看護・医療系大学特集スペシャルインタビュー
災害支援の医師が見た被災地での子どもたち
~NPO法人ピースウィンズ・ジャパン「空飛ぶ捜索医療団(ARROWS)」~
大学Times Vol.38(2020年10月発行)
看護・医療系大学特集
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2018年の西日本豪雨の時は岡山県倉敷市真備町で1か月間、災害支援を行いました。薗小学校に救護所を設けましたが、初めはどうしたらいいかわからなくて固まっていた避難所の人々に変化をもたらしてくれたのは、子どもたちが校庭でボール遊びをし始めたことがきっかけでした。楽しそうな様子を見た周りの大人もだんだん笑顔になり、私たちスタッフも少し笑顔になりました。災害支援者は笑ってはいけないという印象がありますので、子どもたちの笑顔に救われる場面は多々あります。
子どもが動けば大人も皆動く
避難所では段ボールベッドの組み立てなど、皆で作業を行わないとうまくいかないことがあります。その時はまず、子どもたちに声をかけて手伝ってもらうのですが、その様子を見た大人たちも「子どもだけにやらせてはいけない」と皆が進んで作業に参加します。このように、避難所生活では子どもたちが果たす役割の大きさを実感しています。
高校生だからできるチャレンジ
西日本豪雨の時は、岡山県総社市の高校生ボランティアが活躍しました。「高校生でも何かお手伝いできることはないですか」と片岡市長へメールしたことがきっかけで、その日の夕方には約50人の高校生が市役所へ集まりました。市長の返信後すぐにSNSで参加を呼び掛けて、避難所での夕食の準備などを手伝ったそうです。
大人になると、社会や人々のために貢献することに対してどこか「恥ずかしい」という意識が邪魔をするものです。しかし高校生にはむしろ「カッコいい」ことだと認識して即行動に移せるのは、近年の高校教育の大事さと成果を痛感しています。
次世代の医療を担う高校生へ
●医療従事者をめざすための心構え
子どものころボーイスカウトで教わった「備えよ常に」という精神が、今でも役に立っています。予想外の出来事に遭遇しても、フリーズしたりパニックを起こさないで対応する、そのための備えを常に持つ、ということです。そのためには心のキャパシティを大きくして、想像力を働かせることも大事だと思います。
●世界中どこへ行ってもニーズのある職業
医療従事者はどこに行ってもニーズがある職業です。宇宙に行っても、南極に行っても、災害現場に行っても、必ず医療スタッフが帯同します。私たちは、たとえ言葉が通じない地域でも外科手術を行うことが可能です。人間が活動する限り、いろいろなチャンスに恵まれる職業なのです。医療従事者は専門職ですので、活動範囲が限られているのではと考えがちですが、そんなことはありません。大学卒業後も常に自分に実力をつければ、活躍できるフィールドはさらに広がります。
●専門知識を生かして多様な医師・看護師に
今は私も病院勤務が主ではなくなりました。大学院で学びながら、NPOで災害現場の救助・救命にもあたります。医療の専門知識を、多くのチャンスに生かしながら日々活動しています。これからは、今と同じ価値観の医療従事者になることをめざすのでは、将来的につらくなるかもしれません。私たちは今、医療の専門知識や技術を使い診療報酬を得ていますが、この保険医療制度がいずれ変わる可能性があるからです。これからの医療従事者は、診療報酬以外のことでも収入を得るという道を念頭に置き、別の方法でも社会に貢献できるよう、多様な医師や看護師をめざしてほしいです。
そのためにも、チャレンジできるだけの知識や技術を常に身に付けておくことが大切です。