グローバル系大学特集教員インタビュー
グローバルな現代社会において国際ビジネスの第一線で活躍する人材を育成~学習院大学~

大学Times Vol.50(2023年10月発行)

【グローバル系大学特集】教員インタビュー 学習院大学

国内・海外のさまざまなビジネスシーンで八面六臂に活躍する、グローバル人材のニーズはますます高まり、その卵たちを日々育てている大学各校には高い期待が寄せられている。今年で学部設立8年目を迎えた学習院大学の国際社会科学部も、そんな学びの場のひとつだ。今回は学習院大学における国際人材育成について、国際社会科学部で学部広報を担当する山﨑泉准教授に、その具体的な教育内容を伺った。

学習院大学国際社会科学部 広報委員
山﨑 泉 准教授

世界銀行 中東北アフリカ地域総局人間開発局教育部、南アジア地域総局人間開発局などでコンサルタントとして勤務ののち、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ教育経済学プログラム博士課程にて博士号を取得。国内大学の研究員、国際協力機構JICA研究所研究員等を経て、2016年より学習院大学国際社会科学部准教授。専門はアフリカ地域研究、教育経済学、開発経済学、ミクロ実証分析。

国際ビジネスの第一線で活躍する人材を育成する学部

現代社会においては、日本にいるのか、海外にいるのかに関係なく、私たち全員にグローバル化が求められています。私たち学習院大学の国際社会科学部(学習院ISS)は、「世界中の人と対等に渡り合い、国際的なビジネスの第一線で活躍できる人材の育成」を目的としている学部です。

諸問題を論理的に分析し、仮説を立てて検証する「課題発見力・解決力」。相手の主張を理解し、自分の考えを適切に伝える「実践的な英語コミュニケーション能力」。異なる文化を持った人々を理解し、それに順応する「多様性理解、異文化への順応力」。現代の国際的なビジネス場で活躍するためには、以上の能力が不可欠となっており、これらを養うために、ISSでは「社会科学の学び」「英語教育」「海外研修」に力を入れています。

社会科学を英語で学ぶ

本学部では、文化や教養を中心に学ぶのではなく、「社会科学の学び」に重点を置いており、法学・経済学・経営学・社会学・地域研究の5分野を横断的に学びます。これらグローバル標準の学問を英語で学ぶのが、本学部の特長です。(図1参照)

着実に力をつけるためのカリキュラム

経済学や経営学といった専門科目を英語による講義で学ぶと聞くと、自分の英語力でついていけるのかと心配する人もいるかもしれません。国際系学部といっても、必ずしも海外生活の経験者や英語が堪能な学生ばかりではありません。ISSのカリキュラムは、日本で勉強した高校生が入学後の4年間で確実にステップアップできるように設計されています。

1年生では、まず日本語で社会科学の基礎を学びます。同時に英語の基礎として週6コマもの英語科目によって集中的に「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を鍛えます。

2年生では社会科学の専門科目を英語で学ぶことを通じて、専門性と語学の融合を目指します。特に「ブリッジ科目」と呼ばれる科目群では、語学の教員と社会科学の教員が連携して授業を進めます。英語の授業では、経済学などに必要な英単語や表現を丁寧に学びます。同時に社会科学の講義は英語で行われ、より専門的な学術内容を高度な英語で学習できるようになります。語学と専門科目を同時進行で学ぶことで、効率よく専門科目を英語で理解できるのが特徴です。

3年生以上対象である社会科学科目は、全科目が英語による講義となります。また、専門演習(ゼミ)で興味をもった社会科学分野のテーマの学びを深めます。そして4年生では、それまで学んできたことの集大成として、英語または日本語での卒業論文の執筆に挑戦します。

なお、本学部の英語教育は4年間を通して、「CLIL(クリル)」という、ヨーロッパで開発された手法を使っています。これは英語科目で社会科学(専門科目)の理解に必要な語彙や表現を養いつつ、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を高める言語教育法です。本学部ではCLILによって、英語と社会科学(専門科目)を融合した、高い水準の教育を受けることができます。

「全員が海外研修」の環境

本学部では4週間以上の海外研修が全員必修となっていますが、学部の基準を満たせば、自由に出発時期や期間、行先を選ぶことが可能です。40%程度の学生が卒業までに1学期間(約半年)または2学期間(約1年間)の留学に挑戦しており、設立からの7年間で30か国205箇所もの海外研修先に学生を送り出しています。

1年次に「海外研修Ⅰ」という必修科目を通じて、海外留学の準備を行うのですが、どこへ行くのかだけではなく、訪問先での危機管理から帰国後の人生設計、そして卒業後の活動を見据えたビジョンを入学当初から構築することを目指します。本学部の学生の多くは、1年生の頃から「4年間の大学生活で海外研修を含めて何を学び、何をしたいのか、卒業後どう活かしたいのか」を常に考えて行動しているように思います。

また、先に留学した学生から帰国後に情報共有がなされ、自然に学生同士のディスカッションが生まれます。これが相乗効果となり、「全員で海外研修に取り組む」という環境が醸成されています。

海外研修後には、「海外研修Ⅱ」という科目があります。これは海外研修での経験や学びを振り返り、これからの社会科学の学習や将来のキャリアにどのように活かしていくかを学生一人ひとりが考え、報告する授業です。客観的に研修成果を見つめることで、得た学びに対してより深い理解を促進するとともに、今後自分に必要なことは何かを考えるきっかけとなります。

卒業後のキャリア

ISS設立からこれまでに4学年分の卒業生を送り出ました。卒業後もISSとつながり、近況を報告してくれる卒業生も多くいます。学生に求める能力を企業に尋ねるアンケート調査で多くの企業が回答した「課題の発見・解決力」、「国際経済・国際社会への理解力」といった能力は、いずれも社会科学に重点を置いた本学部の学びの根本的要素です。本学部での学びを活かし、多様な業界・職種にて卒業生が活躍しています。(図2参照)

受験生へのメッセージ

社会科学と英語の学び、そして海外研修の経験は、みなさんの今後の人生に大いに役立つでしょう。将来、国際社会に貢献し、その中で自己の成長を目指したいと考えている受験生の方に、ぜひ学習院大学国際社会科学部という選択を考えていただければと思っています。