【これからの日本を変えるこの分野】京都外国語大学|大学Times

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大学Times Vol.24(2017年4月発行)

【これからの日本を変えるこの分野 京都外国語大学】グローバル化社会で起きる問題を高度な語学力と社会科学的視点で解決に導く

国際観光文化都市である京都を舞台に、外国語教育を軸にしたグローバル人材育成に取り組む京都外国語大学。外国語学部のみの単科大学であった同大学に2018年度、新たに「国際貢献学部」の創設が計画されている。新学部の設立にはどのような背景があったのか、またその学部ではどのような教育に取り組み、どのような人材の育成を目指しているかを京都外国語大学 松田武学長は語っている。

世界が求める“知的チェンジメーカー”を育成

「国際貢献学部」設置の背景とは

世界が求める“知的チェンジメーカー”を育成

 京都外国語大学は、1947年の創立以来、外国語学部のみの単科大学であったが、現在の外国語学部国際教養学科を発展させて、2018年度に新たに国際貢献学部の創設を計画。時代のニーズに対応した人材育成の改革に積極的に取り組んでいる。同大学の教育のベースにあり、かつ一連の改革の指針となっているのが「言語を通して世界の平和を」という建学の精神である。松田学長はこの理念に込められた想いについて次のように語る。

 「本学が設立された1947年と現在では時代的背景も国際情勢も大きく異なっており、その間にさまざまな社会的変化も起きています。当然“言語と平和”が指し示すものも変わってくるでしょうし、そうあるべきだと考えています。つまり、私たちにはこの建学の精神の中身を常に問い直し、時代のニーズに合ったものに作り直していくことが求められているのです」

 現在の国際社会が抱える課題を解決するために必要なものとは何か?そのためにはどのような人材育成が求められるのだろうか?このような問い直しを経て、現在、同大学が推し進めているのは「言語=外国語学習」「平和=社会科学の統合的探究」とする考え方を土台にしたグローバル人材育成である。その象徴として「国際貢献学部」の開設となったそうだ。

 現在の外国語学部国際教養学科を発展させて、新たに国際貢献学部を創設。国際協力コース、グローバルビジネスコースを擁する「グローバルスタディーズ学科」と観光政策コース、観光ビジネスコースを擁する「グローバル観光学科」の2学科の設立が予定されている。

学部・学科構成

専門科目を英語で学ぶ
グローバルスタディーズ学科

 グローバルスタディーズ学科の大きな特色は、英語で専門科目を学ぶこと。例えば政治学や経済学などの科目も英語で学ぶことで、地球規模の課題解決につながる幅広い社会科学系の知識や技法を身につけるとともに、海外の大学で学んでいるのに近い語学運用能力を修得することが可能になる。また、留学生も積極的に受け入れ、日常的に英語でコミュニケーションする環境を作る。

 国際協力コースでは政治学、国際関係論、国際法、人権、国際機構論などを軸に国家の単位を超えた人類共通の問題について理解し、その解決策を考え実践することができる人材を養成。

 一方、グローバルビジネスコースは、経営学、経済学、組織理論、統計学などを軸に経済社会の発展によって人類普遍の豊かさがどのように実現されるかを学ぶ。

「観光」を「多文化交流」ととらえるグローバル観光学科

「観光」を「多文化交流」ととらえるグローバル観光学科

 グローバル観光学科では観光学、統計学、政策科学、環境学、経営学、組織理論などを軸とした教育を提供。観光資源をプロデュースする力、地域を発展させる力、観光業の経営ができるなどを磨き、国内外の地域課題解決に貢献できる人材を育成する。

 観光政策コースは、文化政策として観光振興について学ぶコース。行政やNPO、観光系企業などで地域振興やインバウンド政策の立案などについて学ぶ。

 一方、観光ビジネスコースは、旅行会社やホテルなどの従来型の観光産業をはじめ、幅広い分野の企業で多文化間交流としての観光ビジネスを仕掛ける人材の育成をめざす。

国内外で地域課題解決に取り組む
「コミュニティーエンゲージメント」

国際貢献学部の教育コンセプト

 国際貢献学部の両学科において、人文科学と社会科学が融合した学びを「経験」の面から血肉化するのが、留学であり、コミュニティーエンゲージメント(コミュニティーとの連携・協働)である。後者は実際にコミュニティーに入り、教室で学んだ知識を活かしながら、地域の人たちとともに地域課題の解決に取り組むサービスラーニングである。グローバル観光学科では、京都という地域性を活かし、国内でも行うが、グローバルスタディーズ学科では欧米、アジアにわたる海外で行うことを構想している。

 「2年生の後半から3年生の前半くらいの時期に取り組むことをイメージしています。あるいはもっと早い時期に行って何度も経験してもいい。留学とは異なり、例えば現地の福祉施設などで活動することにより、学生はキャンパスの中だけでは得られない大きなものを感じとり、成長できるはずです。“語学+α”としての実践ではなく、“社会や地域のために何かをしたい。そのために語学を修得しなければ”というスタンスで取り組んでほしいですね」と松田学長は話す。

国内外で地域課題解決に取り組む「コミュニティーエンゲージメント」

 海外でのサービスラーニングは学生にとってハードルが高いチャレンジになるだろう。だからこそ、その経験は学生のモチベーションに強烈な刺激を与えることは間違いない。一連の教育を通して、国際貢献学部が育成しようとする“知的チェンジメーカー”は明日の世界を牽引する人材として大いに期待できるだろう。

日本のココが変わる

松田武学長

グローバル化の進展に伴い、ヒト・モノ・カネが自由に国境を越えて私たちの生活に影響を及ぼしている現在は、ビジネスにおいても課題が次々に生まれています。国際貢献学によって養われる力は、狭義の国際貢献・国際協力にとどまるものではなく、国内外で課題解決に取り組むすべての人に求められる力です。語学に加え、社会科学の技法も身につけることで、世界が求める“知的チェンジメーカー”を育てていきたいと考えています。

京都外国語大学 松田武(まつだ たけし)学長

大阪外国語大学外国語学部英語学科および米国ウィスコンシン大学マディソン校文理学部史学科卒業。京都大学大学院文学研究科修士課程を経て、米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院史学研究科で博士号を取得。大阪外国語大学副学長、大阪大学大学院国際公共政策研究科教授(2007年10月~)を経て、2010年8月、京都外国語大学・京都外国語短期大学学長に就任し、現在に至る。