【看護医療系大学特集】教授インタビュー 聖路加国際大学 看護のリーダーを育成 臨床に強い多様性に富んだ看護職へ|大学Times

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大学Times Vol.42(2021年10月発行)

【看護医療系大学特集】教授インタビュー 聖路加国際大学 看護のリーダーを育成 臨床に強い多様性に富んだ看護職へ

2019年末から続くコロナ禍は100年前のスペイン風邪流行以来の大きな感染症と言われ、今もなお厳しい状況が続いている。医療従事者の心身のケアや学生の実習時間の確保など課題が多い中、現場ではどのような取り組みが行われているのだろうか。2020年に100周年を迎え、カリキュラム改変などを行い「臨床に強いナース」の育成に意欲的に取り組む聖路加国際大学の吉田俊子学部長に話を伺った。

聖路加国際大学 看護学部長・教授
吉田 俊子(よしだ としこ)

聖路加看護大学看護学部看護学科卒業 東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻博士後期課程修了(障害科学博士)聖路加国際病院勤務 宮城大学看護学部 学部長を経て、2019年4月より聖路加国際大学 看護学部長・教授/宮城大学名誉教授

チーム医療における看護職

現在のコロナ禍は、100年前のスペイン風邪流行以来の大きな感染症と言われ、医療機関としましても、どのように対応すべきか手探りで、今日まで奮闘してきました。看護職は人の健康をともに考え、育み、維持し、寄り添い、生活を大事にしてさまざまな形で健康に関わっていく職業です。また、残念ながらケアの甲斐なく亡くなってしまう方もいらっしゃいますが、それらの方々にとってその人らしさを大切にケアするのが重要です。

現在医療現場は「チーム医療」体制で動いています。患者さんやご家族もチームの一員です。チームのゴールはひとつ、みな同じゴールを目指します。チームの職種の違いによっては、専門分野での分析の仕方や物の見方が違う場合もあります。そこはお互い情報交換をし、共通言語を用いてさまざまなミーティングを行い、検討していきます。その中で看護職は患者さんの生活をしっかりとケアの中に組み込んでいきます。例えば、チーム医療の中では医師は治療、理学療法士はリハビリテーション、看護師は看護ケアを主として実施していますが、各職種はそれぞれの対応について十分な相互理解と連携のもと、医療を展開していきます。

各分野の専門性は非常に高いですが、情報の共有化を行うシステム導入によって各分野の専門性を活かした多職種連携は行いやすくなってきていると思います。このところは技術や医療機器がものすごく進歩して、AIなど他の分野と連携して考えていくことも増えました。より良いチーム医療を行うために、異業種の方に対しても看護の考え方やケアの仕方を説明できる力がとても重要になっています。

100周年・看護のリーディング大学として

2020年に100周年を迎えた聖路加国際大学は、100年間にわたりリーディング大学として「看護の質の向上」という責務を果たしてきました。私たちはキリスト教の大学ですので、愛の精神に基づいた対象理解を非常に大切にしています。それとともに「臨床に強いナース」を求めます。

そのため2020年度から新しいカリキュラム改革を行いました。多くの看護系大学が、講義をして演習をし、実習を3年次の後期にまとめて行うのに対し、本学では講義をして演習をし、実習するというサイクルを各領域で繰り返し行うことで、臨床に強いナースとなるための実習強化を実現しました。実習単位数は、選択科目を含めると他大学の1.5倍にもなります。ほとんどの科目でアクティブラーニングを採用していて、グループワークを通して一つの症例や事案を練り上げていきます。座学で講義を聴くだけで答えを出すのではなく、自分で考えて発言をしていくような講義や演習の時間を多く取り入れています。コロナ禍では実際に集まって議論することは難しくなりましたので、リモートで続けてきました。さらに、学生支援の一環として図書館とラーニングコモンズも整備しており、医療や看護に関する文献を中心に76,000冊と3,000誌を所蔵し、電子ジャーナルでは約8,000誌を見ることができます。また、市民と医療従事者がパートナーシップを組み、健康問題に取り組む「PCC People-Centered Care」という考えを教育の概念にしています。同時に多様性を磨くために国際化にも力を入れ、英語教育の充実と多彩な留学プログラムを展開しています。コロナ禍によって、WEB教材やWEBでの海外交流・教育プログラムも充実したことで、多様な人・文化・状況に触れる機会も増えました。

実習先の聖路加国際病院は、2019年にマグネットホスピタルにも認定されるなど、国内でもトップクラスの質の高いケアを提供しています。CNE(Clinical Nurse Educator)と呼ばれる、大学院修士課程で看護教育学を修め、優れた実践能力と研究能力を持つ看護教育のスペシャリストが在籍しており、高品質の実習が可能となっています。

医療従事者の心身のケアも大切に

長引くコロナ禍では看護職や医療従事者の心のケアもとても大切にしなくてはなりません。このことは医療機関も非常によく考えていて、ナースとマネージャーが密に連携し、辛そうなスタッフに早めに声をかけられるような環境作りも浸透してきました。本学ではアドバイザー制度を採用することで、卒業まで学生1名に対し2~3名の教員が担当で学業や就職の相談にのり、連絡を取り合うことで安心を提供しています。就職後は、医療の現場は本当に厳しい状況が続いていますが、夜勤に入る時期を遅らせてもらうことや、先輩が一緒についてくれる期間の延長、研修に厚みを持たせるなど、受け入れ先の病院の協力もあり、状況に合わせて柔軟な対応がなされています。

看護職を目指す高校生へメッセージ

看護職は医療施設のみではなく、地域の保健・医療・福祉のさまざまな場で看護の仕事をしています。「人が好きで、人の健康を守っていきたい」と考えている人にはとても向いていると思います。色々な学びもあり、素晴らしい職業ですので、ぜひ看護職を目指していただきたいと思います。ご自身の可能性というものは大きく広がっていますので、どうだろう、と思ったら自分にブレーキをかけずに多くの選択肢を考えていくことも非常に大切だと考えています。