【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)|大学Times

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大学Times Vol.44(2022年4月発行)

【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)

日本初の4年制リベラルアーツ・カレッジとして献学(建学)された国際基督教大学(ICU)。文理の枠を超えて学ぶカリキュラムを、日英バイリンガリズムの少人数教育により実践している。対話を重視して教員と学生が共に学び、人間にとって何が大切か、人としてどう生きるかを考え行動するICUのグローバル教育について、岩切正一郎学長に話を伺った。

国際基督教大学 学長 岩切 正一郎(いわきり しょういちろう)

国際基督教大学 学長 岩切 正一郎(いわきり しょういちろう)

1959年生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修卒業、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻修士課程修了 (M.A.)、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻博士課程満期退学、パリ第7大学テクスト・資料科学科第三課程修了 (DEA)。
1996年国際基督教大学教養学部助教授、同教授、同アドミッションズ・センター長、同学部長を歴任。2020年4月より現職。専門はフランス文学、演劇。蜷川幸雄演出作品はじめ戯曲翻訳を多数発表。2008年第15回湯浅芳子賞(翻訳・脚本部門)受賞。

対話の大切さを学び
知識を自分の中に位置付ける

ICUでの学びの根底にあるのは、ディスカッションを中心とした「対話」の精神です。対話を通じて、お互いの価値観を認め、人にとって何が大切なのかを考えて、多面的な視点から物事を捉える力を学生には身につけてほしいと考えています。

教員が知識を伝達し、学生はそれを受け取るだけでは、卒業後その知識が通用しない世の中になった時に適切な判断ができません。教員の知識を鵜呑みにせず、自分で考え、自分の中でどう位置付けるかが大事であり、対話によって自分の持っていた固定観念を崩し、再構築する過程こそが、大学に必要な学びです。社会に出て、ある状況に直面した際に、正しい情報を収集して、自分で考え、正しい方へ導くことのできる力を持ってもらいたいです。

ICUの授業では対面形式でもオンラインでも、「対話を重視する」という本質に変わりはありません。根本の教育理念が明確であり、オンラインでも教育の質を落とすことなく、授業を実施してきました。「対話」は、同じ時間を共有することが最も大切です。コロナ禍で留学生の入国が制限されている間は、海外在住の留学生は地域によって昼夜逆転の時差に苦労しながらも、皆が同じ時間を共有して学んでいました。

正解のない問いから教員と学生が
「共に学ぶ」重要性

ICUでは「対話」のひとつとして、授業の度に学生から教員に対し感想や疑問をフィードバックする「コメントシート」の文化があります。教員はコメントによって自分の授業内容が学生にどのくらい伝わっているのかを確かめるだけでなく、学生の多様な疑問から新たな気づきを得ることも多いのです。大学の授業は、一つの正解を求めるものではありません。正解のない問いに対し、教員と学生が対話を重ねながら、どのように解決していくか、そのプロセスを「共に学ぶ」という側面があります。

「人間にとって何が大切か」をまず考え
多面的な視点から課題解決に取り組むグローバル人材

「グローバル人材」とは、単に英語を使って海外で仕事をする人のことではありません。貧困や格差、環境問題など社会の抱えるさまざまな問題の構造を理解した上で、多面的な視点をもって、皆にとって何が大切か、皆にとってよい解決策を模索できる人と捉えています。ある人にとっては良い解決策であっても、その結果不利益を被る人がいれば、皆にとって良い解決策とは言えません。ICUの学生には、学問の専門性とともに、分野横断的な視点、心の持ち方を学び、世界中を対話の相手として尊重できる心を育んでほしいです。
そして、グローバルな課題にも、地域社会の課題にも同じ姿勢で取り組むことが大切です。

学生時代に「人としてどう生きるか」
考える機会を持つ

ICUのキャンパス内では日々の授業や寮生活など、自分とは異なる背景を持つ人と共に学び活動することで、グローバルな視点を養うことができるでしょう。また、ICUではさまざまな留学プログラムを提供しています。学びと暮らしの経験から、「世界の人は隣人である」という肌感覚を身につけます。学生という保証された身分での海外生活は、自分自身と向き合い、一人の人間としてどう生きていくか、その土地の風土を経験しながら考えることができる貴重な時間です。これは大学卒業後にビジネスパーソンとして、海外へ赴く時には得られない経験となります。

コロナ禍で留学生の入国が制限されてきましたが、ICUではポストコロナに向けて、海外大学との新たな提携づくりを進めています。世界中の大学と知の普遍性を共有し、同じ基準でつながっているという環境で、学生は世界と繋がっていることを認識できるはずです。これから入学する高校生の皆さんは、世界共通の「大学」という共同体に身を置き、世界基準を身につけるという意識を是非とも持ってもらいたいです。

専門の異なる学生や留学生と対話を重ね
新たな自分を発見するICUのリベラルアーツ

近年は国際教養やリベラルアーツ学部を総合大学の一学部として設置する大学も増えてきました。しかし、ICUは教養学部一学部の中に31のメジャー(専門分野)があり、大学全体でリベラルアーツ教育を実践しています。学生は入学後の2年間、人文科学、社会科学、自然科学からさまざまな分野を学び、それぞれの分野の専門家である教員と対話を重ねた後にメジャーを選択することができます。新たな関心を見つけたり、関心がより絞られたり、入学時の希望から実際に異なるメジャーを選択して卒業する学生も少なくありません。

一般的な日本の大学では、同じ関心を持ち、同じ分野を専攻する人と共に学びます。しかしICUでは、専門が異なる学生と共に授業を受ける機会も多くあります。一つの事柄について、異なる思考や方法でアプローチする学生と共に対話を重ねることで、「自分とは違う」世界が見えてくるようになります。

高校生までとは違う見方で、国際的な視野の中で受験勉強から解放され、自分を解放し、自由に学ぶことができれば未知の自分に出会うことができるかもしれません。自分の可能性を見つめ直し、自分自身を再発見するプロセスが、ICUのリベラルアーツにはあります。自分の価値を自らの手で見出すことができれば、卒業後には人との接し方や世界の見つめ方も深さと広がりを増していくでしょう。

ICUの未来を照らす新校舎オープン