【大学ism】静岡産業大学|大学Times

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大学Times Vol.39(2021年1月発行)

【大学ism】静岡産業大学

あらゆるものがネットでつながるIoT(Internet of Things)の普及やAI(人工知能)等の技術革新の進展は、産業構造や人々の働き方、ライフスタイルなどを変化させ、さらに、世界規模で広がった新型コロナウイルス感染症によって、その変化が加速している。環境の変化が早く、将来予測が困難な“未来の社会”。そこで活躍できる人材育成に向け、大学でのキャリア教育では何が求められるのか。特徴的なキャリア支援で地元から厚い信頼を得ている静岡産業大学の池ヶ谷雅一キャリア支援課統括課長に、これからのキャリア教育への想いや取り組みについて話を伺った。

「就職」はゴールではない。自らの未来を見据え、行動できる力を身につける

静岡産業大学のキャリア支援課では、「就職をゴールとせず、社会に出てからも成長し続ける人材を育てる」ことを目標に掲げています。

これまでの大学におけるキャリア教育は、“日本型雇用システム”の影響を受けてきました。新卒で入社した企業でキャリアを終える“終身雇用”が一般的であった時代では、入社すれば社員教育を受けられ、企業が敷いたレールに乗って定年まで働くことができたため、大学生にとっての最大の関門は“入社試験”でした。

しかし、日本型雇用システムは、バブル崩壊を境に衰退していきます。少子高齢化による人手不足と景気低迷による業績悪化などで企業は人材育成に余裕がなくなり、賃金制度や待遇なども個々の能力評価や成果主義へとシフト。そして、多様な“働き方”が生まれるとともに、働く側の“働くこと”に対する意識も大きく変化していきました。

“未来の社会”を考えたとき、地方創生、人生100年時代、AI(人工知能)、Society5.0など、次々と新しいキーワードが生まれているように、これからの若者に待ち構えているのは“予測不可能な社会”です。環境の変化が早く将来予測が困難な社会では、絶えず変化する状況にあわせて必要な能力、態度、経験を積み上げていく必要があります。つまり、“常に学び続けようとする姿勢”が求められるのです。学生には自分らしい人生を歩んでほしい。そのために、まずは自分にあった企業選びができる力を身につけた“自立した学生”の育成を目標にキャリア支援を行っています。

大学の規模の小ささが強み。全学生対象の面談で、個々のニーズを収集

本学は磐田市と藤枝市にキャンパスがあり、収容定員は全体で2,000人弱です。設置学部は、経営学部と情報学部、そして、2021年4月にスポーツ科学部が磐田キャンパスに開設する比較的規模が小さい大学です。キャリア支援課は、この規模の小ささを“強み”と捉え、学生との距離の近さを生かした支援を心掛けています。ただそれは、手取り足取り教えるような学生を甘やかすものではありません。学生一人ひとりの性格や志望をよく知った上で、学生の行動を後押しするためにアドバイスを行うなど、「程よいお節介」的なものです。

キャリア支援教育では、「キャリア教育」と「就職支援プログラム」を軸に置いています。1年次後期に開講するキャリアの授業で自己分析を行いながら、徐々に学生自らの仕事観を醸成します。2年次には業界・企業研究を深めるだけでなく、学生全員がキャリアカウンセラー資格を有したスタッフとの面談を実施します。

面談時間は一人あたり50分程度。前期と後期の年2回実施し、学生の状況や志望などを聴きながら、個々の将来目標にあわせて資格取得講座、ボランティア、海外留学などの活動(キャリア支援実践プログラム)を紹介します。そして、比較的時間の余裕のある2、3年次のうちに多様な経験を積むようにうながします。

「行動に移して実際に体験しなければ、自分のものにはならない」という考えのもと、学生がアクションを起こせるタイミングを見計らって“きっかけ”になるものを提示し、学生の背中をほんの少し押す。とても些細なことですが、これが学生にとって重要な岐路になることがあります。こうした支援が行えるのも学生の顔と名前が一致できる小さな規模の大学ならではです。

コロナ禍だからこそ取り組める活動を。学生によるオンライン企業説明会を企画・運営

また、本学は、静岡県内の産業界、行政、地域住民などの支援によって誕生した経緯から“静岡県や地域社会のために必要な人材を育成”することを目指し、地域や企業との連携を積極的に行っています。

例えば、今年度は藤枝市産学官連携推進協議会(事務局:静岡産業大学)と連携し、「ふじえだWeb企業説明会・交流会@Zoom」を開催しました。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、就職活動のオンライン化が急速に進み、学生と企業の“マッチング”が喫緊の課題になる中、これを解決するために、オンライン会議システムZoomによる企業説明会を企画。中心となって活動したのは地元の大学生で結成されたプロジェクトチームのメンバーで、本学の学生5名、静岡理工科大学の学生2名、静岡県立大学の学生1名の合計8名でした。6月から四ヶ月をかけて議論を重ね、企業への企画提案や学生たちへの告知などを行いました。

大学での講義がオンラインになり、プロジェクトチームも全員が集まって対面による議論はできませんでしたが、ZoomやビジネスSNSとして活用されているSlackを駆使しながら話し合いました。また、参加企業に対しては、プロジェクトチームの学生が企業担当者にZoomの基礎操作方法を説明し、オンラインを使って就職活動をする際の学生と企業側の課題などを提示しながら就活生が見たくなるコンテンツについて提案するなど、参加しやすい環境づくりも心掛けました。

10月25日のイベント当日は14社の地元企業と約120名の学生が参加し、プロジェクトチームの学生が提案したクイズ形式の業界紹介や働く人たちの温かさが伝わるコンテンツなども用意され、オンラインの強みが活かされる交流会になりました。

新時代を見据え、産学官連携で“豊かな未来”を創造

オンラインを使った連携活動を通して見えてきたことがあります。それは、地元企業によるオンラインを使った採用活動に対する“温度差”です。

新型コロナウイルス感染症拡大によってスタートしたオンラインを利用した就職活動は、コロナ収束後も主流になっていくと予想されます。特に、新卒の採用活動において、オンラインに対応できた企業とそうでない企業では、母集団形成や内定獲得に差が出始めています。地方の中小企業はそのようなオンライン化の波に乗り切れない懸念もありますので、産学官が連携して地元企業のオンライン採用サポートを行う必要があります。

そして、もう一つ大切なことは、学生の“健全な労働観の醸成”です。今回のようにコロナ不況で就職活動が苦しくなれば、十分な企業研究をせずに安易に就職先を決める学生も少なくないでしょう。

そもそも“働くこと”とはどういうことでしょうか。働くことはお金を稼ぐだけでなく、世の中の役に立つために行われる活動でもあります。役に立つためには、その時代にあわせて必要な技能やサービスなどを磨く必要があり、だからこそ、社会人になっても“学び続ける力”が必要なのです。

2月23日には、高校生、短大生、大学生を対象に「働くってなんだろう?~自分の将来をイメージする1日~」と題したセミナーを産学官連携によって実施します。“働くことに対してポジティブに向き合えたら、きっと未来は豊かで楽しいものに違いない”というのがイベントのコンセプトです。働くことを前向きにとらえるための心の醸成はとても大切です。これからの社会を背負う若者たちが“豊かな未来”を想い描けるように、大学でのキャリア教育も進化する必要があると感じています。