看護・医療系特集卒業生インタビュー
初年次の全寮制・全人教育で高度なチーム医療人を育成する~昭和大学~
大学Times Vol.49(2023年7月発行)

看護・医療系特集
- スペシャルインタビュー 東京都看護協会
- 卒業生インタビュー 昭和大学
- 学部長インタビュー 東京工科大学
医・歯・薬・看護・リハビリの医系総合大学の昭和大学は、初年次に全学部生が富士吉田キャンパスで寮生活を送り、チーム医療の基礎を体得する伝統がある。その学びは卒業後、医療現場でどのように生かされているのだろうか。今回は保健医療学部の卒業生2名に、初年次教育や寮生活の様子、医療人として職業観の醸成について伺った。

昭和大学保健医療学部 2018年卒業
看護師 小山 峻平さん(昭和大学病院勤務)写真左
理学療法士 鈴木 駿平さん(昭和大学江東豊洲病院勤務)
人と関わり 患者の近くで働く
医療人を目指せる大学へ進学
小山「高校生のときには看護師になりたいと思っていました。父が消防士をしており、職場見学で救急救命士の様子や地元の市民病院での職業体験を通じて、患者さんの近くで働ける看護の仕事をしたいと大学病院のある大学を受験し、昭和大学へ入学しました」
鈴木「山形出身で大学進学を機に上京することを決め、野球をやっていたのでスポーツに幅広く関連する仕事に就きたいと思い、いろいろ調べてみました。その中で人と関われる理学療法士という職業を知り、大学で国家資格を目指せる昭和大学へ入学しました」
全寮制の富士吉田キャンパスでの1年次
チーム医療の基礎を固め友情を育む
小山「男子棟(白樺寮・赤松寮)、女子棟(すみれ寮・百合寮)があり4人で一部屋、ほぼ24時間一緒に過ごしました。私の部屋は医学部、歯学部、薬学部の学生と看護学科の私でした。看護学科は4年制のため専門科目が5限目まであり、日が暮れても授業を受けていました」
鈴木「医学部2名と薬学部、理学療法学科の私の4人でした。学部が違っても同じ1年生なので、共通科目の授業は一緒に受け、選択科目やPBLの授業もありました。PBLはランダムに7~8名が1グループになり、チーム毎での施設体験や、出された課題(例:腐敗と発酵の違い)について各自が調べ、話し合ってまとめて発表しました。専門分野を調べて翌週の授業で共有するのですが、途中でも個人的に集まってディスカッションすることもありました。2~3週で1テーマを完結し、翌週メンバーが入れ替わります。1年間でほぼ全員がグループを組んで活動するので、1年生全員が知り合いになります。この授業を通じて参考文献の見つけ方などを学び、研究発表や論文制作にも役立ちました」
小山「インターネットで調べることは基本的にNGなのですが、わからない疾患についてネットの情報を鵜呑みにせず、正しいのかどうかの取捨選択ができるようになりました。
土日は授業が休みになり、新宿行きのスクールバスで東京に帰ったり、近くの富士急ハイランドへ遊びに行きました。課題のないときや授業終わりにはサッカーや野球をしたり、放課後のような時間もあって楽しかったです。初めは同部屋の人と仲良くできなかったらどうしようと心配しましたが、1年生の終わりには毎日一緒にいた他学部の人たちと別れるのがさみしかったです」
鈴木「寮生活ではたくさんの人と仲良くなりました。2年生からは他学部とキャンパスも離れるので、一緒にいた人たちと気軽に遊べなくなるのがさみしかったです。山形から富士吉田を経て、いよいよ都会暮らしが始まるワクワク感もありました」

看護師の一日例
小山「日勤は8:30から17:00まで、夜勤は16:30から翌朝8:30までです。現在勤務するICU(集中治療室)は看護師1名に患者さん2名までですが、一般病棟は日勤で看護師1名につき7名、夜勤は10名以上受け持つこともあります。多重業務の場面が難しく、たとえば朝9時に点滴や投薬をする患者さんの準備中に急な処置が入ったり、「痛い、助けて」と呼ばれることもあります。このようなときは、患者さんのことを一番に考え、チームで患者さんへの対応を実施します。相手の気持ちや状況をみて察するだけでなく、声かけの判断や掛け方も含めての行動は、富士吉田キャンパスで学びました」
理学療法士の一日例
鈴木「8:30から17:00までで夜勤はありません。30分前に出勤し、担当する患者さんの情報を取り、リハビリテーション主体の業務を行います。リハビリというとケガだけのように思うかもしれませんが、医師からはいろいろなオーダーがあり、たとえば心臓や呼吸器、消化器などの疾患の患者さんのリハビリを行うこともあります。ICUの患者さんのリハビリは、管類をつけたまま行うことが多く急変の恐れもあるため、看護師と一緒に協力して行っています。携帯用の人工呼吸器を利用するために、リハビリは臨床工学士に協力をお願いすることもあります。職種間の距離が近く、話しやすいのは、富士吉田キャンパスでの学びのおかげだと思っています」
“至誠一貫”を体現する昭和大学マインド
小山「学生の頃は実感できなかったのですが、看護師として従事すると自分の業務優先ではなく、患者さんがいてこその自分たちということを理解し、建学の精神「至誠一貫」(常に相手の立場に立ってまごころを尽くす)をブレずに仕事をしています。ICUでも患者さんがどうしたいのかという思いに寄り添いながら、担当者の連絡会議において、患者さんにとって最善策を見出します。理学療法士が不在の土日にはどのようにリハビリを行うのかを確認したり、喉が渇いても水が飲めない患者さんにどうケアするか、筋力の落ちた患者さんは寝返りを打てるよう工夫したりなど、常に考えて行動しています」
鈴木「理学療法士はリハビリで身体に触れるので、医師よりも患者さんとの距離が近い職業です。患者さんが理学療法士にだけ話してくれることもあり、退院が近くなって家のことや今したいことなどを聞くと、その希望に近づくためにリハビリ以外の生活の中でどのようなサポートが必要かを考え、カンファレンスで共有して看護師にも協力をお願いしています。皆嫌な顔をせず協力してくれるのは、昭和大学のマインドだと思います」

看護師、理学療法士に興味のある高校生へ
小山「看護学科は入学すると進路はまっすぐで、国家試験までそのまま進みます。高校生にも看護師は身近な存在ですが、医療系の職業は他にもたくさんあります。入学してから「やりたいことと違う」ということのないように、医療系にはどんな職業があるのか、まずは調べることからでも遅くはないので、大学受験まで、焦らずにゆっくり考えてみてもいいのではないでしょうか」
鈴木「理学療法士がどんな仕事なのか、まずは見てもらいたいです。身体のしくみに興味のある人は、そこから調べてみてもいいと思います。私は今、総合病院に勤務していますが、たとえばプロ野球などスポーツのチームや街のクリニック、介護施設や訪問リハビリを行う仕事もあり、働き方がたくさんあります。卒業生が全員、病院勤務ではないのです。リハビリを行うのはケガのときだけ、というイメージもあるかもしれませんが、近年は認知症などを予防し健康でいるための運動も理学療法士が担っています。高度化する医療に対応するよう、学び続けることが大切な職業です」
