【大学ism】学習院大学 学長インタビュー|大学Times

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大学Times Vol.26(2017年10月発行)

【大学ism】学習院大学 学長インタビュー

「学習院」は華族学校からスタートした官立の教育機関という歴史がある。近年、大学の社会貢献の必要性がますます強調される中、公のために奉仕するDNAを受け継いだ学習院大学が目指すのは、公共性の高い研究事業の推進や、公共意識を育んだ人材を全国へ輩出することにある。井上寿一学長にビジョンを伺った。

利便性の高い「オールインワンキャンパス」と
公共精神を育んだ建学の経緯

学習院大学は戦後の生まれで、学校法人学習院の中では最も新しい学校の一つです。現在は自然科学・社会科学・人文科学の3分野があり、学生総数8,000名台の中規模の総合大学です。各学部につながる大学院と、専門職大学院として法科大学院も設置しています。

また本学は「オールインワンキャンパス」でもあります。入学から卒業・修了まですべて東京・目白のキャンパスで学び、学業のみならず課外活動やサークル活動も含めたすべてを1ヵ所で行なっています。

以前に外部の専門家の方から「学習院は私立だが、国立のように公共精神をもって学問に取り組んでいる」と評価されたことがありました。学習院は公のために奉仕する官立学校だったという建学の経緯もあり、公共精神が本学のDNAとして今日まで息づいているのではないかと考えています。社会貢献は大学にますます求められる役割ですが、本学でも学生の公務員志望者が増加しています。

「超高齢社会の持続的な発展の条件」を
全学部で研究

昨年、文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」に本学が採択されました。超高齢社会を今後いかに持続的に発展させていくかを、自然科学・人文科学・社会科学の各分野から研究していくというものです。この研究も、成果を社会に還元するという意味において、公共性のある研究事業ではないかと考えています。

たとえば生命科学では、人間が100歳まで元気に過ごすべく、老化によって多くの人が痛める「ひざ関節の再生」について研究します。これを人文科学では「果たして100歳まで生きることに意味があるのか」という哲学的な視点で、長生きそのものの意義を問います。さらに社会科学では、人口減少が進む日本社会において、高齢者も社会の一員としてサポートを行うべきであるという「労働人口の問題」から研究するというものです。

全学部で同一の研究課題に取り組む場合、他の学問ではどのように受け止め分析されるのかは、お互いが知りたいことでもあり、闊達な議論も生まれる事でしょう。全学部で行き来のできる本学の「オールインワンキャンパス」は、学際的な研究に適した環境であると言えます。来年度からは全学部共通科目となり、アクティブラーニングによる授業もはじまります。この研究の今後の発展を強く期待しています。

同一学部の一般入試を2回受験できる
「コア入試」「プラス入試」を新設

本学では、大学入試センター試験を入試に利用しておりません。現在のマークシート式の試験では、真の学力は測れないと考えるからです。他方で多くの高等学校の先生方からは「学習院大学の一般入試は一度しかチャンスがないので、生徒に受験を勧めづらい」とのご指摘を受けることがありました。そこで来年度から、一般入試を従来の入試(コア入試)と新たに「プラス入試」という制度を加え、同一学部を2回受験できるように致しました。

高校生活を大事に勉強した生徒のための
一般入試

本学の入学試験は大学の受験予備校からも「私立大学にもかかわらず、記述式・論述式を含む内容の良問の試験で、採点も丁寧」という評価をいただいています。本学の入試の特徴は「高校できちんと勉強した人のための入試」です。昨今は入試制度が多様化され、中には高校の授業では必修とされていない“表現手段”などが評価の対象となるケースも散見されますが、本学で実施するのは、高校生活を大事にしてきた人のための一般入試ですので、どうぞ多くの高校生に受験していただきたいと思います。

上京学生には安心して暮らせる学生マンションと
100名に100万円給付の奨学金を用意

現在、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)出身の学生が全体の約80%を占めていますが、都内の大学もほぼ同様の割合のようです。本学ではこれを少しでも全国型に変えていきたいと考えています。そこで入学時の給付型奨学金と、安心安全を提供する学習院推奨専用マンション(数年後専用マンションに移行)を用意し、上京する新入生をサポートしております。

「目白の杜奨学金」は、入学前予約型の給付奨学金で、一都三県以外の一般入試受験生が対象となります。上京する場合、受験から新入学までに学費以外で必要な資金は最低で100万円程度と言われていますので、その負担を軽減したいというのが目的です(下表参照)。

奨学金

目白の杜の魅力をすべての受験生へ
入学者の空白県ゼロを目指す

本学では、地区入試も実施しておりません。検討を重ねた経緯はありますが、一昨年の入試時にアンケートを実施し、多くの受験生が「オープンキャンパスがきっかけで学習院を志望した」と回答していたことに着目しました。受験生にはまず、オープンキャンパスでこれから学ぶ本学の息吹を体感してもらい、本学で受験していただきたいと考えております。また卒業生に実施したアンケートでは、本学の志望順位が高い学生ほど、入学後も充実した学生生活を送れたという結果も得られました。現在は受験生に志望動機を少しでも高めてもらうべく、オープンキャンパスのバスツアーなども実施しています。

以上の取り組みにより、一都三県以外の受験生が増加し始めました。今後は入学者ゼロの県をなくし、学習院大学の理念をより広くご理解いただく努力を重ねて、社会に貢献する大学をめざす所存です。

学習院大学学長 井上 寿一(いのうえ としかず)

学習院大学学長 井上 寿一(いのうえ としかず)

1956年東京生まれ。
1981年一橋大学社会学部社会学科卒業。
1986年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。一橋大学助手を経て、1989年学習院大学法学部助教授。
1993年教授。法人理事、法学部長などを歴任。
2014年4月学習院大学長に就任。