【スポーツ科学特集】スペシャルインタビュー 一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)|大学Times

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大学Times Vol.45(2022年7月発行)

【スポーツ科学特集】スペシャルインタビュー 一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA) スポーツツーリズム推進は国の政策 スポーツ科学を学んだ地方公務員の活躍に期待

2011年観光庁がとりまとめた「スポーツツーリズム推進基本方針」で掲げられた方針に則り、オールジャパン体制でスポーツツーリズムを推進する組織として、2012年一般社団法人としてスタート。2015年設置のスポーツ庁とも連携を深め、スポーツツーリズムによる地域振興に寄与すべく、スポーツ及び観光にかかわる多くの方々・地方公共団体の実務担当者が、スポーツを活用した観光まちづくり、大会・合宿の招致・開催、地域資源を生かした旅行商品化などに取り組む際に、JSTAがネットワークやノウハウを提供し、幅広く活用されることを目指している。

五輪やサッカーW杯は国主導の誘致
キャンプ地や単独の競技大会は自治体で動ける

東京五輪2020大会の事前合宿では、全国300を超える自治体がホストタウンとなり、世界の代表選手団を迎え入れ、もてなす予定だった。競技大会の事前合宿やスポーツ大会の開催は、準備段階から多くの「人・モノ・金」が動くという。地域振興を目的としたスポーツツーリズムは国の政策であり、観光立国を掲げる日本の一大産業に発展させることが命題となる。そこで、ノウハウやネットワークを活かして自治体とスポーツ団体、関連企業をマッチングさせ、関係省庁との橋渡しを行うのが(一社)日本スポーツツーリズム推進機構だ。地域スポーツ戦略ディレクターの藤原直幸氏は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了のエキスパートである。

「1970年代以降、プロ野球の春季キャンプを温暖な地域で実施し、熱心なファンや観光客が訪れています。90年代からはスポーツ団体のチーム合宿地として、涼しさや高地トレーニングのできる北海道や長野などが選ばれています。これもスポーツツーリズムのひとつです。世界三大スポーツ大会(五輪、サッカーW杯、ラグビーW杯)は実質、国(政府)主導で招致を行うので、自治体に決定権はありませんが、単独スポーツの世界大会や、2026年愛知県で開催予定のアジア大会などは自治体主導での誘致・開催が可能です」

スポーツ競技の「聖地」効果を期待し
各自治体が“聖地化レース”を展開

「大規模な大会を開催した自治体では、維持管理が難しいために使えなくなった一部の競技施設が問題になっています。大金をかけて設備を整えたのだから、レガシーとして活用し、地域振興に寄与しなければなりません。スポーツによる地域振興の施策「競技の聖地化」という流れは旧来からありました。秋田のバスケットボール、北海道・長野のスキー・カーリング、石川のトランポリンなど、その競技の強豪校や世界的に活躍する選手の出身地に由来するケースが多いです。凱旋試合を催せばその町が盛り上がり、競技者や観戦者も訪れて経済効果も上がるでしょう。茨城県笠間市のスケートボードのように、先に施設を整備して大会等を誘致するケースもあります。現在はボルダリングなどアーバンスポーツを中心に、各自治体が「聖地化レース」を繰り広げているようです」

スポーツの価値を高め
経済効果を上げる創意工夫が必要

「日本の地域スポーツは学校の「体育」が根本にあり、教育の一環として溶け込みました。部活動も含めて、スポーツを「する」こと、「みる」ことに対して対価を支払う文化が馴染んでいません。スポーツの価値を高め、いかに対価を支払ってもらえるようにするかを考えるのがマーケティングです。日本のスポーツマーケットはまだ大きいとはいえず、関係者の努力が必要です。今後の展開として、たとえば海外の富裕層向けの上質なツアーや、地理的には欧米から遠いアセアン諸国向けのスポーツ観戦ツアーなど、しっかりと対価を支払ってもらえるサービスの提供が求められています」

寿命を迎えた競技施設のリニューアルこそ
スポーツ科学を学んだ地方公務員の出番

2015年にスポーツ庁が開庁し、国民の健康とQOL(生活の質・満足度)をめざして、自治体は市民スポーツの振興が求められている。体育館やプール、競技場などを建設しても、維持管理のためにはあらゆる知恵を絞って運営する努力が必要だ。

「スポーツ施設の維持管理費用の捻出を、自治体は考えなければなりません。たとえばコロナ禍以前は、日本中で音楽イベントやコンサートが行われて活況だったので、スポーツ施設をその会場に貸し出すというアイデアもあるでしょう。しかし、多くの施設は昭和の時代に建設されており、スポーツをする人のための施設がほとんどで、観客を呼ぶための形になっていないのです。費用対効果が認められれば、施設の改修や建て替えができるかもしれませんので、たとえば大学でスポーツ科学やスポーツビジネスを学んだ自治体職員がいれば、エンタテインメントの要素を視野に入れたより良いスポーツ施設を作れるかもしれません。スポーツツーリズム推進には、公共施設や公共の場所(海、山、川など)の有効活用が必要です。そして、その活用には優秀な地方公務員の存在が必須となります。民間でスポーツビジネスに関わる職業はまだ限られているのが現状なので、大学卒業後に地方公務員としてスポーツに関わるといった道も選択肢のひとつとしてぜひ考えてみてください」