スポーツ科学特集教授インタビュー
アスリートのパフォーマンスをより高めると同時に、一般の人々のヘルスプロモーションに貢献する研究や教育を目指す健康スポーツ科学部
~東洋大学~
大学Times Vol.45(2022年7月発行)
スポーツ科学特集
東洋大学が、ライフデザイン学部と食環境科学部の一部を改組改編した、健康スポーツ科学部を赤羽台キャンパス(東京・北区)に設置する予定だ。日本でも数少ないスポーツと栄養の融合教育研究体制を構築した、健康スポーツ科学部の魅力を学部長就任予定者の齊藤恭平教授に伺った。
東洋大学(現)ライフデザイン学部健康スポーツ学科
教授 齊藤 恭平(さいとう きょうへい)
(2023年4月より健康スポーツ科学部学部長就任予定者)
東洋大学教授。順天堂大学大学院体育学研究科修了、博士(医学)。1986年順天堂大学体育学部健康学科助手(嘱託)。函館短期大学食物栄養学科を経て2007年より現職。専門は健康社会学、ヘルスプロモーション。行政の健康増進計画策定や健康づくり事業の支援がライフワーク。所属学会は日本ヘルスプロモーション学会、日本健康教育学会、日本保健福祉学会、健康社会学研究会など。
スポーツ健康分野と栄養分野をカバーする
新学部2つの学科を設置
東洋大学は、2023年4月に、東京都北区に所在する赤羽台キャンパスにライフデザイン学部をベースに2つの学部を新設します。1つは前回の大学Timesで紹介した福祉社会デザイン学部。もう一つが今回紹介する健康スポーツ科学部です。ライフデザイン学部の一つの学科であった健康スポーツ学科が健康スポーツ科学部になり、板倉キャンパスの食環境科学部の一部が合流。健康スポーツ科学部には、健康スポーツ科学科(入学定員:230名)と栄養科学科(入学定員:100名)の2つの学科が設置される予定です。
スポーツに力を入れて、近年、続々とアスリートを輩出している東洋大学
東洋大学は、スポーツにも力を入れている大学です。たとえば、2020東京オリンピック・パラリンピックには、現役の選手・卒業生合わせて15名、北京の冬季オリンピックに1名、さらに監督・コーチの立場で3名が参加していますので、合計19名がオリンピック・パラリンピックに関わったということになります。卒業生の大橋悠依選手は競泳200m・400m個人メドレーで金2冠を成し遂げていますし、池田向希選手は、陸上20km競歩で銀メダルを取りました。こうしたアスリートのパフォーマンスをより一層高めていくことも、健康スポーツ科学部で研究・教育を深めていく目的の一つです。それと同時に、一般の人々の健康にも貢献できるような研究や教育を実施していきます。
スポーツと栄養の融合教育研究体制の構築、健康寿命延伸研究なども推進
東洋大学の健康スポーツ科学部には、様々な特徴があります。一つは国内の健康スポーツ系総合大学でも数少ないスポーツと栄養の融合教育研究体制を築いたことです。この体制によりスポーツ科学と栄養の両面から、アスリートを支援する機能を構築していくことが可能になります。また、従来の古いスポーツ(体育)感とは異なる健康スポーツの多様性を創造していくことを掲げていることも、健康スポーツ科学部の新しさでしょう。
また、健康スポーツ科学部では、都市型健康スポーツ系大学の施設を活用した、地域の人たちにもより関わっていただけるように、開かれたキャンパスを目指しています。こうした開かれたキャンパスを通じて、東京都北区(高齢化地区)をフィールドとした健康寿命延伸研究なども推進していく予定です。
スポーツが持っている可能性を広げていく人財を育成する健康スポーツ科学科
健康スポーツ科学部健康スポーツ科学科では、健康問題をはじめとした、少子高齢化・人口減少社会におけるさまざまな課題について、スポーツを通じた解決策を探っていきます。機能的、社会・文化的な側面から健康スポーツ科学を学び、科学的思考を伴った専門的知識と技術を修得。健康づくり、アスリートのパフォーマンス向上、そしてQOL向上に貢献できる人財を目指します。
近年、スポーツはその概念と多様性を広げ、社会における役割・あり方を変化させています。健康スポーツ科学科では特に、スポーツを「みる」「する」「ささえる」人として社会に貢献し、スポーツの持つ可能性を広げていく人財に必要な専門的な知識・技能を身につけるカリキュラムを用意しています。またスポーツに関わるさまざまな職業についても、自らの興味・関心、学習の成果とキャリアの接続を図ります。
健康スポーツ科学科では、「ヒューマン・ボディ・サイエンス」「コミュニティ健康スポーツ」「学校保健・スポーツ教育」「健康・スポーツ文化」「アスレティック・コンディショニング」「コーチング」「スポーツ情報」「スポーツビジネス」の8つのテーマから「ユニット」を構成し、PBL(課題解決型学習)を展開します。「ユニット」はそれぞれの専門分野に紐づく科目・学習内容のまとまりです。関心、学習の成果とキャリアの接続を図ります。
スポーツ栄養科学領域において新しい価値創造を目指す栄養科学科
健康スポーツ科学部栄養科学科では、栄養学を基盤に、栄養科学とスポーツ科学の両面を探求することにより、食・栄養の観点からスポーツパフォーマンス向上や健康づくり、QOL向上に貢献する人材を目指すことができます。学際的な専門知識や技術を生かし、スポーツ栄養科学領域における新たな価値創造を図ります。大学院に進学し、さらに先端的な研究を進めることも可能です。
生物学、化学、生理学、疫学を基盤として、栄養学、食品衛生学、公衆衛生学、スポーツ栄養学、生活習慣病予防学、トレーニング科学など、関連・周辺領域へと学びを広げることができます。また、栄養学を基軸に栄養科学とスポーツ科学の両面を探求する学びにより、食・栄養の観点から人々の健康とアスリートのパフォーマンス向上、そしてQOLの向上に貢献する知識と技能を身につけることができます。
栄養科学科では「栄養疫学・栄養教育」「スポーツ栄養・生理学」「食理学」「生活習慣病予防学」の4つの学問領域をもとにした「ユニット」ごとに、PBL(課題解決型学習)を展開します。「ユニット」の概念については上記で説明した通りです。東京都北区などの行政や民間企業、あるいは研究機関などとの連携活動を通して、課題の分析や課題解決に向けたプロセスに触れることで、実社会における物事の考え方や講義との関連性について理解を深めていきます。
活発な国際交流や地域交流を目指す
サスティナビリティに配慮されたキャンパス
健康スポーツ科学部を設置する赤羽台キャンパス内には、日本の学生と外国の学生が共に生活する寮である国際交流宿舎(AI-House、2022年1月完成)があります。新しいモダンな作りの建物に共有のスペースがたくさんあり、日本の学生と外国の学生が交流できるようになっています。また、中庭は2層になっていて、学生たちの生活音が周囲に響かないように配慮した構造になっています。
現在建造中の建物は体育館棟、図書館棟、食堂棟などで、既に完成している建物と同様に、隈研吾氏の設計によるものです。キャンパス全体に一体感を演出します。体育館の屋根には鉄骨と木のハイブリッド構造である木屋根架講を採用しており、躍動感を演出するとともに、サスティナビリティにも配慮しています。