【グローバル系大学特集】教員インタビュー 学習院大学|大学Times

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大学Times Vol.37(2020年8月発行)

【グローバル系大学特集】教員インタビュー 学習院大学

2016年4月、学習院大学に「国際社会科学部」が誕生した。実に52年ぶりの学部新設は、受験指導者の 間でも大きな話題となり、初回の一般入試は100名の募集定員に対し、2000名以上が志願したという。 その1期生がこの春卒業し、真価を問われる5年目を迎えたが、同学部のめざすグローバル教育と人材育 成について、玉置えみ准教授にリモートで話を伺った。

学習院大学国際社会科学部 玉置 えみ 准教授

学習院大学国際社会科学部 玉置 えみ 准教授

2005年ワシントン大学社会学部教育助手、同大学人口学研究所研究助手、Shanahanフェロー、2010年イーストウェストセンター客員研究員(NIHプロジェクト研究助手)、2013年米国ワシントン大学大学院社会学研究科博士課程修了(PhD Sociology)、2013年立命館大学産業社会学部助教を経て2016年より現職。専門領域は社会学、人口学、国際人口移動、家族と健康。

「社会科学」と「英語教育」の二本柱

本学部は創設当初から二つの柱を教育方針として掲げています。一つは社会科学の専門性を身につけることです。専門性とは、経済学・経営学・社会学・法学などの学問領域を通じて、国際社会において重要な課題を発見・分析し、解決策を見出すことです。もう一つは英語教育です。世界的に広く使われている語学の獲得を通じて、価値観の異なる人々とコミュニケーションをはかり、共に行動する力を養うことを目指します。

日本の高校生が卒業後学ぶ大学として
4年後の成長を見据えたカリキュラム

本学部のカリキュラムは、日本で勉強した高校生が入学後の4年間で確実にステップアップできるよう配慮しています。

1年生では英語の基礎として四技能のボトムアップをはかり、日本語で社会科学の基礎を学びます。同時に「海外研修Ⅰ」という必修科目を通じて、後に全員が行くことになる海外留学の準備を行います。どこへ行くのか、何を学ぶのかだけではなく、訪問先での危機管理から帰国後の人生設計、そして卒業後の活動を見据えたビジョンを入学当初から構築することを目指します。この試みは学生さんの大学生活全般に対する意識を高める思わぬ効果もあるようです。本学部の学生は1年生の頃から「4年間の大学生活で何をしたいのか、卒業後どう活かしたいのか」を常に考えて行動しているように思います。

2年生では社会科学の専門科目を英語で学ぶことを通じて、専門性と語学の融合を目指します。特に「ブリッジ科目」と呼ばれる科目群では、語学の教員と社会科学の教員が連携して授業を進めます。英語の授業では、経済学などに必要な英単語や基礎概念を丁寧に学びます。同時に社会科学の講義は英語で行われ、より専門的な学術内容を高度な英語で議論できるようになります。語学と専門科目を同時進行で学ぶことで、効率よく専門科目を英語で理解できるのが特徴です。

「全員が海外研修」するための手厚い環境

海外研修は1年生から4年生までの好きな時期に行くことが可能です。海外研修は必修のため、先に留学した学生から帰国後に情報共有がなされ、自然に学生同士のディスカッションが生まれています。これが相乗効果となり、「全員で海外研修に取り組む」という環境が醸成されているのも本学部の特徴です。海外研修終了後は「海外研修Ⅱ」という必修科目が用意されています。この科目は、ゲストスピーカーからお話を聞いたり、グループワークに取り組んだりする中で、海外研修経験を今後の学習やキャリア形成につなげることを目的としています。海外留学者はともすると帰国後は孤立しかねませんが、こうした手厚い学びの環境で学生全員をサポートします。

3年間の学びと海外研修によって、4年生になると、英語力も上達しています。卒業論文に取り組む学生のなかには、海外で発表された英語論文を自ら探して読み、議論をするなどの成長もみられます。また、この春卒業の第1期生は金融、コンサルティング、メーカー、観光など幅広い分野の民間企業に多数就職しました。多くの学生さんが、「自分は将来どうなりたいのか、そのために今何をすべきか」を4年間、問い続けた結果だと想像します。

社会科学×英語力の強み

学習院大学では国際社会科学部創設に先立ち、卒業生と関連のある主要企業の人事担当者に「貴社が学生に求めている能力は何か?」という内容のアンケート調査を実施。65社の回答(複数可)で最も多かったのは「課題の発見・解決力」(63社・全体の97%)だった。次いで「国際経済・国際社会への理解力」(30社・47%)と続く。企業の声に裏打ちされた社会科学のエッセンスが4年間の学びとして集結し、今春卒業の1期生は民間企業を中心に実社会へと進んでいる。

国際社会科学部2020年4月卒業生 就職状況

卒業生が民間企業に数多く就職した実績は、「社会科学の強み」とも関連しているかもしれません。学生に求める能力を企業に尋ねるアンケート調査で多くの企業が回答した「課題の発見・解決力」、「国際経済・国際社会への理解力」といった能力は、いずれも社会科学に重点を置いた本学部の学びの根本的要素です。加えて、本学部は人種、国籍、海外経験など、異なるバックグラウンドを有した国際性豊かな教授陣で構成されています。多様性理解としての英語教育の環境も整っており、国際社会で幅広く活躍するための能力を培うのに最適な学部であるかもしれません。学生さんにとっても、実社会とのつながりの中で論理的な思考力を深める「社会科学」の訓練が、日常生活の中で自然とできているのではないでしょうか。

全国には文化の違いに焦点を当てた国際系の学部が存在します。本学部は同じ国際系でも、経済、経営、法学など実社会に出て戦力となる学びに焦点を当てています。この点が卒業後の進路選択に反映されているのでは、と分析しています。

適切なチャレンジの積み重ねで
学力向上を全面サポート

国際系学部といっても英語が得意な高校生ばかりが入学するのではありません。入学当初には英語や専門科目の基礎学力が不足していても、1年生から継続的に勉強することで、4年生の頃には確実に成長することが可能です。本学部のカリキュラムは、1,2年生の中緩みしがちな時期でも目的意識を持って学び、個々の力に合った適切なチャレンジを積み重ねることができる仕組みをもっています。「日本の高校を卒業した学生」を対象とする本学部のカリキュラムの設定は、学生のみなさんが、入学時から気後れすることなく、ひとりひとりのペースで確実に成長することが可能です。

突然のコロナ禍で見えた社会科学の重要性

新型コロナウィルス感染拡大は、社会科学の観点から国際社会の抱える問題を分析し、課題解決に取り組むことの重要性を浮かび上がらせました。感染の広がり方や社会に及ぼす影響は国によって大きく異なります。そのため、国の制度(法律)や経済、人々の慣習など、従来から社会科学が対象としてきた学問領域に関する知見が、長期化するコロナ禍における課題解決には必要となっています。また、国境を超えて拡大するウィルスに対処するには、一国内でのみ通じる考え方や行動では足りないかもしれません。万国共通の分析力、方法、ロジックなど、国境を越えた視野の広さや行動力が求められます。グローバルな視点で課題を分析し、解決策を見出す社会科学の思考法は、今後ますます重要なスキルとなっていくでしょう。

今回のコロナ禍のように、今まで予測もしなかった事態は今後も起こります。社会科学は、その分析や解決のために貢献できる学問分野です。同時に課題解決には、価値観の異なる人々とのコミュニケーションも重要な要素となります。社会科学と英語教育を二つの柱とする本学部のカリキュラムを通じて、4年間で培う能力は学生のみなさんの今後の人生に大いに役立つでしょう。将来、国際社会に貢献し、その中で自己の成長を目指したいと考えている高校生に、ぜひ学習院大学国際社会科学部を考えていただければ、と思っています。