【データサイエンティスト特集】スペシャルインタビュー データサイエンティスト協会|大学Times

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大学Times Vol.41(2021年7月発行)

【データサイエンティスト特集】スペシャルインタビュー データサイエンティスト協会

【データサイエンティスト特集】

大学教育における「文理融合」が求められて久しい。その背景には日常生活のIT化が進み、企業においては蓄積された数多のデータを活用した、新たな商品・サービス開発という喫緊の課題がある。その際必須となるのがデータサイエンスであり、2000年代以降の新しい職業として「データサイエンティスト」が登場した。現在、日本をリードする各企業ではデータサイエンティストがどのように活躍し、今後の人材育成に期待しているのだろうか。(一社)データサイエンティスト協会の宮腰卓志氏、原野朱加氏に話を伺った。

一般社団法人データサイエンティスト協会

2013年設立。126の企業・団体・大学で構成し、新しい職業「データサイエンティスト」の役割やスキル、これからの使命などを定義し、提示することを目的としている。今年秋からは「DS検定」が始まり、データサイエンティストの職業としての定着、普及、クオリティの認定を担っている。

数理計算やプログラミングだけでなく
データから「意味を考える」

データを取り扱う職業には、保険会社のアクチュアリーやコンピュータサイエンティストなどが知られているが、データサイエンティストとはどの点が異なるのだろうか。データサイエンティスト協会理事で博報堂DYメディアパートナーズの宮腰卓志氏は、次のように述べている。

「アクチュアリーやコンピュータサイエンティストも広義にはデータサイエンティストに含まれる職種です。アクチュアリーは保険数理を用いて、保険料率と保険金額を算定します。コンピュータサイエンティストは、より高速に計算ができるアルゴリズムの開発や、データベースやネットワークのシステムを構築します。具体的には、ガスなどエネルギー消費量の予測や、車の自動運転でより安全な経路の探索などにも用いられ、サービスに適用しています。

そして、こうした予測モデルの「意味を考えること」も重要な役割のひとつです。予測モデルが、社会にとってどんな意味があるのか、誰の困りごとを解決するのか、ソーシャルイシューや企業の課題解決を考えていきます。データサイエンティストとは①ビジネス力、②サイエンス力、③エンジニアリング力の3つを兼ね備えている人を、「真のデータサイエンティスト」と当協会としては捉えています。平たく言えば、「計算できるだけではだめ、プログラミングが書けるだけではだめ、人や社会にどう役立つかを併せて考えられなければだめ」ということです」

個々の強みを持ったデータサイエンティストが
コラボレーションして課題解決

また、同協会スキル定義委員で野村総合研究所の原野朱加氏は、次のように述べている。

「ただ、現実的にはすべてのスキルを100%バランスよく持っている人材は少なく、現場ではいろいろな強みを持ったデータサイエンティストがコラボレーションしながら、データによる課題解決を行っています。仕事のフェーズによっても求められるスキルが異なるので、メンバースキルをバランスよく配置することも重要です。その3つをすべて持っている人が理想ではありますが、今はまだ非現実的な状況です。そこで、いろいろな強みをもったデータサイエンティストがコラボレーションすることを前提として仕事をしています」

リベラルアーツの拡張と捉える
データサイエンス・リテラシー教育

さらに宮腰氏は、リテラシー教育の重要性を次の ように述べている。

「われわれは「リベラルアーツの拡張」だと思っています。背景には、自動車、無線通信、冷蔵庫、TVなど今の生活のほとんどがAI、ネットワーク、データがないと動かない世の中になり、その中で自分のデータをいかに守るかが重要になりました。また紹介される膨大な記事のどれが正しいのかを判断するなど、これからデータに対するリテラシーがますます必要になるのです。と同時に、われわれデータを生み出す側、作る側の進化も必要になり、マインドや倫理が求められています」

2000年以降、心理学では実験心理学や行動経済学に結び付いた統計や分析を使い、言語学や哲学でもデータサイエンスを用いた研究が進んでいるという。世の中から数多のデータが取れ、コンピュータのリソースも増えることで新しい分析が進み、文理融合が加速した。データサイエンスは文理融合の基礎教養であり、身に付けた人材が人文科学や社会科学の課題を対処する世の中になりつつある。今や子どもたちは毎日YouTubeを視聴し、グーグルで検索した画像や情報を事実だと認識する世の中となったが、これからは企業活動に携わるすべての人がデータサイエンスを身に付けることを、国や産業界も嘱望しているのである。

スマホの“自撮りアプリ”もデータサイエンス
好きな分野から学びの扉をひらく重要性

データサイエンティスト協会スキル定義委員会では、子どもや教員向けのデータサイエンス体験プログラムを制作し、普及活動を行っている。

「高校生などは、日頃当たり前に使っているものを通じてデータサイエンスに触れてもらうと良いと思います。たとえばスマホの自撮りアプリの中身は、データサイエンスのエッセンスが詰まっています。画像認識はAIデータを使って目を認識し、自然に大きくするといった仕組みから興味を持ってもらえればと考えています。また、広告や商品開発といった身近なマーケティングの領域でも、データを使うことでより良い広告を、より良い商品を作る取り組みが日夜行われています。日々の生活の中で、「これもデータが使われてるのかな?」と疑問を持つところから興味を持ってもらえればと思います」(原野)

数学は苦手?でも大丈夫!
これからデータサイエンスを学ぶ高校生へ

データサイエンスを学ぶために数学は避けて通れない。中には苦手という高校生もいるだろう。どのように向き合って学んでいけば良いのだろうか。

「データサイエンスの学び方はさまざまで、登山ルートがたくさんあるのと同じです。好きな分野から始めると良いでしょう。心理や歴史など文系の人は、実験心理学や計量経済学から人や社会への数学的アプローチを知ると第一歩を踏み出せます。デジタルアートもおもしろい入口になります。チームラボの作品はプログラミングで制作しています。音楽もDTMなど作曲ソフトはプログラミングです。私も数学が苦手でしたが、自分の好きなことを探求する中で、知りたいという好奇心から克服できました」(宮腰)

「データサイエンスの初歩的な手法の中には、中学で学ぶ二次関数と近い構造を持ったものもあり、すべて高度な数学力がなければできないわけではありません。また数学が苦手な人の一番の理由は概念的でイメージがつきにくいことだと思います。逆にデータに触れることで理解が深まり、数学を武器にできたら最高ですね」(原野)

データサイエンティストを育成する各大学では、どのように取り組んでいるのだろうか。次ページの電気通信大学・西野教授インタビューをご覧いただきたい。