スポーツ科学特集スペシャルインタビュー
選手に寄り添いQOLを高める「スポーツメンタルコーチ」とは
~一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会(JSMC)~
大学Times Vol.45(2022年7月発行)
スポーツ科学特集
- 総合学問・スポーツ科学の“いま”と“未来”
- スペシャルインタビュー 味の素株式会社
- スペシャルインタビュー 一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)
- スペシャルインタビュー 一般社団法人日本スポーツアナリスト協会(JSAA)
- スペシャルインタビュー 一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会(JSMC)
- 教授インタビュー 早稲田大学
- 教授インタビュー 東洋大学
- 教授インタビュー 女子栄養大学
2011年鈴木颯人代表理事が起業。当時誰も使っていない「スポーツメンタルコーチ」という肩書き背負い、アスリートを支える黒衣として活動。2014年末から資格講座をスタートしライセンスを発行。卒業生が100名を超えた2019年協会発足。3つの事業である、ライセンス事業、マッチング事業、そして、オンラインコミュニティ事業を確立。スポーツを通じて誰もが笑顔で幸せな社会に少しでも貢献できるように日々活動している。
鈴木颯人代表理事
「金メダルを取ったけど幸せじゃない」心に寄り添う
鈴木颯人代表のスポーツメンタルに関する著書と出会い相談に訪れる人は、プロアマ年齢競技問わずいるという。「スポーツメンタルコーチ」は心を鍛えるイメージだが、そうではないようだ。
「スポーツをしているのに、幸せじゃない人が本当に多いです。競争が激化すると精神的に病む人が増えるということですが、スポーツの在り方を見直す必要があると思います。当協会ではオンラインコミュニティを運営し、あらゆる立場の方が参加します。いろいろな問題がある中で大事なのは、フィードバックが得られる環境をもつことです。選手やコーチ、父母、トレーナーなどが一堂に会し多角的な視点からディスカッションをすることで、自分事に置き換え他者理解のきっかけにもなります。今は指導者も、保護者も、トレーナーも忙しく、子ども一人ひとりと向き合いきれない現状がありますが、先ずは子どもたちと笑顔で接する大人を増やすことが大切です」
選手の6~7割は「人間関係が原因」の悩み
チームスポーツに限らず、個人競技でも人間関係が原因で苦しむ選手が多いという。
「一人のプロゴルファーには5人のスタッフが付き、チームで戦っています。お互いが正義を貫いて主張し、けんかになれば選手本人が不安になるのです。東京五輪2020大会の前は、7名の代表選手をサポートしていました。開催が1年延期になり、最後は開催も危ぶまれるなど前例のない出来事が続き、代表選手の心の負担は本当に大きかったです。結果を出すことも大事ですが、選手にどう寄り添い、QOL(生活の質・満足度)を高めたら良いかを考えています」
日頃から選手を観察し変化を見逃さない
「選手とのコミュニケーションで大事にしているのは、日頃から練習や試合にも足を運び、小さな変化を見逃さないことです。それ以外は、私自身のやり方にこだわりを持たないようにしています。選手の不安の原因は複合的な要素もありますので、たとえば栄養士やフィジカルトレーナーなどネットワークを生かして、スポーツ選手一人の人生を支えています。そんな気概を持ったメンタルコーチを増やしたいと思います」
スポーツ心理に興味のある高校生へ
「人間の本来持っている「人を助けたい」という気持ちを大事にしてほしいと思います。サービスとは、人々の悩みを解決するものです。その思いがあれば、スポーツ心理やメンタルコーチを将来の選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しいです。そして、色々な経験を通じて人間的成長を大事にしてください」
スポーツ科学に関連する分野は他にもある。TVドラマにもなった「スポーツマネジメント」や「スポーツ気象」、「アスリートビューティーアドバイザー」は、選手のメイクアドバイスから内面の変化を促し、自己肯定感を高める効果を狙っている。
スポーツ科学の“未来”は、早稲田大学、東洋大学、女子栄養大学の教授インタビューをお読みいただきたい。