食物・栄養系特集学生インタビュー
栄養学と調理技術で人々の健康と豊かな食生活を支える管理栄養士をめざして
~女子栄養大学~

大学Times Vol.48(2023年4月発行)

【食物・栄養系特集】学生インタビュー 女子栄養大学

管理栄養士国家試験の合格者数全国1位を長年堅持する女子栄養大学。この春には創立者・香川綾をモデルとしたTVドラマが全国放映されるなど、揺るぎない存在感を示している。女子大への逆風報道も散見される中、実際に入学した学生はどのように日々学び、将来のキャリアプランを考えているのだろうか。栄養学部実践栄養学科3年生(取材時)の照内未悠さんに話を伺った。

照内 未悠さん
女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科
埼玉県浦和実業学園高等学校(中高一貫部)出身

「食べることが好き」の気持ちを生かし栄養士資格が取れる“いちばん大変そうな” 大学に進学

高校で進路を考える時期になり、子どもの頃から食べることが大好きで、その気持ちを生かして人々の健康に貢献できる栄養士の職業に興味を持ち始めました。志望校選びは、栄養士の資格が取れる大学を幅広く見て、入学説明会にも参加しました。その中の1校が女子栄養大学です。「プロフェッショナル科目群」という、6つの中から将来活躍したい分野を3年生後半で選んで究める学びが魅力的でした。さらに4年間で管理栄養士国家試験の勉強もあり、他大学よりも実習が多い点なども大変そうでしたが、「自分の将来のためにいちばん大変な大学へ行こう」と女子栄養大学一本に絞りました。高校は中高一貫校で、大学受験は一般入試を利用する人が多かったのですが、「やれることはなんでもやっておこう」と1年生から定期テストをがんばったこともあり、指定校推薦で入学しました。

美味しい学食と120人分の給食実習
栄大ならではのキャンパスライフ

入学してからは、まず学生食堂の美味しさに感激しました。メインが肉料理か魚料理か選べる定食ですが、「私もこんな美味しい食事を提供できるようになりたい」と思うきっかけになりました。栄大では管理栄養の勉強と同じように調理技術の大切さを学び、実習も多いのが特徴です。その中でも2年生のときにクラスメイト15人で取り組んだ、120人分の大量調理を行う実習が特に印象深く残っています。仲間と協力して安全で美味しい食事を作り、他のクラスの人や先生方が美味しそうに召し上がっているのを見て、とても嬉しく思いました。味についての感想もフィードバックしていただき、さまざまな意見を聞くことができました。家庭用の鍋とは異なり、大鍋での調理は加熱による水分蒸発が多いので、その分を計算して調理を行いますが、用意された白米が新米だったので、想定以上にご飯の水分が多くなったことも勉強になりました。
そして、この実習を通じて“多くの人に食事を提供することの楽しさ”を知った経験が、その後の研究室や就職先を選択する決め手にもなりました。

競技経験からスポーツ栄養に関心を寄せアスリート食堂の栄養管理を研究

3年生からは「給食栄養管理研究室」に所属しています。給食の運営について研究し、卒業論文は「アスリート食堂」をテーマに決めました。今年の夏には1カ月間、長野県湯の丸高原で高地トレーニングを行っている日本初の施設へ行き、実際のアスリートの食事や栄養管理について研究する予定です。実は私も高校までアーティスティックスイミングの競技に取り組んでいましたが、大会での競技中にミネラル不足から足がつり、溺れそうになった苦い経験があります。食事の失敗で辛い思いをするアスリートを減らしたい、という思いから、競技者のための栄養について深く知り、食を通じて尽力したいという希望を持つようになりました。

管理栄養士の仕事の広がりを視野に入れ就職活動に臨む

就職活動は受託給食会社の入社試験を数社受けました。社風だけでなく受託割合(社員食堂や病院など提供先の割合)が会社によって異なるので、自分の希望に合ったキャリア形成に繋がる経験が積める企業に入社したいと考えています。現状ではアスリート向けの施設が少なく、スポーツ栄養はより高度な知識や経験が求められるので、入社後すぐにスポーツ栄養に携われる職種の採用がほとんどありません。管理栄養士としての業務経験を積みながら幅広い知識や技術を体得し、いつかアスリートを支える専門職になれればと希望しています。

同じ研究室には、スポーツジムに入社して栄養アドバイザーとして活動したいという人もいて、同じスポーツ栄養を扱う管理栄養士でも、職域が広がっていると思います。

200人の同級生が同じ夢に向かって一緒に頑張れる栄大の強み

栄大は実習の授業が多く、より実践力を身に付けることができるのが特徴です。将来に役立つ知識と技術を体得できていると、就職活動を通じてより実感することができました。

さらに、グループワークの課題や国家試験に向けた勉強なども皆で協力して取り組むことや、毎年、管理栄養士をめざす同級生約200名が全員で学生食堂に集まる決起食事会があります。「同じ夢に向かって、ここにいる200人みんなで頑張ってきたんだ」という思いが湧き、さらにモチベーションを上げて試験勉強に臨んでいます。

栄養学は人の命に寄り添う学問
AI時代にもなくならないと自覚

栄養学は人が生きていくうえで欠かせない学問です。そのことに自覚を持ち、人々の健康と豊かな生活を支える人材になりたいと考えています。将来、今ある職業の多くがAIに取って代わると言われていますが、たとえば栄養や調理に関する数値計算などは、AIが行う方が便利になるかもしれません。しかし管理栄養士の仕事の中には、病院での患者さんへの栄養指導や、アスリートのコンディションに合わせた献立づくりなど、目の前の人の気持ちを読み取って寄り添うことが不可欠な業務があり、これはAIにはできない、人が行う仕事だと思います。

食べることやダイエットなど栄養に興味を持つ高校生へ

 食べることが好き、という気持ちを大切にしてほしいです。たとえば食べているお菓子のパッケージに書いてある、添加物を調べることでもいいと思います。私は高校生の時に家庭科の教科書や食品成分表をいつも見て、栄養への興味を広げる時間を持ちました。また、ダイエットしたい高校生こそ、栄養を学んでほしいと思います。ダイエット中でも食べなければいけない栄養素があり、バランス良く食べることが必要になるからです。栄養学は、自分の生き方だけでなく、その知識技能を活かして家族や友だちを助けられる学問です。しかも女子大での学びは同じ趣味や考えを持った友だちも多いので、とても楽しい大学生活を送っています。一緒に、たくさんの人の健康や幸せを支えましょう。