【専門職大学特集】コンテンツ教育学会理事長・高橋光輝氏インタビュー|大学Times

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大学Times Vol.39(2021年1月発行)

【専門職大学特集】コンテンツ教育学会理事長・高橋光輝氏インタビュー

高校教員アンケートの結果、専門職大学は高校生の進路先として認知されているとは言い難い状況が浮き彫りとなった。その主な要因は既存の教育機関との違いへの理解が進んでいないことであったが、ではどうすれば認知度が向上するのか。専門職大学制度が施行された直後から専門職大学についての研究を続けてきたコンテンツ教育学会 理事長・高橋光輝氏(デジタルハリウッド大学 学部長・教授)に話を伺った。

コンテンツ教育学会 理事長 高橋 光輝 (たかはし・みつてる)氏

卒業後、アメリカ本土における日本語TV放送局にてディレクターとしてテレビ番組製作業務に従事。映画やアニメなど「コンテンツ産業論」や「アニメ学」等の著書を発行。文化庁や外務省などの依頼で世界各国で日本のコンテンツ産業の講演活動を続けている。私塾から専門学校、大学、専門職大学院と様々な現場にて教鞭の経験を持つ。実践的な教育手法の研究を活用して、高度職業人養成を行う。コンテンツ教育学会理事長を務める。

まず、アンケート結果をご覧になって率直な感想は?

実際に認知する機会がどの程度あったのか。世間一般には一部の専門職大学のTVCMがあったが、あとは文部科学省からの認可申請とその審査結果の通知情報程度で、進路専門情報誌以外のいわゆる一般的なマスメディアに取り上げられる機会は多くなかったのではないか。それ故に高校の先生方にとっては初年度の審査結果が厳しかった報道が強く印象に残ってしまい、肝心の教育内容についての関心が薄れてしまったのではないだろうか。その中でも特に既存の教育機関との明確な違いに対する理解が進んでいないことは今回のアンケートでも明らかになっているが、これまで設立された専門職大学の多くが専門学校が母体となっている。それであれば専門学校で展開してきた実践的な教育とどう違うのか、新たに大学としての学問的な理論教育はどのように行われるのか、という具体的な差別化の情報発信が必要だったのではないだろうか。実際には各校ともに行ってきていたとは思うが、大学入学者選抜改革やコロナ禍と重なってしまったこともあったので、より強いメッセージがあればよかったのではないかと感じた。

既存の教育機関との違いがなかなか理解されない要因は?

まず大学との違いであれば、少人数の実践的な職業教育を行うという魅力が既存の大学よりも限定的な教育をしていると捉えられてしまっているのではないか。それにより、多様な学びの中で自分のやりたいことを見つけるという、社会に出る前の自分探しや人間形成の場でもある大学教育の方が就職という出口の選択職種が自分で選べてよいという意見が挙がっているのかもしれない。この点は高校教員の求める大学像がそれぞれ異なっていることもあるのだろう。

もうひとつは、現段階で認可されている専門職大学の約半数が医療系だからではないか。学校種が違っても取得する国家資格は同じなので、それが「既存の専門学校との違いはどこにあるのか」という声が多く挙がっていることにつながっていると思う。だから専門職大学の卒業生を雇用する側には、同じ国家資格を保有していた場合、学歴によって任せる仕事が異なるのか聞いてみたい。実際には多くの企業が学歴ではなく個人の能力評価に紐づいて採用しているので、専門職大学卒だからということにはならず、それがわかっているからこそ高校教員や高校生は専門職大学に進学するメリットというものを感じていないのではないか。

ただ、それでも大卒しか採用していないという企業も多く存在するし、一般的に大卒と専門卒では給与体系が異なる。そういう点では専門職大学に進学して専門的な技術を学んだ結果、大卒の称号が得られるということは大きな意義があると思う。あとは資格取得にとどまらない個人の能力を4年間でどこまで引き上げられるかということになるのでは。

そのような既存の教育機関では対応できない高度な知識と技術をどのように身に付けさせるのか、具体的に示していない専門職大学が多いように感じる。

それを誰にでもわかりやすく示すのであれば、専門職大学の制度上からは多少離れてしまうかもしれないが、臨地実務実習の時間を増やすべき。4年間で600時間というと1年単位では150時間になるが、それだと1日8時間の20日間勤務よりも少ないので、もっと多くの時間を割いてもいいのではないかと思っている高校教員もいらっしゃると思う。

また、その実習カリキュラム作成についても、もっと企業を絡ませるべきではないか。専門職大学が定めたカリキュラムポリシーに沿った教育にとどまらず、企業側が求める能力を持った人材を育成するために必要なプログラムを、企業が専門職大学と一緒に開発する、それも臨地実務実習のプログラムだけではなく、その前段階の学内実習や理論教育のカリキュラムも含めて全面的に関わってもらうことが必要なのでは。

ただ、現状ではまず全員がどこかの企業で臨地実務実習を行わないといけないから、どの専門職大学も多くの企業と協力関係を締結しているが、大事なのは数や名前ではなく中身。例えば、はじめから特定の企業と深い連携関係を築き、その企業が求める人材を育成すべく協同で実践的なカリキュラムを策定し、優秀な学生はそのまま採用―というような流れを作り、その情報を専門職大学だけではなく企業も一緒になって発信することができれば、高校の先生だけでなく社会的評価も高くなるのではないか。

確かにその手法は企業側にとっても欲しい人材を採用できることにつながるし、それが著名企業なら宣伝効果は大きい。

とはいえ、そういった情報は完成年度にならないと就職の結果が出ないので、具体的に公表できないのかもしれない。また、通常、広報にも力を入れる大学開校初年度は、入学者は集まりやすい傾向があるので、入試結果をより詳細に公表してみればよいのでは。倍率が定員を大きく上回っている状況であるようなら、専門職大学はこれだけ志願者がいる程受け入れられており、これだけの倍率を勝ち抜いて選抜された学生が学んでいる、となって対外的なアピールにはなる。中には専門学校時代と変わらず、定員ギリギリか定員割れという専門職大学もあったようだがプラスになる情報は積極的に公開すべきだと思う。受け手の実になる情報発信がまだまだ足りず、専門職大学のみならず、所管である文科省からも発信が必要だろう。

大学といえば、認知度向上のために大学法人からの設立が必要という意見は少数だった。

これは看護医療系はもちろん、近年では例えばパイロット養成の学科が設立されているように、大学教育が職業教育化するようになってきたことが背景にあるからではないか。また、大学側にしてみれば、高等教育市場も飽和状態の中、専門職大学を別途新たに追加で設立するのは簡単な話ではない。専門職大学は、定員は多く設定できないし、実務家教員の確保や臨地実務実習をはじめとした教育課程を策定する必要があり、通常の大学設置認可申請に比べても多大な時間と労力を要する。それなら現行の大学制度下においても職業教育が自由にできるのであれば、わざわざ専門職大学を設立(専門職学科を含む)するのはメリットが少ない、という受け止め方を既存の大学法人はしているのではないか。

そうなると、専門学校法人からの設立が続く限りはなかなか差別化も難しい?

むしろこのコロナ禍では、資格取得して就職というゴールが一緒であるならば地元から通えて短期間で経済的負担も抑えられ、資格も取れる専門学校の方が需要は生じているのかもしれない。ただ、資格という点で言うと、例えば法科大学院に行くことで司法試験予備試験が免除になるようなメリットが専門職大学に行くことで得られるなら、それが既存の大学や専門学校との差別化に十分なり得る。専門学校や大学での科目免除はないが、豊富な臨地実務実習に裏打ちされた技術と知識を持つ専門職大学は国家試験の一部が免除になり、その結果合格率も高まるということになればわかりやすい。あとは先程話した企業直結型のプログラムの2本を柱にすれば、まさに専門職大学に行かないと享受することができないメリットとなり、差別化にも認知度向上にもつながってくるのではないだろうか。

コンテンツ教育学会主催・本紙連動企画
「専門職大学シンポジウムVol.9」初のオンライン開催!

◆テーマ:
「高校教員400名アンケート分析による専門職大学への進路指導の実態-2021年度版-」

◆日時:2021年3月18日(木)14:00-16:00(予定)

◆参加(視聴)費:無料

◆視聴方法:ビデオ会議システム「Zoom」

◆定員:100名

◆参加お申し込み:コンテンツ教育学会のWebサイトから2月上旬より受付予定
http://cc-ra.jp/