【理工系大学特集】工学院大学|大学Times

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大学Times Vol.23(2017年1月発行)

【理工系大学特集】高校で学ぶ「物理」・「数学」が日常生活に
役立つ楽しさを知る

子どもの頃の自動車、電車、ロボットへの憧れから、より具体的な夢を叶えるために大学の工学部への進路がある。工学院大学は機械工学科だけで15の研究室を有し、それぞれ興味のある分野を追究できる。今回は自動車音響振動研究室の山本崇史准教授に、快適な走行のための自動車の音や振動の学びについて伺った。

実践的な教育から、新しい社会基盤を生み出す

1887年創立、東京都内に2つのキャンパスを持つ工学院大学は現在、4学部、15学科、全学生数6,000名余と工科系大学では大規模大学である。 その中で工学部では、機械・電気という社会の基盤となる幅広い工学領域の中から自分が選択した専門分野について基本となる知識と、それを実際の社会に役立たせる技術として応用する方法を学ぶ。優れたエンジニアになるためには、現実の工学的現象を正しく認識する観察力や分析力が不可欠となるため、実験・実習・演習などによる課題の解決を図る経験を通じてこれらの素養を培っているという。

また、ものづくりの現場へのインターンシップとしての参加や実社会で活躍している講師による特別講義を受けるなど、社会において果たすべきエンジニアの役割の理解を含む広範な知識を身につけることができる内容としている。

エネルギーと設計を究めた
機械をつくる

右記に紹介する自動車音響振動研究室が所属する機械工学科は、機械を「つくる」ために必要な、原理やメカニズム、材料、加工、安全性などを追究する。
まず1年次に物理、数学、さらに機械実習などを通し、ものづくりを学修。人間社会や地球環境に対する広い視野を養うと同時にこれから専門的な知識を理解するうえで不可欠な数学、物理学、情報処理といった基礎的な学問を徹底的に修得し、実習を通し、技術者としての自覚と発想力を身につけていく。

2年次は力学を中心に機械をつくる基礎技術を学ぶ。材料、流体、熱に関する力学を学び、新しい機能や極限までの性能、そして高度な信頼性が要求される機械の設計を学修する。
さらに3・4年次に専門領域からエコエネルギーコースとメカノデザインコースを選択。研究室に分かれ、自ら選んだ課題を研究する。機械工学のエンジニアとして知と技を社会に還元する方法を見出していく。

工学部 機械工学科の学び

エコカーの向上と共に、求められるさらに上の快適な音と振動を追究

数学や物理から力学を学び、ものづくりへ

研究室での研究は具体的にどのようなものでしょうか。

自動車が出す車内で聞こえる騒音と車外で聞こえる騒音をいかに静かにできるか、また、エンジンやタイヤから響く振動をいかに抑えるかという研究を企業と共同で行っています。

先生は大学院修了後、ずっと大学で教えていらっしゃるのですか?

理工系大学特集

いいえ、前職は自動車メーカーで研究職をしておりました。さらに深く、幅広く研究をしたいと考え、また教えるという仕事に就くために工学院大学へ来ました。

昨今の電気自動車など騒音は解消されているのではないですか。

電気自動車はエンジンから発生していた音はなくなり、静かになりましたが、逆に今まで気にならなかったタイヤから出る音(ロードノイズ)が余計に目立ってしまいました。ハイブリットカーも低速ならばエンジン音が下がるので静かですが、スピードを上げるとガソリン車と騒音のレベルが変わらなくなってしまうのです。エンジンの音だけならば、マフラーで静かにする方法がありますが、その他の音や振動は車全体で解決しなくてはなりません。
この研究室では、吸音材や遮音材を合わせた防音材を使用した実験やコンピュータシミュレーションなどを使い、不快な音や振動をなくす技術を研究しています。

研究室のメンバーは何人ですか?また、進路について教えてください。

現在は4年生が9名、大学院生が3名です。学部生の内、毎年、約2、3割が大学院へ進学します。就職は自動車メーカーや部品メーカーなどへほとんど就職が決まります。

高校生へのメッセージがありましたらお願いします。

現在自動車が好きな学生が減っています。車、バイク、電車など乗り物にもっと興味を持ってほしいですね。工学部で学ぶということは、高校で学んだ数学や物理が興味の分野に使われ、力学を学び、ものづくりにつながっていくのです。受験で苦労した数学や物理がどう日常生活に関わっていくか、その楽しさを知ってほしいと思っています。

山本 崇史 准教授

工学院大学 工学部 機械工学科
山本 崇史 准教授

1996年 京都大学工学部機械系学科卒業
1998年 京都大学修士工学研究科機械物理工学専攻修了、三菱自動車(株)、日産自動車(株)にて研究・開発に携わる。
(独)宇宙航空研究開発機構客員研究員所属