グローバル系大学特集学部長インタビュー
世界の“いま”を理解して未来をどう変えるか考え動く。GLAがめざす平和のためのグローバル教養とは
~神田外語大学~
大学Times Vol.44(2022年4月発行)
グローバル系大学特集
神田外語大学グローバル・リベラルアーツ(GLA)学部は昨年4月、コロナ禍の中での船出となった。1年次前期の必修カリキュラム「海外スタディ・ツアー」は現地留学が叶わなかったものの、合宿によるオンライン留学として実施。世界情勢が緊迫する昨今、平和のためのグローバル教養をどのように推し進めていくのだろうか。ロバート・デシルバ学部長に話を伺った。
神田外語大学 副学長/グローバル・リベラルアーツ学部長 ロバート・デシルバ
米ニューヨーク出身。ジョージタウン大学で日本語を専攻。卒業後、外国語指導助手(ALT)として来日。一時帰国しミシガン大学大学院とフィンランドのユバスキュラ大学で言語学を学び再来日。神田外語大学開学の1987年から教壇に立つ。専門は応用言語学。神田外語大学副学長。2021年4月より現職。
4カ国・地域を4週間にわたりオンライン留学
1年次前期に「海外スタディ・ツアー2.0」実施
本来であれば入学直後の6月~7月に、4カ国・地域(リトアニア、インド、マレーシア・ボルネオ・エルサレム)の中から希望する国・地域を学生全員が選び、1カ月間留学する予定でした。しかしコロナ禍で海外に行くことができず、4カ国・地域を1週間ずつ、4週にわたりオンラインで留学を実施しました。前半2週間は福島県の国際研修センター「ブリティッシュヒルズ」に合宿し、後半2週間は幕張のキャンパスに戻り、新しいコンセプトの専用教室「GLACommons」(写真A参照)で実施しました。
写真A
●1週目 リトアニア
※1週目の土曜日には双葉町の東京電力福島第一原子力発電所を見学
●2週目 エルサレム
●3週目 インド・プーネ
●4週目 マレーシア・サラワーク(ボルネオ島)
入学間もない学生たちは「海外スタディ・ツアー2.0」に参加して、高校とは違う「これが大学の学びだ」と実感したと思います。また、英語での授業や海外の学生との交流を通じて、いまの自分の英語力も自覚できたでしょう。オンラインでも4カ国・地域の現状を目の当たりにして刺激を受け、世界の見方が変わり、視野が広くなったのではないでしょうか。
今冬リトアニアでの研修が実現
帰国直後にロシアのウクライナ侵攻が勃発
今年2月に希望者のみで1週間、リトアニアへ研修に行くことができました。実際に街を歩き、見る。カウナスの杉原記念館(杉原千畝が執務と居住をしていた旧日本領事館)も見学し、独立記念日にも遭遇(写真B、C参照)しました。この日はリトアニアの人々にとって特別なものだったはずです。リトアニアではその歴史を学ぶのがテーマとなっていましたが、見学したKGB博物館では旧ソ連の諜報組織の影響力を垣間見ることができ、国際貢献に関心を寄せる学生たちもオンラインでは経験できない空気を感じ取ったのではないでしょうか。「百聞は一見に如かず」です。訪れた第一の都市ヴィリニュスは、ベラルーシとの国境からわずか20㎞ほどの距離しかありませんので、独特の緊張感もあったことでしょう。帰国から3日後にロシアのウクライナ侵攻が勃発。程なく直行便も停止となりました。帰国後の参加者調査では満足度94%となり、学生にとって「世界の現実」を目の当たりにした、貴重な経験となりました。
写真B
写真C
GLA学部は平和に貢献する学生を育成する学部であり、たとえば「戦争はなぜ起こるのか?」の疑問から始まる学びです。そのルーツを探るためには、歴史、宗教、政治、経済、文学、言語など多角的に背景を勉強しなければなりません。そのために幅広く学ぶリベラルアーツが必要となるのです。
この1年で学生の成長を実感
「GLA入門」という授業は、週ごとに違う先生が講義を行います。最後に学生が自分たちで計画してグループごとに発表を行いましたが、立派にやり遂げた姿にこの1年の成長を実感しました。1期生の「自分たちがGLA学部の歴史を作る」という意気込みが伝わり、達成感を得たのではないでしょうか。学生はみな世界にオープンでアットホームな面もあり、お互いが尊敬し、支え合っていい刺激を受けているようです。
英語力も伸びています。3年次後期にはニューヨーク州立大学の長期留学が控えているので、英語力の大切さをかみしめながら日々しっかりと勉強しています。
“日本は島国”ではなく対岸の火事と見過ごさない
グローバル教養に大切な「つながり」と「気付き」
この2,3年で世界が大きく変わってきています。パンデミックも戦争も、起こるとは考えなかったでしょう。世界の動きが早く、予測ができないからこそいまが大切であり、冷静に幅広く世界を見ることが必要なのです。その上でどうしたらいいか、自分は何か貢献できるのか。世界のどこかで起こることは対岸の火事ではなく、必ず日本にも影響が出るので、その前の段階から考えなければならないのです。GLA学部の必修科目「グローバル・ヒストリー」は、世界の歴史を“流れ”や“つながり”として覚えてほしいというメッセージでもあります。1期生は「国際社会で貢献したい」と考えている人が多く、これから研究テーマを決めて3年次後期のNY州立大学の長期留学、4年次のキャップストーン・プロジェクト(卒業研究)へと繋げます。グローバルの学びには“気付き”が不可欠です。歴史の流れの中から問題点や原因に気付き、解決策を一緒に探し出して いきます。
高校生が国際社会に関心をもったら先生や保護者は一緒に考えるサポートを
「将来は世界中を飛び回って活躍したい」という高校生に、もしも「危ないからやめなさい」とたしなめる先生や保護者の方がいたら、その前にニュースや新聞などで世界の動きを一緒に見て、是非話し合っていただきたいのです。その理由は、世界の動きがわからなければ将来の計画が立てられないからです。それは、いまの時代にパンデミックが起こり、世界中の観光産業が急激な斜陽になると誰も予想しなかったことでもわかります。GLA学部ではグローバルに考え、将来に備えるためリベラルアーツを学ぶのです。
職業観を養い なりたい自分を発見
「キャリア・メンター制度」で全面サポート
入学直後はまだ、なりたい自分が就く具体的な職業のすべてを知りませんので、GLA学部では時間をかけて職業の世界を学びます。2年次からは「キャリア・メンター」がスタートします。1年間、職業現場にいる人(メンター)とセッションを重ね、一緒に「めざす自分」を見つけます。また日本の大手商社で活躍したキャリアをもつ宮内学長も講座を担当し、国内外で活躍するゲストスピーカーを招いて、講義を行います。グローバルキャリアの出口の広さを知り、職業意識をもった上で、NY州立大学の長期留学で専門科目を学びます。
GLA学部は世界に対しての好奇心がまず必要であり、素晴らしい1期生が礎を築いています。外向きで「将来は世界の平和のために貢献したい!」という気持ちが強い高校生は、是非GLA学部をめざしてください。