グローバル系大学特集学部長インタビュー
外国語の学びからメンタリティを理解し現代社会を生き抜く“財産”を育む―2024年度から始動する新・カリキュラムとは―
~獨協大学~

大学Times Vol.50(2023年10月発行)

【グローバル系大学特集】学部長インタビュー 獨協大学

1883(明治16)年、日本が本格的に国際化へと歩み始めた年に創立した「獨逸学協会学校」が源流の獨協大学。ドイツ語を教える唯一の中学校として医学界を中心に数多くの優秀な人材を輩出し、外国語教育と国際交流の伝統と歴史は今日、外国語学部に受け継がれている。2024年度からは、時代の要請に応じて改編された新カリキュラムに移行するという。渡部重美学部長に抱負を伺った。

獨協大学 外国語学部長/教授
渡部 重美(わたなべ しげみ)

専門分野:18~19世紀のドイツ文学・思想

言語教育に留まらない個性が光る4年間の深い学び

本学の外国語学部は4学科(ドイツ語学科、英語学科、フランス語学科、交流文化学科)体制です。たとえばドイツ語学科では、ドイツ語だけでなく、文学、哲学、美術、音楽、演劇、歴史、経済、政治など、ドイツ語圏の社会や文化についても学びます。英語、フランス語の各学科でも同様に、専攻する言語をツールとして、その言語圏の専門知識を深く学んでいきます。交流文化学科は比較的新しい学科ですが、言語圏を横断的に学ぶことで新しい発想の創出を期待し、フィールドワークを重視した専門的な教育を行っています。

学科を繋ぎ垣根を越えて学ぶ
文理融合・異文化交流の共通科目

外国語学部の共通科目は従来の「総合講座」(4学科の教員が交代でコーディネートし、外部講師も招いて「多文化共生」や「他者理解」など昨今の注目分野を学ぶ半期完結の授業)に加え、2024年度からは「情報科学概論・各論」の位置付けが変わり、さらに「学科横断演習」がスタートします。情報科学の授業はこれまでもありましたが、経済学部の「情報科学教育プログラム」と連携したデータサイエンスを学ぶためのプログラムへと進化発展します。「学科横断演習」は4学科の学生が履修できる、アクティブラーニング型の授業です。昨年度から試験的に実施していますが、専攻する言語が異なり、したがってメンタリティが異なる学生が一緒に学ぶことによって、授業そのものが異文化体験となっています。

2024年度から新たな学びで進化する4つの学科

●ドイツ語学科:卒業後を意識した2コースに再編成
「プロジェクトコース」はドイツ語力を身に付けて実社会で活躍する人材を育成します。ドイツ語圏の基礎教養を学び、大使館や国際機関などでドイツ語を使って仕事をする職業に就くことを目標とします。「リベラルアーツコース」はドイツ語の文献を読み、自分の言葉で書く卒業論文制作を必修とします。ドイツ語圏の音楽、文学、演劇、歴史などの専門分野の研究を深めていきます。

●英語学科:大学入学後も英語力を磨き専門研究を深める
これまでの英語学科のカリキュラムは、高校までにツールとしての英語力を身に付けているという前提でしたが、大学入学後も専門研究を深めて、さらに英語力を高める様に作られています。既存の「グローバル文化コース」「メディア・コミュニケーションコース」「文学・文化・歴史コース」「言語コース」に加え、4つのコースを横断的に学ぶ「グローバル教養」科目群を新設します。履修可能な科目の自由度を拡大し、新たな興味・関心の変化に対応します。

●フランス語学科:仏語圏の強みを活かし、将来のキャリアをイメージして学びをデザイン
フランス語を身に付けるのはもちろんですが、フランス語圏の強みである「発信力」「ブランド力」「多文化共生」を学ぶことで、独自の視点を身に付け、実社会で活躍する人材を育成します。「国際発信コース」「文化構想コース」「社会共創コース」の新体制となりますが、どのコースも学んだ知識をもとに自ら発信、企画、提案できる力を身に付けることを重視しています。キャリアパスを意識しつつ、学生が自らの興味関心に合わせて学びをデザインできるカリキュラムとなっています。

●交流文化学科:英語+1言語と異文化研究で高度な実践力を修得
英語に加えてもう一つの外国語を併修します。英語の授業では、ネイティブの教員と多様なテーマをディスカッションする少人数制のクラスを新設。そしてドイツ語、フランス語のほか、スペイン語、中国語、韓国語を学べます。さらに「ツーリズム」「トランスナショナル文化」「グローバル社会」の専門科目を自由に組み合わせて、独自の学びを実現できます。実践的な学びを将来につなげる「ツーリズムキャリアプログラム」を導入し、学科が指定する科目を履修すれば修了生として認定される新制度もスタートします。

AIを賢く利用して語学学習のモチベーションを上げる

これからの時代、学生に対し「自動翻訳や生成AIを使うな」と全面禁止にするのは困難であり、皆が使う前提としての具体策を考える方が現実的です。AIを使った教材開発や教授法の構築などは急務ではないかと考えます。また、AI知識を持つ人材登用を視野に入れることも必要になってくるでしょう。

現在、私のゼミでもドイツ語文献の講読の際にAI翻訳を試験的に使っています。それ以前は辞書を引きながら、1日数行の翻訳で終わっていたものが、A4サイズで4ページくらいの飛ばし読みが可能となり、文献の内容理解にたどり着くようになりました。もちろん、AI翻訳は万能ではないので、足りない部分は私たち教員がサポートしなければなりません。しかし、早いペースで多くの分量をこなせるので、学生のモチベーションが上がり、語学学習がより身近になっているのではと推察します。AIとの上手な付き合い方を考える必要があると考えています。

外国語を学び日本人的思考を相対化する
多様性理解で人生を豊かに

「外国語学部」という看板ですが、言語学習だけでない多様な学びがあります。興味のある高校生は、是非ともオープンキャンパスに来ていただきたいです。4学科の教員が個別相談で説明いたします。たとえばフランス語学科には、フランスのファッションやデザインの研究を行っているゼミもあり、思いがけない知識や教養を深める興味深い学びの場が見つかるかもしれません。

グローバル化が進み、世界はますます垣根のない社会になっています。外国語を学ぶことは、その言葉を話す人のメンタリティを理解することにつながり、これまでの日本人的な思考の枠組みだけでは太刀打ちできない困難な場面でも、課題解決へ導く幅広い教養を身に付けることができます。ドイツ語圏の人はこう対応する、フランス語圏の人はこう考える、英語を話す人はこうアプローチするなど、思考の引き出しが増えれば人生がより豊かになるでしょう。外国語の学習、そして外国語学部での学びは、これからの社会を乗り切る“かけがえのない財産”になると確信しています。