み合わせて合否判定する「共通テスト利用型選抜」については、前述のとおりコロナ禍による学習の遅れや罹患者に配慮した追加日程および特例追試日程が設定されたことで、従来の出願期間を延長する大学がある。例えば、武庫川女子大学(兵庫県)では、当初出願書類の受付締切日を1月28日(木)としていたが、出願登録および受験料入金締切を2月3日(水)に、書類締切を2月4日(木)に延長することで、1月30・31日に追加された共通テスト第2日程の受験者に配慮するほか、2月13・14日の特例追試受験者のみで別途合否判定を行うとしている。本原稿を執筆している7月13日の段階で同様の措置を取っている大学は殆ど確認できなかったが、共通テスト利用型選抜の出願期間を複数設定していない大学は今後変更される可能性もありそうだ。

(2)選考方法について、全体的に当初の予定や予告内容からの見直しはありますか。

選考方法について

●全体的な選考方法の変更にも消極的

「予告・決定内容通りに実施する」と回答した大学が8割に迫り、入試日程以上に変更を行わない割合が多い結果となった。もともと21年度入試は「入学者選抜改革元年」として、各大学が早くから選考方法を策定してきていたが、昨年の共通テストにおける相次ぐ変更にさんざん振り回された挙句、さらにまた大きな変更は加えたくないというのが大学側の本音だろう。ただし、そのような大学でも、公表されている募集要項や受験生サイトに「今後の(新型コロナウイルスの感染拡大)状況によっては変更を検討する。また、特定の受験生に不利益が生じないよう最大限配慮する」といった注釈を付けていることで、文科省の指針に沿った姿勢は見せている。

●特別措置として選抜形式を新設する大学も

このように、選考方法の変更について消極的な大学が多い中、「その他」に回答した大学に、変更ではなく選抜形式を新設した例が記載されていたので紹介したい。

麗澤大学(千葉県)は、国際学部において、出願要件に語学外部検定スコアを必要としない「総合型選抜マニフェスト入試」を新設した。同学部の総合型選抜では語学検定スコアの提出が必須であったが、検定試験の相次ぐ中止や延期を受け、検定試験などこれまでの学修成果よりも、大学入学後の「公約(マニフェスト)」の「計画性」「実現性」をプレゼンテーションや面接などによって評価するというものだ。この選抜形式は、同大学が5月に公開した「入試ガイド2021」にも、6月に公開した「総合型選抜・学校推薦型選抜要項」にも掲載されていない、まさに「コロナ禍対応入試」と言えるものだ。

(3)学校推薦型選抜における「学習成績の状況」(旧評定平均値)の出願基準について。

学校推薦型選抜の出願基準

●基準は下げないが、評価期間は柔軟に対応か

グラフの数字だけ見ると、「コロナ禍で学修時間が減少しているにもかかわらず、何の配慮もしてくれない大学はこんなにも多いのか」と思われるだろう。

しかし、「その他」の回答を見てみると、自由記述欄には「基本は3年次1学期終了時だが、2年次終了でも可、もしくは、どちらか選択」、「当初の設定からは変更はなし。ただし、3学年1学期の中間・期末テストが実施できなかった場合は実施された範囲の実績とする」、「臨時休業等により第3学年の評定を記載できない場合はその理由を付し、記載不要とする」、「提出困難の場合は個別対応、要相談」…といったように、基本的には変更なしとしながらも、評価期間においては文科省の指針に沿って柔軟に対応できるとしている大学が殆どであった。ということは、「変更なし」と回答している82%の大学の中にも、同様の措置を取る大学があったとしてもおかしくはない。ただ、その全てを改めて調査する時間は無いため無責任な書き方で恐縮だが、受験生には各大学の募集要項を必ず確認した上で調査書作成を依頼するようご指導いただきたい。

●少数だが出願基準を引き下げる大学は狙い目

全体の1%にとどまった出願基準を引き下げる大学は、実際にどの程度の数値変更なのか調べてみると、3.8からマイナス0.3ポイント、つまり「B段階」の下限である3.5まで引き下げている大学から、3.0→基準なしという思い切った措置を取る大学までと振り幅が大きい。いずれにしても、コロナ禍以前の成績では出願基準に満たず諦めていた受験生にとって、狙える大学が増えたということは大きい。アンケートでは「検討中・未定」と回答した大学が2割強あったが、その中から今後同様の措置を取る大学がどのくらい増えるかによって、冬場の新型コロナウイルス再拡大を避けて昨年以上に増加すると予想されている学校推薦型選抜の受験者数の割合も変わってくるのではないだろうか。

(4)総合型・学校推薦型選抜における部活動等諸活動の実績や指導上参考となる諸事項の評価について。

総合型・推薦型諸活動実績の評価

●選考の公平性をどこまで明示できるのか

調査書を記入する高等学校の先生方にとっては、今入試から枚数制限が無くなったことでどのように記載すればよいのか頭を悩ませていた項目であったにもかかわらず、コロナ禍により更に書き方がわからなくなってしまったのではないだろうか。しかし、アンケートでは部活動の大会等が中止になったことにより、評価の比重を下げ他の要素の比重を上げるといった配慮はしない大学が7割を占める結果となった。これは、文科省の要項に記載された「大会等の評価を記載できない場合、高校は理由をつけて参加予定だった大会名や資格・検定名を記載することができる」を受けての措置と思われる。つまり、各大学は受験生が参加予定だった大会名や資格検定名で評価するということだが、例えば英検準1級を高2で取得済の受験生と、高3になってから受検する予定だった受験生は同じ評価となるのだろうか。

また、同じく文科省要項では大会や検定試験に臨むまでの努力のプロセス(=過程)を評価するよう求めているが、応じた大学はアンケートでは16%にとどまっている。ちなみに「その他」に回答した大学の多くは「2年時までの実績+過程」といった複合的要素での評価であったが、その数値を加えても30%に満たない。この数値が低いのは、「過程を評価」することの難しさを表しているのではないだろうか。

このような評価方法について、各大学はその内容を募集要項等で周知することになっているが、数値や結果では測れない部分についてどのような基準をもって選考するのか明示できるのか気になるところである。

(5)英語外部検定利用選抜について。(実施を予定していた大学のみ回答)

英語外部検定利用選抜について

●変更大学が少ないのは検定取得期限がコロナ禍以前でも可としているため

共通テストでの利用見送りなど紆余曲折のあった英語外部検定利用入試。当時は批判の嵐が吹き荒れたが、コロナ禍による受検機会の減少を考えると、結果的には妥当な判断だったということであろう。しかし、今や全体の50%以上が利用している各大学の独自入試においては、実に8割の大学が当初の予定通り実施するという。理由としては、利用大学の多くが、検定の取得期限を「2019年1月(2月・4月)以降」、「出願から2年以内」というようにコロナ禍以前の取得スコアでも出願可としているためであり、見送りになった「英語成績提供システム」のように受験年度の4~12月の検定受検を義務付けるものではないことが考えられる。なお、「その他」の回答の中には、もともと幅を持たせていた取得期限の延長や、無期限にするという措置を取る大学もあったことを付記しておきたい。

●コロナ禍による代替検定を認める動きあり

一方、出願基準や得点換算できるスコアの引き下げをする大学は殆ど見られなかった。ただし、語学教育に力を入れている大学を中心に、入試に適用できる検定の追加・拡充がはかられている。

国際基督教大学(東京都)は、総合型・一般選抜などにおいて、選抜要項に記載されている各成績証明書に加え、いずれも自宅受験が可能な「IELTSIndicator」(現在は受付を休止)および「TOEFLRiBT Special Home Edition」(2020年9月30日まで実施)による成績証明書を追加した。

また、神田外語大学(千葉県)は、外国語学部の学校推薦型選抜および来春新設予定のグローバル・リベラルアーツ学部(詳細は本誌2020年春号を参照)の総合型・学校推薦型選抜などにおいて、実用英語技能検定2級に相当する資格として、①「実用英語技能検定2級」一次試験合格②「英検IBA テストB(2技能RLまたは4技能)」2級レベル、自宅受験が可能な③「ケンブリッジ英語検定CBT Linguaskill リンガスキル(一般向け:ジェネラル)2技能LRまたは4技能」B1以上を出願基準に追加した。

上記検定の多くはコロナ禍により会場受検ができない代替措置としてのもので、他大学でも入試での適用を認める動きはあるが、例えば「TOEFLRiBTSpecial Home Editionは認めるがIELTS Indicatorは認めない」というように、その扱いは大学によって異なるので注意が必要だ。

(6)一般選抜における出題範囲について。

一般選抜の出題範囲

●今さら入試問題の変更はできない大学が殆ど

「検討中・未定」と回答した大学が35%と、これまでの総合型や学校推薦型選抜に関する設問よりも高い割合となった。各大学が日程の早い選抜方式から検討を進めていることがうかがえるが、それ以外の回答数で集計した結果、「前年度と同程度の出題範囲」とする大学は実に9割近くにのぼった。

逆に、文科省の要項で求められている、3年で履修することの多い科目の選択問題化を含めた出題範囲の縮小や教科、科目の削減などといった措置を取る大学は「その他」を含めても1割強という結果であった。

やはり入試日程と同様、入試問題については早くから方針を決め、大学によっては作成に着手しているところもあるだけに、今からの変更は難しいということであろう。受験生にとっては厳しいだろうが、ここは腹を括って志望大学の過去複数年分の問題を確認し、学修範囲外の問題の分量や傾向を把握するなど各自で対策を立てることが求められる。

(7)出願方法について、当初の予定から変更はありますか。

出願方法について

●既にWeb出願が浸透も、紙オンリーも4分の1

コロナ禍により対面型オープンキャンパスがWebオープンキャンパスに切り替わったように、出願のWeb化ももっと促進されるかと予想していたが、新たに導入するという大学は6%にとどまり、従来通り紙の願書のみという大学は4分の1もあった。ただ、その内訳を見ると約半数の59校が短期大学で、4年制大学もその多くが単科大学であった。そういった大学は願書を大量に印刷する必要がなく、ともすればWeb出願化にかかる費用の方が高くつくことを鑑みた結果、あえての紙オンリーということが考えられる。そうなると、このような大学や短期大学が今後もWeb出願を導入する可能性は低いと言えそうだが、2023年度から導入と言われている調査書のWeb化が実現した場合にはどのように対応するのだろうか。

(8)一般選抜において、試験会場を「3密」にしないために衛生面以外の対策について決定・検討していることはありますか。(複数回答可)

試験会場の3密対策

●多くの大学がいまだ対応に苦慮

新型コロナウイルス感染防止対策として挙げられているのがいわゆる「3密」の回避であるが、特に一般選抜では全国各地から集まった受験生が密閉された空間に密集することになる。各大学としては試験会場で感染を拡大するわけにはいかないだけに徹底した対策が求められるが、アンケートでは全設問中最も多い294校が「検討中、未定」の回答であったことが、この対策には頭を悩ませていることをうかがわせる。

それ以外で最も回答数が多かった「試験教室・会場の増設」についても、単純に1教室の収容人数を半分にしたとしても、教室数は2倍確保しなければならない。それだけでなく、試験監督者やその補助といった人員も増員が必須となる。また、地区入試など学外で行われる入試で使われる予備校や貸会議室は、早い段階から押さえられており今から増やすことは難しいなど、どの大学も簡単には対応できるものではないという声も挙がった。

そうなると、一度の共通テストの結果のみで合否が決まる「共通テスト利用型選抜」を出願しておけば、何度も受験校に出向く必要はないので感染リスクを減らすことはできるが、この選抜方式の定員を増やすという回答はどの大学からも無かった。こちらも今から各選抜方式ごとの定員を調整するのは難しいということであろう。

これまで以上にこまめな情報収集が必須

アンケートの集計結果は以上であるが、総括すると「現段階では文科省が求める受験生への配慮に対応している大学は少数であった」、ということになる。ただし、新型コロナウイルスの新規感染者数は7月中旬現在再び拡大傾向にあり、特に日本の大学生の約3割が集中する東京都では緊急事態宣言時以上の数字となっており、今後どうなるのかは全く予測がつかない。既に入試要項を公開しているどの大学も、今後の感染拡大状況によってはその内容を変更することもありうる、としている。

文科省の選抜要項には、「募集要項に記載されている選抜方法とは異なる方法で選抜を実施することがあり得る場合には、その旨を明記するとともに、変更については早期に決定し、周知する」とあるだけに、受験生には各大学の受験生サイトをこれまで以上にこまめにチェックして最新の情報を入手することが必須となる。同時に、各大学には変更事項があった場合、受験生とその保護者および高等学校教員などに対し、どれだけ迅速に、わかりやすく伝達できるかが求められるといえよう。